LOVE FOR CHIPMUNKS

シマリスへの 懐旧の情

神谷武夫

チャキーの子供
シマリスの子供(ChooChoo's Story より

●5月に「リスの思い出」を書きましたが、それを書こうかな と思いはじめた頃から 毎日、リスを写したユーチューブなどの動画を見ています。「思い出」を書き終わって HP にアップしてからも、昔飼って 失踪した シマリスへの「懐旧の情」が起こって 収まらず、ますます 強くなって、最も可愛い動物は、やはり「シマリス」だなぁ という思いが 大きくなる一方です。もう一度、シマリスを飼おうか とも考えましたが、もう 年齢的に、リスを 最後まで面倒見ることは できそうもないので、思いとどまりました。
 シマリスへの愛着は 止まりませんが、ネットで リスの動画を見るだけで 満足することにして、毎日1時間ぐらい 見たり、そこから「静止画」を作ったりしています(モニターは、富士通の 27インチです)。動画で見るシマリスたちも、可愛くてなりません。今回は、私が 特に好んで見る 動画チャンネルの、少し詳しい紹介と、そういう動画から、どんなふうに静止画を取り出しているのか、といったことも 書くことにしました。

( 2024 /12/ 01 )



シマリスと 動画

 リスは 可愛い動物だ、という 漠然とした感覚は 誰でも持っているでしょうが、犬や 猫と違って、リスを まじかに見たりした人は、あまり多くないのでは ないでしょうか。リスは小さいので、動物園では、だいたい「遠目」になります。日本の各地に「リス園」や「リス村」や「リス公園」があり、そういうところに行けば リスにエサをあげられますが、リスというのは 非常にすばしこく走り回る小動物なので、じっくり 近くから観察することは むずかしいし、また 子供を連れていくのでもなければ 「リス園」に行ったりすることも ないでしょう。それに、それらの多くが飼っているのは、大きい「タイワン リス」(クリハラ リス)であって、小さい「シマリス」ではない ことが 多いです。
 東京の近くで シマリスが見られるのは、埼玉県の さいたま市にある「市民の森」の中の「りすの家」の園内で、300匹のシマリスが 走り回っているそうです。ただし、シマリスが 地中で冬眠している半年間は、出てきません。そして、ここでは リスにエサをあげることは できません。そういうわけで、小さな シマリスの可愛さを まじかに見られるのは、実物よりは、ユーチューブなどの「動画」だ ということになります。

 まず、次の写真を ご覧ください。小さく切り分けた西瓜(スイカ)を もらって食べている、マンチューと名付けられた、野生の シマリスです。

西瓜

スイカを食べる、シマリスの マンチュー(ChooChoo's Story より

 こんなに可愛らしい、表情まで よく出ている リスの写真は、あまり見ることが ないのでは ないでしょうか。「リス村」などに行っても、なかなか そこまでは見られません。「写真」と書きましたが、実は これは いわゆる「写真」ではなく、「動画」の2カットです。そして これは、私が撮影したものでも ありません。チューチュー (Choo Choo) さんという、カナダのユーチューバーが撮影して 公開している 動画チャンネルから 切り取って「静止画」にしたものです。 その動画というのは、
    ●● スイカを食べる、シマリスの マンチュー (ChooChoo's Story)

で、カッコ内をクリックすると、動画の通しで見られます(以下同様)。 そういう動画から切り取って「静止画」を作るには、どうやるのかと思う方もいるでしょうから、まずその方法を説明しておきましょう。必要なのは、「フォトショップ」などの「画像作成・編集ソフト」です(無料の「画像編集ソフト」や、アドビの「フォトショップ」の無料体験版なども、ウェブ上にあるようです)。


