ジャイナ教は紀元前6世紀頃に、仏教とともに東インドで生まれました。古代に栄えた仏教は 13世紀にインドから姿を消しましたが、ジャイナ教は 現代まで生き続け、中世、近世のインド文化に 大きな寄与をしました。このディヴィジョンでは、日本に知られざる ジャイナ教の寺院建築の歴史と特質を 紹介していきます。 |
ジャイナ教と 仏教との比較 |
ジャイナ教 JAINISM | 仏教 BUDDHISM | |
開祖 | カーシャパ・ヴァルダマーナ | ゴータマ・シッダールタ(瞿曇・悉達多) |
Kâsapa Vardhamâna、Jina 耆那 | Gotama Siddhârtha、Buddha 仏陀 | |
呼び名 | マハーヴィーラ Mahâvîra 大雄(大勇) | シャーキャムニ Sâkyamuni 釈迦牟尼 |
ニガンタ・ナータプッタ | シャーキャプッタ Sâkyaputta 釈迦子 | |
Nigantha Nâtaputta 尼乾陀若提子 | 釈迦牟尼世尊(釈尊)、薄伽梵 | |
生没年 | BCE. 599-527、BCE. 598-526(伝統説) | BCE. 563-483、BCE. 463-383(北方説) |
BCE. 549-477、BCE. 539-467、 BCE. 444-372(近代説) |
BCE. 623-543(南方説) | |
(72歳での死去が定説) | (80歳での死去が定説) | |
生誕地 | マガダ国のヴァイシャーリー北郊、 | カピラヴァストゥ国のルンビニー園、 |
クンダナガラ村 | 無憂(アショカ)樹の下 | |
階級 | クシャトリヤ(武士階級) | クシャトリヤ(武士階級) |
ジュニャートリカ族 | シャーキャ(釈迦) 族 | |
父母 | カーシャパ・シッダールタ(迦葉・悉達多) | シュッドーダナ(浄飯王) |
ヴァーシシュタ・トリシャラー(王の妹) | マーヤー(摩耶夫人、産後 7日目に没) | |
結婚 | カウンディヌヤ・ヤショーダーと結婚 | 16歳でヤショーダラーと結婚 |
娘はアノーッジャー(ジャマーリと結婚) | 息子はラーフラ(羅目候羅) | |
出家 | 30歳の時、ニガンタ派の沙門となる | 29歳の時、マガダ国で沙門となる |
12年間の苦行の後 ジナとなる | 6年間の苦行と瞑想の後 ブッダとなる | |
得道地 | ジュリンビカ・グラーマ村の近くの | ガヤー近郊のネーランジャラー河畔、 |
リジュパーリカー河畔、沙羅樹の下 | アシュヴァッタ樹(菩提樹) の下 | |
初転法輪地 | サールナート(ミガダーヤ 鹿野苑) | |
認識論 | 七諦(活命、非命、漏、縛、遮、滅、解脱) | 四諦(苦諦、集諦、滅諦、道諦) |
スヤードヴァーダ(不定説) | ||
実践論 | 禁欲主義、アヒンサー(不殺生) | 苦楽中道、八正道(正見、正思惟、正語、 |
三宝(正見、正智、正行) | 正業、正命、正精進、正念、正定) | |
五戒 | 不殺生、不妄語、不盗、不婬、無所有 | 不殺生、不妄語、不盗、不邪婬、不飲酒 |
入滅地 | ナーランダー近郊のパーヴァー村 | クシナガラ(現・カシア)、 |
(現・パーワープリー)、72歳で入滅 | 娑羅双樹の下、80歳で入滅 | |
高弟 | インドラブーティ・ガウタマ | サーリプッタ、マハーモッガラーナ |
教団 | サンガ(僧伽 そうぎゃ ) | |
聖典 | シッダーンタ 悉檀多(アーガマ) | 三蔵(律蔵、経蔵、論蔵) |
聖典言語 | アルダ・マーガディー語(半マガダ語) | パーリ語(聖典語) |
教義綱要書 | 『真理証得経』(ウマースヴァーティ著) | |
前世物語 | 『バヴィサッタカハー』 | 『ジャータカ』(本生譚) |
聖格 | ジナ( Jina 勝者)耆那 | ブッダ( Buddha 仏陀、覚者)如来 |
24人のティールタンカラ(祖師) | 過去七仏(過去 24仏とも) | |
初代はアーディナータ | 未来仏(弥勒仏) | |
