シマリスへの 懐旧の情 |
神谷武夫
●5月に「リスの思い出」を書きましたが、それを書こうかな と思いはじめた頃から 毎日、リスを写したユーチューブなどの動画を見ています。「思い出」を書き終わって HP にアップしてからも、昔飼って 失踪した シマリスへの「懐旧の情」が起こって 収まらず、ますます 強くなって、最も可愛い動物は、やはり「シマリス」だなぁ という思いが 大きくなる一方です。もう一度、シマリスを飼おうか とも考えましたが、もう 年齢的に、リスを 最後まで面倒見ることは できそうもないので、思いとどまりました。 ( 2024 /12/ 01 ) |
リスは 可愛い動物だ、という 漠然とした感覚は 誰でも持っているでしょうが、犬や 猫と違って、リスを まじかに見たりした人は、あまり多くないのでは ないでしょうか。リスは小さいので、動物園では、だいたい「遠目」になります。日本の各地に「リス園」や「リス村」や「リス公園」があり、そういうところに行けば リスにエサをあげられますが、リスというのは 非常にすばしこく走り回る小動物なので、じっくり 近くから観察することは むずかしいし、また 子供を連れていくのでもなければ 「リス園」に行ったりすることも ないでしょう。それに、それらの多くが飼っているのは、大きい「タイワン リス」(クリハラ リス)であって、小さい「シマリス」ではない ことが 多いです。
スイカを食べる、シマリスの マンチュー(ChooChoo's Story より )
で、カッコ内をクリックすると、動画の通しで見られます(以下同様)。 そういう動画から切り取って「静止画」を作るには、どうやるのかと思う方もいるでしょうから、まずその方法を説明しておきましょう。必要なのは、「フォトショップ」などの「画像作成・編集ソフト」です(無料の「画像編集ソフト」や、アドビの「フォトショップ」の無料体験版なども、ウェブ上にあるようです)。
まず動画を見ていて、気に入った場面があると 動画をストップさせ、その前後を、さらに細かく、繰り返し ストップさせて、一番好きな 瞬間で、ピントも よく合っている箇所を選びます。選んだら、キーボードの左下の ウィンドウズの 旗マークと、右上の
PrtSc(プリントスクリーン)のキーを押して、マウスにコピーをとり、フォトショップの 作業画面に、「ファイル」から「新規」を選んで 新しい作業枠を作成し(カスタムとして、例えば 1920 x 1080 px @ 75 ppi の大きさ)、そこに「編集」から「ペースト」を選んで 貼り付けます。その1ページ分の画像の内、欲しい部分を「長方形選択ツール」で区画して 切り取り、「イメージ」から「画像解像度」を選んで、最終の大きさを決め(私の場合の標準は、横巾 150mm)、OK を押して、50 %になっている「表示」を 100 %にします。 以上を読んで、「わかり切っている」と言う人もいれば、チンプンカンプンな人も いることでしょうが、私の HP の、今 見られているページの 静止画像は、全て こうして作っているのです(下の アラムの画像も)。 画像には「出典」(動画チャンネルの名前)を 書きこむことにしています。しかし 元の「動画」は 私が撮影したものではないので、HP の本文の説明上 必要なものを、「引用」の形で載せているだけです。これを 営利目的で使えば「著作権侵害」になります。私のハードディスクには、この1年間に 動画から切り取った、リスを始めとする小動物の 静止画が 1,000点以上 ストックされていますが(リスは 約 300点)、これらは 私が 自分の愉しみのために見るだけです。
トムさんが飲んでいるフルーツ・ジュースを、
この機会に、私のウェブサイト(ホームページ)についても、ちょっと 説明しておきましょう。私は ユーチューバーでは ありません。ホームページ (HP) を作成して、建築に興味のある人達に 無料で公開しているだけです。私の HP は、今から 27年前の 1997年に作り始めた 「神谷武夫とインドの建築」、 2009年に そこから分離した「世界のイスラーム建築」、 2012年に始めた「アルメニアの建築」と3つありますが、英語版も合わせ、長年の間に いずれも膨大なページ数になっているので、全部あわせた容量(バイト数)は、1ギガバイトを越えます。私の HP には 当初から 一切「広告」を載せていませんので、ここからの金銭収入は、まったく ありません。パトロンも いませんし、企業とタイアップしたこともありません。何万人が見ようと、1円の利益もないのです。それどころか 逆に プロバイダーに、(大容量なので)毎月 5,000円以上を支払って、ネット上に公開してもらって いるのです。要するに、営利目的ではなく、建築の専門家としての、公共への奉仕として、作成・公開しているわけです(ただし HP の作成は外注せずに、全部 自力でやってきましたので、その分の支払い(外注費)は ありませんが)。 「インド建築・文献目録」や「イスラーム建築・文献目録」なども公開していますが、そんなことをする学者は、めったに いないでしょう。 むしろ、自分の手の内は、競争相手に知られたくない という学者のほうが 多いかもしれません(公開するには 時間と労力も かかるし)。 私としては、若い人たちに インド建築や イスラーム建築の研究を推し進めてほしく、その分野の文献・古書が日本で一番備わっているところは 私の所だと思うので、彼らが基本文献や 有用な本を知らずに逸することのないよう、私の蔵書目録を 公開しているわけです(一般の人には あまり必要ないと思いますが)。