動画から 静止画像を切り出す

 まず動画を見ていて、気に入った場面があると 動画をストップさせ、その前後を、さらに細かく、繰り返し ストップさせて、一番好きな 瞬間で、ピントも よく合っている箇所を選びます。選んだら、キーボードの左下の ウィンドウズの 旗マークと、右上の PrtSc(プリントスクリーン)のキーを押して、マウスにコピーをとり、フォトショップの 作業画面に、「ファイル」から「新規」を選んで 新しい作業枠を作成し(カスタムとして、例えば 1920 x 1080 px @ 75 ppi の大きさ)、そこに「編集」から「ペースト」を選んで 貼り付けます。その1ページ分の画像の内、欲しい部分を「長方形選択ツール」で区画して 切り取り、「イメージ」から「画像解像度」を選んで、最終の大きさを決め(私の場合の標準は、横巾 150mm)、OK を押して、50 %になっている「表示」を 100 %にします。
 そして 画像の 明るさ(「イメージ」-「色調補正」-「明るさ・コントラスト」)や、色合い(「イメージ」-「色調補正」-「色相・彩度」など)や、シャープネス(「フィルター」-「シャープ」)などを 適切に選んで 調整します。あとは、画像に 短い「説明文」や「せりふ」を、書き込んだりもします( T 横書き文字ツール )。私の場合、ここで標準に使っているフォントは「HGP明朝B」で、標準の大きさは 16pt です。
 これを「レイヤー」で「画像を統合」し、「ファイル」の「別名で保存」を選び、エクスプローラーの中の 適当なフォルダーに、例えば「シマリス_1」というような 題名をつけて、JPG(ジェイペグ)形式で 保存します。すると エクスプローラー上に、あいうえお順、番号順などで、こうした「静止画」が並びます。 これを見る時は、エクスプローラーの表示を「大アイコン」あたりにすると、保存した画像を 選びやすくなります。ひとつをクリックすれば、パソコンの所定の形式で、決めた大きさ(150mm)に 表示されます。

 以上を読んで、「わかり切っている」と言う人もいれば、チンプンカンプンな人も いることでしょうが、私の HP の、今 見られているページの 静止画像は、全て こうして作っているのです(下の アラムの画像も)。 画像には「出典」(動画チャンネルの名前)を 書きこむことにしています。しかし 元の「動画」は 私が撮影したものではないので、HP の本文の説明上 必要なものを、「引用」の形で載せているだけです。これを 営利目的で使えば「著作権侵害」になります。私のハードディスクには、この1年間に 動画から切り取った、リスを始めとする小動物の 静止画が 1,000点以上 ストックされていますが(リスは 約 300点)、これらは 私が 自分の愉しみのために見るだけです。

シマリス

トムさんが飲んでいるフルーツ・ジュースを、
背伸びして のぞき込む、シマリスの アラム(ChooChoo's Story より

私のウェブサイト

 この機会に、私のウェブサイト(ホームページ)についても、ちょっと 説明しておきましょう。私は ユーチューバーでは ありません。ホームページ (HP) を作成して、建築に興味のある人達に 無料で公開しているだけです。私の HP は、今から 27年前の 1997年に作り始めた 「神谷武夫とインドの建築」、 2009年に そこから分離した「世界のイスラーム建築」、 2012年に始めた「アルメニアの建築」と3つありますが、英語版も合わせ、長年の間に いずれも膨大なページ数になっているので、全部あわせた容量(バイト数)は、1ギガバイトを越えます。私の HP には 当初から 一切「広告」を載せていませんので、ここからの金銭収入は、まったく ありません。パトロンも いませんし、企業とタイアップしたこともありません。何万人が見ようと、1円の利益もないのです。それどころか 逆に プロバイダーに、(大容量なので)毎月 5,000円以上を支払って、ネット上に公開してもらって いるのです。要するに、営利目的ではなく、建築の専門家としての、公共への奉仕として、作成・公開しているわけです(ただし HP の作成は外注せずに、全部 自力でやってきましたので、その分の支払い(外注費)は ありませんが)。