第 23代はパールシュヴァナータ | 過去・現在・未来 三千仏 | |
第 24代はマハーヴィーラ | 法身仏、報身仏、応身仏 | |
宗派 | ディガンバラ(空衣派) | テーラヴァーダ(上座部) |
シュウェターンバラ(白衣派) | マハーヤーナ(大乗) | |
テーラパンタ(無寺院) | ヴァジュラヤーナ(金剛乗) |
ジャイナ教の ティールタンカラ(ジナ) |
名前 | 英語表記 | シンボルと顔色 | |
1 | リシャバ (アーディナータ) |
Rishabha (Adinatha) |
牡牛、黄金色 |
2 | アジタ(アジヤ) | Ajita (Ajiya) | 象、黄金色 |
3 | シャンバヴァ | Shambava | 馬、黄金色 |
4 | アビナンダナ | Abinandana | 猿、黄金色 |
5 | スマティ | Sumati | 青鷺、黄金色 |
6 | パドマプラバ (パウマッパバ) |
Padmapraba (Paumappabha) |
蓮華、赤色 |
7 | スパールシュヴァ | Suparshuva | 卍、黄金色 |
8 | チャンドラプラバ (チャンドラッパバ) |
Chandraprabha (Chandrappabha) |
月、白色 |
9 | スヴィディ (プシュパダーンタ) |
Suvidhi (Puspadanta) |
マカラ、白色 |
10 | シータラ | Sitara | Srivatsa 印、黄金色 |
11 | シュレヤーンサ | Shureyansa | 犀、黄金色 |
12 | ヴァースプージャ | Vaspujya | 水牛、赤色 |
13 | ヴィマラ | Vimala | 野豚、黄金色 |
14 | アナンタ | Ananta | 鷹、黄金色 |
15 | ダルマ(ダンマ) | Dharma (Damma) | 金剛杵、黄金色 |
16 | シャーンティ | Shanti | 羚羊、黄金色 |
17 | クントゥ | Kunthu | 山羊、黄金色 |
18 | アラ | Ara | Nandyavarta、黄金色 |
19 | マッリ | Malli | 水瓶、青色 |
20 | スヴラタ(ムニ) | Suvrata (Muni) | 亀、黒色 |
21 | ナミ | Nami | 青蓮華、黄金色 |
22 | ネーミ(アリスタネーミ) | Nemi (Aristanemi) | 法螺貝、黒色 |
23 | パールシュヴァ(パーサ) | Parshva (Pasa) | 蛇、青色 |
24 | マハーヴィーラ (ヴァルダマーナ) |
Mahavira (Vardhamana) | 獅子、黄金色 |
参考文献 |
● 初出:『 at 』誌に連載 「素晴らしきインド建築、ジャイナの小宇宙」
(東京、デルファイ研究所刊)
1. 「ア−ブ山のデルワーラ寺院群」 | 1993年 3月号 | p.59 -65 | 図版 22点 |
2. 「エローラーの石窟寺院群」 | 1993年 5月号 | p.39 -46 | 図版 21点 |
3. 「北インドのジャイナ建築」 | 1993年 7月号 | p.55 -63 | 図版 19点 |
4. 「南インドのジャイナ建築」 | 1993年 9月号 | p.33 -42 | 図版 22点 |
5. 「ジャイナ教の山岳寺院都市」 | 1993年 11月号 | p.43 -50 | 図版 19点 |
6. 「ラーナクプルのアーディナータ寺院」 | 1994年 1月号 | p.39 -47 | 図版 28点 |
7. 「聖地の建築巡礼−1 北インド」 | 1994年 6月号 | p.36 -44 | 図版 36点 |
8. 「聖地の建築巡礼−2 南インド」 | 1994年 8月号 | p.38 -46 | 図版 26点 |
9. 「驚異の砂漠都市・ジャイサルメル」 | 1995年 7月号 | p.7 ー36 | 図版 89点 |