最後の数回では デジタル・カメラを使いましたが、それ以前は ずっとフィルム・カメラ(ニコンFシリーズ)でしたから、フィルム代(初期はコダクローム、あとはベルビア)、現像代(ポジ・フィルムのスライド)、多少のプリント代(ダイレクトプリント)等の費用も かなりの金額になります(1回の旅行で 平均10万円くらい 費やしましたが、デジタル・カメラの場合には その費用が 全く かかりません)。昔は 倹約のために、無駄な写真は撮らない、一枚一枚を 厳密に「あおり」や「露出」を調整しつつ 撮影したものです(デジタル・カメラでは そういう緊張感がないので、「ヘタな鉄砲も 数打ちゃ当たる」式に、雑になりがちでは ないでしょうか)。
250個くらいの 特殊なスライド・ボックスに 整理・保存してある スライドの数は 約5万枚になり、その内 約2万枚が インド建築です。一枚一枚のスライドのマウントに 都市名、建物名、部位名、撮影年月の書き込みをしてあるので、どの国の、どこの都市の、何という建物、と言えば、ただちに その写真が 探し出せるようなシステムになっています。こうしたストックの利用によって、何冊か 写真集や本を出版することが できました。
さて、シマリスを写した動画のチャンネルの中で、私が一番多く見て 楽しんでいるのは、"ChooChoo's Story"(チューチューの物語)という題名のついた カナダの動画シリーズで、上の「スイカを食べるマンチュー」や、「ジュースをのぞき込むアラム」、下の「ジューニーの子供たち」も、そこから切り出した画像です。そこで、この "ChooChoo's Story" という ユーチューブの動画シリーズについて、わかる範囲で 詳しく説明しておきます。
トムさんは ボート遊びの趣味があるのではないか と推測しますが(もしかすると プロ ?)、カナダに多い「湖」のひとつに面した、小さなボートハウスを持っています。でも、そこにボートが引き込まれている映像は 見たことがありません。このボートハウスの すぐ後ろの 急斜面の上が 丘状になっていて、丘の上に 夫妻の「住居」があります(斜面の小道と階段で 連絡しているのでしょう)。
チューチューさんとトムさんの家の、森に面した入口(ChooChoo's Story
より )
そのうちに チューチューさんは シマリスたちの撮影を始め、それをユーチューブに投稿するようになりました。飼いリスではなく、自然の(野生の)シマリスの動画なので 珍しく、カナダと 韓国ばかりでなく、世界中にファンが増えていきました。2019年の初めに ユーチューブに登録したそうですが、それから現在まで5年以上の間に、800本以上の動画を制作しました。当初のものに比べると 撮影機材も 高性能なものになり、撮影の腕も向上したので、今では かなりの精度の動画になっています。チャンネル登録者は 50万人を超えるそうです。
丘の上の家は 構造的安全のために、急斜面より だいぶセットバックして 建てられているので、その分を ウッド デッキの 広いテラスにしています。このテラスから 正面に湖が眺められ、見下ろすと ボートハウスが すぐ下に見えます。テラスには 大きな木製のテーブルと、ゆったりした木の椅子を6脚置いています(プラスチック製にしていないところが、自然愛好家の面目です)。そのため 雨風に晒されているので、テーブルも椅子も 毎年 塗装し直さねばならないようです。動画には出てきませんが、ここには 時々 人間の来客があるのかもしれませんが、動画に出てくるのは シマリスたちと 小鳥たちだけです。
チューチューさんと トムさんの家の、湖に面した木造デッキ(テラス)
●● キュッキュッと声を出して鳴く、シマリスの ワリー (ChooChoo's Story)
最初に親しくなったシマリス (Chipmunk) は、頭文字の Ch をとって チャキー (Chucky) と名付けました。ある 非常に寒い日に、テラスに来た チャキーを、暖かい室内に導いて エサをあげたら、それから次第に シマリスが 家の中にまで遊びに(エサを求めて)来るようになりました。夫のトムさんも チャキーが大好きになり、ドアを開けてリスを中に入れたり、巣に帰ろうとするリスを 出してあげたり するようになります、ホテルのドアマンのように。
チューチューさんの家の中の、リス用 休憩コーナー(ChooChoo's Story より )
中2階の部屋の 左下にある 黒いものは、丸い容器にいれた「土」で、リスの「土浴び」用です。土遊び用というには小さいですが、ここでリスが 周囲に土を はね散らかしながら、土に もぐったり、かぶったりします。リスは「水浴び」をせず、「土浴び」をするのです。 シマリスの体毛は、土を浴びても すぐに 振り払ってしまいます。そして しょっちゅう、両手で毛づくろいや 顔拭きをするので、いつも きれいです。では 何のために 土浴びをするかというと、土の地面に穴を掘って「住まい」(巣穴)を作るのが、シマリスのような「地上性」のリスの 本能的習性なのです。