 「インド建築・文献目録」や「イスラーム建築・文献目録」なども公開していますが、そんなことをする学者は、めったに いないでしょう。 むしろ、自分の手の内は、競争相手に知られたくない という学者のほうが 多いかもしれません(公開するには 時間と労力も かかるし)。 私としては、若い人たちに インド建築や イスラーム建築の研究を推し進めてほしく、その分野の文献・古書が日本で一番備わっているところは 私の所だと思うので、彼らが基本文献や 有用な本を知らずに逸することのないよう、私の蔵書目録を 公開しているわけです(一般の人には あまり必要ないと思いますが)。

文献目録   文献目録
「インド建築・文献目録」と「イスラーム建築・文献目録」のページ

 HP上の「建築写真」は、ほとんど 全て 私が撮影した写真ですので、私に著作権があります。その取材・撮影旅行は、「科学研究費」などの交付を受けたわけでは ないので、すべて「自費」です。行くべきところへは だいたい行ったので、この10年ぐらい、重い機材をかついでの 単身の撮影旅行は していませんが、それ以前には 全部で 46回 海外取材旅行をしていて、1回あたりの 平均旅行日数は 33日になりますから、延べ 49ヵ月以上を 撮影旅行していた ことになります。

 最後の数回では デジタル・カメラを使いましたが、それ以前は ずっとフィルム・カメラ(ニコンFシリーズ)でしたから、フィルム代(初期はコダクローム、あとはベルビア)、現像代(ポジ・フィルムのスライド)、多少のプリント代(ダイレクトプリント)等の費用も かなりの金額になります(1回の旅行で 平均10万円くらい 費やしましたが、デジタル・カメラの場合には その費用が 全く かかりません)。昔は 倹約のために、無駄な写真は撮らない、一枚一枚を 厳密に「あおり」や「露出」を調整しつつ 撮影したものです(デジタル・カメラでは そういう緊張感がないので、「ヘタな鉄砲も 数打ちゃ当たる」式に、雑になりがちでは ないでしょうか)。

 250個くらいの 特殊なスライド・ボックスに 整理・保存してある スライドの数は 約5万枚になり、その内 約2万枚が インド建築です。一枚一枚のスライドのマウントに 都市名、建物名、部位名、撮影年月の書き込みをしてあるので、どの国の、どこの都市の、何という建物、と言えば、ただちに その写真が 探し出せるようなシステムになっています。こうしたストックの利用によって、何冊か 写真集や本を出版することが できました。
 かつては、ヴィジュアルな本や雑誌の「写真原稿」としては、出版社からポジ・フィルムが 求められましたが、今では ポジ・フィルムの扱い方を知らない 若い編集者が 増えているそうです。 また 写真を HP に載せる時には、スライドを フィルム・スキャナーでスキャンして、JPG(ジェイペグ)画像にしなければ なりませんので、手間が かかります(それらもまた「フォトショップ」で 画像調整をします)。デジタル・カメラ世代の人たちには 理解しにくいかもしれませんね。

リス


"ChooChoo's Story" という 動画チャンネル

 さて、シマリスを写した動画のチャンネルの中で、私が一番多く見て 楽しんでいるのは、"ChooChoo's Story"(チューチューの物語)という題名のついた カナダの動画シリーズで、上の「スイカを食べるマンチュー」や、「ジュースをのぞき込むアラム」、下の「ジューニーの子供たち」も、そこから切り出した画像です。そこで、この "ChooChoo's Story" という ユーチューブの動画シリーズについて、わかる範囲で 詳しく説明しておきます。
 チューチュー (Choo Choo) さんという ユーチューバーは、韓国人女性だと 思われます。その夫が トム (Tom) さんというカナダ人で、2人はカナダに住んでいます(子供は いないらしい)。 動画に説明文が出る時は、ハングル文字の韓国語と、英語で書かれています。たまにハングル文字が 大きく出ることがありますが、通常は どちらも控えめで、映像をじっくりと映すのが特徴で、好感がもてます。

 トムさんは ボート遊びの趣味があるのではないか と推測しますが(もしかすると プロ ?)、カナダに多い「湖」のひとつに面した、小さなボートハウスを持っています。でも、そこにボートが引き込まれている映像は 見たことがありません。このボートハウスの すぐ後ろの 急斜面の上が 丘状になっていて、丘の上に 夫妻の「住居」があります(斜面の小道と階段で 連絡しているのでしょう)。
 この平屋の家に 夫妻が一年中住んでいるのか、セカンドハウスなのかは 分かりません。湖に面した 眺望の良い側を除いて、この家の周囲には「森」が広がっていて、そこには 多くの 野生の動物や 鳥が住んでいます。熊 なども いるのかもしれませんが、動画に出てきた大きい動物は、子連れの「鹿」のみです。リスたちが チューチューさんに エサをもらっているところを その鹿が見ているせいか、彼女が近くまで来て撮影しても、安全な人間とみなして、鹿は警戒せず、逃げたりしません(子鹿を連れている時でも)。

家

チューチューさんとトムさんの家の、森に面した入口(ChooChoo's Story より
冬は 雪と雨で ぬかるみになるので、木製の通路が造ってある
シマリスは 通路の上だと 鳥に襲われる恐れがあるので、通路の端か下を走る

 森には、アメリカ東北部からカナダ南部にかけて分布する 東部シマリス (Eastern Chipmunk) が 多く住んでいて、チューチューさんは散歩時に しばしば見かけたのでしょう、シマリスに 木の実などのエサをやっているうちに、リスたちもまた 彼女を警戒しなくなって、夫妻の家の近くにまで やって来るようになります。チューチューさんは シマリスが 大好きになりました。その可愛らしい姿と動作に 魅惑されたのでしょう。森には 灰色リスや 黒リス、赤リスなども いるのでしょうが、それらは 数が少ないのか、チューチューさんの動画には めったに出てきません。また それらは シマリスよりも大きいので、愛らしさの点で 小さなシマリスに 負けるのかもしれません(姿・形も)。 前回も書きましたが、すべての動物の中でも シマリスは、(神による)最も秀逸なデザインのひとつだと思います。

 そのうちに チューチューさんは シマリスたちの撮影を始め、それをユーチューブに投稿するようになりました。飼いリスではなく、自然の(野生の)シマリスの動画なので 珍しく、カナダと 韓国ばかりでなく、世界中にファンが増えていきました。2019年の初めに ユーチューブに登録したそうですが、それから現在まで5年以上の間に、800本以上の動画を制作しました。当初のものに比べると 撮影機材も 高性能なものになり、撮影の腕も向上したので、今では かなりの精度の動画になっています。チャンネル登録者は 50万人を超えるそうです。

丘の上の テラス

 丘の上の家は 構造的安全のために、急斜面より だいぶセットバックして 建てられているので、その分を ウッド デッキの 広いテラスにしています。このテラスから 正面に湖が眺められ、見下ろすと ボートハウスが すぐ下に見えます。テラスには 大きな木製のテーブルと、ゆったりした木の椅子を6脚置いています(プラスチック製にしていないところが、自然愛好家の面目です)。そのため 雨風に晒されているので、テーブルも椅子も 毎年 塗装し直さねばならないようです。動画には出てきませんが、ここには 時々 人間の来客があるのかもしれませんが、動画に出てくるのは シマリスたちと 小鳥たちだけです。

テラス

チューチューさんと トムさんの家の、湖に面した木造デッキ(テラス)
大きなテーブルに 椅子が6脚、左方が湖(ChooChoo's Story より
ここに 毎日、リスや小鳥が 遊びに(エサを求めて)やって来る

    ●● キュッキュッと声を出して鳴く、シマリスの ワリー (ChooChoo's Story)
    ●● テラスのテーブルで、シマリスのシャックリを 止める法 (ChooChoo's Story)