特に シマリスは 冬の間、半年ぐらい「冬眠」します。1匹ずつ別々に、地面の下に 深く長いトンネルを掘り(直径5〜8センチ、長さ2メートルくらい)、その奥に「広間」を掘って 寝場所 及び 食品庫にし、別の場所(トンネルの一部)をトイレにします。広間の大きさは 奥行きが 20〜30センチ、高さが 15〜25センチあります。トンネルの入り口の穴は 土や枯れ葉で ふさぎますが、天敵などからの危険性を察知すると、別の場所に トンネルと広間を掘り直し、「引っ越し」をします。1年に何度も 引っ越しをすることも あります。そういうわけで、シマリスは 両手(前足)で 地面に穴を掘るのが 大得意であり、本能でもあります。その習性のために、「土浴び」するのも 好きなのです。 ●● 穴を掘ったり、もぐったりして 「土遊び」する シマリス (ChooChoo's Story)
数多い種類のリスの中で、なぜ シマリスのみが「冬眠」するのか というと、シマリスが リスの中では 一番小さいからです(体長は 14センチくらいで、体重は 100グラムくらい)。皮下脂肪も少なく 内臓も小さいので、零下(れいか)の寒さの屋外で 冬を越すほどの 体力がないので、暖かい地中で 半年間、一人で眠って過ごすのです。もちろん 時々は( 10日に1回くらい ? )起きて トイレに行ったり、食事をしたりします。その時のために、秋のうちに クルミや 栗や ドングリなど 沢山の木の実を、広間に「貯食」しておくのです(暖かい室内で 飼われている「飼いリス」としてのシマリスは 冬眠しませんが)。 「文研 科学の読み物」シリーズの『 北国の森に生きる シマリスの冬ごし作戦 』(川道美枝子・著、竹井秀男・絵,80pp, 1987,文研出版)は、北海道の北東部(オホーツク海沿岸の森)に住む 「エゾ シマリス」の 冬眠の実態を、北大出身の動物学者・川道 美枝子(かわみち みえこ)さんが 京都の自宅から7年間も通い、現地にも長く住んで、初めて詳細に、科学的に調査した記録と報告です。児童向けの本ながら、シマリスの冬眠の仕方について、大いに勉強になりました。写真ではなく、竹井秀男さんの多数の絵で説明した、とても良い本です。
(左)川道美枝子 著『シマリスの冬ごし作戦』 1987,文研出版, 950円
(本は、どんな本でも、近くの公立図書館に行って リクエストすれば、その図書館に無くとも、どこかの図書館から取り寄せて、貸し出してくれます。)
冬眠あけの春になると シマリスは交尾して、一度に3〜5匹の子供を産みます。父親は子育てをせず、母親にまかせきりで、よそに行ってしまいます。シマリスの子供たちの姿を見る機会も あまりないでしょうから、また チューチューさんの動画から 切り取ってみましょう。ジューニーと名付けられた 野生のシマリスが産んだ、なんとも可愛い Chipmunk Babies です。それぞれ 体の大きさは、母親の 2/3 くらいです。
●● シマリス・ジューニーの子供たち、続編 (ChooChoo's Story)
種実類を 巣穴だけではなく、あちこちの地面にも 埋めて 隠しておきます(地面を2センチくらい掘り下げて)。 誰かに 横取りされないように 土をかぶせて 踏み固め、落ち葉で 覆って隠し、必要になった時(春)に 取りに来ます。しかし 埋めた場所を 忘れてしまうことも多いので、ほったらかしになった種は 翌年 芽を出し、樹木に育ってゆきます。その数は相当なもので、リスは 森林の維持にも 大きな貢献をしているわけです。もちろん、樹が大きくなるまでには 何年も、何十年も かかりますが。
リスを写した動画チャンネルの紹介 ー2
リスと 小鳥の バー (Nut Bar) で 食事をする アカリス
●● 女性写真家が育てる アカリス(Episode 3)(英語)(The Squirrels and Me) ●● 女性写真家が育てる アカリス(Episode 5)(英語)(The Squirrels and Me)
ロンドンに住む、ワイルド・ライフ・フォトグラファーの ダニ・コナー・ワイルド
●● 昨年 世を去った、シマリスのモモさんの 最後の1週間 (シマリストきむら)
回想の、飼いリスの モモさん (「シマリストきむら」より )
『 リスの思い出 』の中に、次のように書きました。 「リスを右手で やさしく包むようにして持ち、左手の手のひらに乗せたり、机の上に座らせたりしました。 寝ぼけまなこ のリスは 無抵抗なので、逃げもせず、噛みつきも せず、私に「されるがまま」です。」 今、シマリスの実物大のフィギュアを 右手で包むようにして持つと、実に良く手にフィットします。もちろん 実物は ずっと柔らかいので、もっと 感触が良かったでしょう。こんなに 手にフィットする動物は、他に居ないのではないか と思います。 毎晩 こうやって シマリスを 手に持って、いろんな場所に座らせて、撫でたり バナナやナッツを あげたり していました。
シマリスの 実物大のフィギュアを 右手で持つ。
( 2024 /12/ 01 ) |