 テーブルの上に 飲み水のグラスのほかに 小皿を置いて、ヒマワリの種や ピーナツ、いろいろな果物の小片 などを入れておくと、シマリスや、アオカケスなどの小鳥が 食べに来ます。手のひらに乗せて 食べさせたりもします。私には見分けが付きませんが、長いこと付き合っているチューチューさんは 一匹ずつの シマリスや 小鳥に 名前をつけていて、リスの親子関係なども 判断しています。初めの頃からの チャキーや ワリー、マンチューや アリーなどとは 特に親しくしています。小鳥は なかなか馴れず、ナッツを咥えると すぐに飛び去って行きますが、シマリスは 時に、長いこと チューチューさんに 体を撫でられています(特に チャキーと ワリー)。チューチューさんは 彼らのことを「森の友達」と言っています。

シマリスの 休憩コーナー

 最初に親しくなったシマリス (Chipmunk) は、頭文字の Ch をとって チャキー (Chucky) と名付けました。ある 非常に寒い日に、テラスに来た チャキーを、暖かい室内に導いて エサをあげたら、それから次第に シマリスが 家の中にまで遊びに(エサを求めて)来るようになりました。夫のトムさんも チャキーが大好きになり、ドアを開けてリスを中に入れたり、巣に帰ろうとするリスを 出してあげたり するようになります、ホテルのドアマンのように。
 チューチューさんの家には 出入口が3ヵ所あるようですが、テラスに面している出入口が、下の写真の左側に少し見える、焦げ茶色フレームのドアです。このドアの外で シマリスが、ドアが開くのを待っていたりします。この入口の内側(手前)の すぐ脇に、一日中 森を走り回っている リスたちのための「休憩コーナー」を設けて、いつも 白い器に ひまわりの種などの エサを用意してあります。ほかの入口から家に入った場合も、シマリスは まっしぐらに ここに走ってきます。 今、シマリスが ナッツを食べています。 何とまあ 小さいこと。

家

チューチューさんの家の中の、リス用 休憩コーナー(ChooChoo's Story より

 ここにトムさんが、中2階の部屋を作りました。そこは リスの 昼寝用ですが、水とエサも置いてあります。ここまで跳びあがるのは きついので、梯子(はしご)のような階段をかけたので、リスは簡単に走り上ったり 下りたりします。でも ここで昼寝するのは 希なようです。階段の右側にある四角い箱は、柔らかい布を敷き詰めた リス用ベッドです(今 エサ皿が置いてありますが)。一度、チャキーが 怪我をしたのか、病気になったのか、ここへやってきて、この箱ベッドの中で 七転八倒して 苦しんでいました。2時間ほど眠って だいぶ良くなったようですが、その日は チューチューさんが 家の入口を閉じたまま、もっと回復するまで、森へは帰らせませんでした。

 中2階の部屋の 左下にある 黒いものは、丸い容器にいれた「土」で、リスの「土浴び」用です。土遊び用というには小さいですが、ここでリスが 周囲に土を はね散らかしながら、土に もぐったり、かぶったりします。リスは「水浴び」をせず、「土浴び」をするのです。 シマリスの体毛は、土を浴びても すぐに 振り払ってしまいます。そして しょっちゅう、両手で毛づくろいや 顔拭きをするので、いつも きれいです。では 何のために 土浴びをするかというと、土の地面に穴を掘って「住まい」(巣穴)を作るのが、シマリスのような「地上性」のリスの 本能的習性なのです。

シマリスの 冬眠

 特に シマリスは 冬の間、半年ぐらい「冬眠」します。1匹ずつ別々に、地面の下に 深く長いトンネルを掘り(直径5〜8センチ、長さ2メートルくらい)、その奥に「広間」を掘って 寝場所 及び 食品庫にし、別の場所(トンネルの一部)をトイレにします。広間の大きさは 奥行きが 20〜30センチ、高さが 15〜25センチあります。トンネルの入り口の穴は 土や枯れ葉で ふさぎますが、天敵などからの危険性を察知すると、別の場所に トンネルと広間を掘り直し、「引っ越し」をします。1年に何度も 引っ越しをすることも あります。そういうわけで、シマリスは 両手(前足)で 地面に穴を掘るのが 大得意であり、本能でもあります。その習性のために、「土浴び」するのも 好きなのです。
 チューチューさんが 家の外に、もっと大きな 平たい植木鉢に「土」だけを いれておいたら、シマリスたちは 喜んで それぞれに穴を掘り、もぐり、土浴びをし、なんのためか わかりませんが「のたうち回って」遊ぶ (?) のです。ノビをしたり、体をよじったり、引っくり返ったりして、一人で大暴れしている この動画には、私も 全く驚いてしまいました。

    ●● 穴を掘ったり、もぐったりして 「土遊び」する シマリス (ChooChoo's Story)

 数多い種類のリスの中で、なぜ シマリスのみが「冬眠」するのか というと、シマリスが リスの中では 一番小さいからです(体長は 14センチくらいで、体重は 100グラムくらい)。皮下脂肪も少なく 内臓も小さいので、零下(れいか)の寒さの屋外で 冬を越すほどの 体力がないので、暖かい地中で 半年間、一人で眠って過ごすのです。もちろん 時々は( 10日に1回くらい ? )起きて トイレに行ったり、食事をしたりします。その時のために、秋のうちに クルミや 栗や ドングリなど 沢山の木の実を、広間に「貯食」しておくのです(暖かい室内で 飼われている「飼いリス」としてのシマリスは 冬眠しませんが)。
 冬眠中のシマリスは かなり体温を下げていて、エネルギーを使わずに、安全に眠り続けているので、冬眠中に「孤独死」するということは ありません。 春に生まれて 夏に独立したシマリスが、単独行動で生きているにも関わらず、その秋には 自分で掘った広間に 毎日 せっせと木の実などを運んできて貯食に励み、初冬には一人で冬眠を始める というのは、誰に教えられたわけでもなく、経験学習でもないので、本能的行動として 遺伝子に組み込まれているのでしょう。「本能が壊れた」人間からすれば、まことに不思議な感に打たれます。

 「文研 科学の読み物」シリーズの『 北国の森に生きる シマリスの冬ごし作戦 』(川道美枝子・著、竹井秀男・絵,80pp, 1987,文研出版)は、北海道の北東部(オホーツク海沿岸の森)に住む 「エゾ シマリス」の 冬眠の実態を、北大出身の動物学者・川道 美枝子(かわみち みえこ)さんが 京都の自宅から7年間も通い、現地にも長く住んで、初めて詳細に、科学的に調査した記録と報告です。児童向けの本ながら、シマリスの冬眠の仕方について、大いに勉強になりました。写真ではなく、竹井秀男さんの多数の絵で説明した、とても良い本です。

冬越し    ニホンリス

  (左)川道美枝子 著『シマリスの冬ごし作戦』 1987,文研出版, 950円
(右)永田博 写真集 『子リスの学校 森の中』 2015,東京図書出版

 日本の 本州や 四国に原住するものの、森林の伐採などによって「絶滅危惧種」になってしまった「ニホンリス」は、シマリスより 1.5倍から2倍大きいので 冬眠しませんが、「引っ越し」は します。ニホンリスばかりを撮影した 永田 博さんの 練達な写真集『 子リスの学校 森の中( ニホンリス 野生の一瞬 写真集, 98pp,東京図書出版)』には、母リスが、結構大きい 赤ちゃんリスを 口に咥(くわ)えて、重いので 短い両手(両前足)でも 支えながら 引っ越していく写真があります (p.11) 。後足だけでは 走れないので、70メートルも先の 新しい巣まで、歩いて運んで行きます。順々に4匹も 赤ちゃんリスを運ぶのは 大仕事です。「地上性」のシマリスと違って ニホンリスは「樹上性」なので、その 巣は 地面下ではなく、樹上にあります。赤ちゃんを咥えたまま そこまで 10メートルも 樹を登るのは、さらに大変ですが、「母は強し」です。ある程度 大きくなった子供は、引っ越し先まで 親と一緒に 歩かせたり 走らせたりして 連れて行くので、楽ですが。 どの写真も、よく撮影したものです。

 (本は、どんな本でも、近くの公立図書館に行って リクエストすれば、その図書館に無くとも、どこかの図書館から取り寄せて、貸し出してくれます。)

シマリスの 子供

 冬眠あけの春になると シマリスは交尾して、一度に3〜5匹の子供を産みます。父親は子育てをせず、母親にまかせきりで、よそに行ってしまいます。シマリスの子供たちの姿を見る機会も あまりないでしょうから、また チューチューさんの動画から 切り取ってみましょう。ジューニーと名付けられた 野生のシマリスが産んだ、なんとも可愛い Chipmunk Babies です。それぞれ 体の大きさは、母親の 2/3 くらいです。

子リス
シマリスの ジューニー の子供たち(ChooChoo's Story より

    ●● シマリス・ジューニーの子供たち (ChooChoo's Story)
    ●● シマリス・ジューニーの子供たち、続編 (ChooChoo's Story)

 シマリスの子供たちが 母と家族で一緒に暮らすのは 6〜8週間であって、じきに一本立ちして、独立した生活を始めます。独立したシマリスは 集団生活をせず、みんな 一匹狼として、自分のテリトリーを作って 生きていきます。それぞれ 食べ物の好みも異なり、ある者は果物を好み、ある者はナッツ類を好み、ある者は昆虫などを好みます。それでも 誰もが好きなのは、クルミや ヒマワリの種です。その場で食べている場合は、剥(む)かれた 殻(から)が まわりに散らばっていきます。チューチューさんが ヒマワリの種を たくさん与えると、シマリスは どんどん食べているように見えますが、実は ポケットのような 頬袋(ほおぶくろ)に溜め込んでいて、それを巣穴に持って帰るのです(貯食用や、子供用に)。たくさん溜めこんで 頬がパンパンにふくれた「お多福」のような顔は、私の好みではありませんが、好物のドングリを 片側に3個ずつ、最大6個も 頬ばって、「こぶ取り爺さん」のような ひどい顔に なったりします。 非常に勤勉なシマリスは、冬眠用の広間に ドングリを せっせと運んで、2,000個も 貯めこむのです。

 種実類を 巣穴だけではなく、あちこちの地面にも 埋めて 隠しておきます(地面を2センチくらい掘り下げて)。 誰かに 横取りされないように 土をかぶせて 踏み固め、落ち葉で 覆って隠し、必要になった時(春)に 取りに来ます。しかし 埋めた場所を 忘れてしまうことも多いので、ほったらかしになった種は 翌年 芽を出し、樹木に育ってゆきます。その数は相当なもので、リスは 森林の維持にも 大きな貢献をしているわけです。もちろん、樹が大きくなるまでには 何年も、何十年も かかりますが。

リス




リスを写した動画チャンネルの紹介 ー2


●● 小鳥や 鹿も出てくる、盛りだくさんの 22分 動画 (ChooChoo's Story)
    この動画の半分過ぎで、植木鉢の中で 埋めたナッツ類に一生懸命 土を
    かぶせて 隠しているシマリスを、お見逃しなく。

●● ミールワームが大好物の、シマリスの チャキー (ChooChoo's Story)
    ミールワームというのは、小鳥などのエサ用に飼育される、小さな 細長い昆虫

●● チューチューさんに撫でられる、シマリスの アリー (ChooChoo's Story)
    後半 1/3 で、もらった ピーナツ片を 珍しく 途中で ポイ捨て せずに、
    全部 食べ切るまでの アリーの姿を、延々と写しているのが 良い。
    シマリスが 一片のピーナツを食べ切るには、2分もかかります。





●● ノルウェーの 森の中の リス・バー(1時間) (Movie Squirrels)

ノルウェー

リスと 小鳥の バー (Nut Bar) で 食事をする アカリス
(ノルウェーの、野生動物保護の ”Movie Squirrels” より
バーテンダーのいない、ミニチュア・サイズのバーに、入れかわり
立ち替わり ナッツを食べに来る、野生の 赤リスや 小鳥たち。
バーのセットが とても良いが、長尺で やや単調なので、時々 先送りしても可




●● 女性写真家が育てる アカリス(Episode 3)(英語)(The Squirrels and Me)

●● 女性写真家が育てる アカリス(Episode 5)(英語)(The Squirrels and Me)

アカリス

ロンドンに住む、ワイルド・ライフ・フォトグラファーの ダニ・コナー・ワイルド
(Dani Connor Wild) 嬢が、スウェーデンで 幼いアカリスを保護して飼い始め、
ルー (Loo) という名前をつけ、ついには スウェーデンに家を買い、友達の
アーチェリ-の協力で 庭に巨大なケージを作り、家と森の中で撮影しながら
ルーを育てる様子を記録したシリーズ。 アカリスの可愛さ 満載。
赤リス(キタリス)は シマリスより大きいが 灰色リスより小さく、冬眠はしない。
イギリスでは 外来の「東部灰色リス」の増殖によって、赤リスが激減したという。




●● 昨年 世を去った、シマリスのモモさんの 最後の1週間 (シマリストきむら)

モモ

回想の、飼いリスの モモさん (「シマリストきむら」より
モモさんは 2023年5月 11日、9歳 7ヵ月で 永眠したそうです。
この動画の最後にある、あたかも 誰かと会話をしているかのごとくに、
微笑しながら 何度も うなずき、そして自分の 談をする モモさんの
生前の姿に、魅了されました。 まるで、人生の 酸いも 甘いも
噛み分けて 温厚泰然とした、慈愛に満ちた 老シマリスのよう。





蛇足(つけたり)

 『 リスの思い出 』の中に、次のように書きました。

「リスを右手で やさしく包むようにして持ち、左手の手のひらに乗せたり、机の上に座らせたりしました。 寝ぼけまなこ のリスは 無抵抗なので、逃げもせず、噛みつきも せず、私に「されるがまま」です。」

 今、シマリスの実物大のフィギュアを 右手で包むようにして持つと、実に良く手にフィットします。もちろん 実物は ずっと柔らかいので、もっと 感触が良かったでしょう。こんなに 手にフィットする動物は、他に居ないのではないか と思います。 毎晩 こうやって シマリスを 手に持って、いろんな場所に座らせて、撫でたり バナナやナッツを あげたり していました。

シマリス

シマリスの 実物大のフィギュアを 右手で持つ。
そぉっと包んでいるのであって、ギュッと掴んでいるわけではない


  *  *  *


 シマリス(チプマンク)というのは、背中に 焦げ茶色の縞を5本持っています。
それらに 左側から番号を付けてみました。

   シマリス
シマリスの チャキーの 後ろ姿

 他のリスは 全身が 一色なので、単純に「灰色リス」とか「赤リス」とか「黒リス」と呼ばれています。 シマリスだけが 凝ったデザインなのです。そして、シマリスの中央の縞 (3) の両側は「明るい焦げ茶色」をしていて、これが 頭からシッポまで続く、ほぼ「地の色」だと言えます。 ところが、そこに5本の縞を与えたばかりでなく、1〜2間と 4〜5間は、(左右対称に)白くしています。 これは 機能とは関係がなく、単に「意匠的」な「美しさ」を与えようとして 白くした、としか考えられません。 これらによって(目の上下の 白い帯と合わせ)、シマリスが どんなに魅力的になったか しれません。 つまり、シマリスをデザインした「神」は、「形態は機能に従う」という 純粋な「機能主義者」でもなく、機械的な「構造表現主義者」でもなく、ワグナーや ライトのような「初期近代建築家」のごとく 芸術的だったのです。 神の、アーキテクトとしての才能が 最高に発揮されたのは、シマリスにおいてだった と思います。 凡庸な建築家であれば、「明るい焦げ茶」の 一色にしてしまった ことでしょう。

( 2024 /12/ 01 )


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TAKEO KAMIYA
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