シマリスよ、君の名は「 サスキア 」だ |
新しい「齧(かじ)り木」を前にした シマリス
シマリスは、冬眠明けの2月か3月に交尾して、その1ヵ月後に 子供を3〜5匹 産み落します。それらが育って 赤ちゃん時代を終え、中国から日本に輸出されるのは、4月が一番多い。あっちに運ばれ、こっちに運ばれ、日本にやって来て 諸手続きが済むと、輸入業者が それらを 付き合いのあるペットショップに 配分して 国内配送をします。こうしたプロセスに、生まれてから1ヵ月くらい かかります。この間に 死んでしまう 幼シマリスも、少なくないらしい。
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ショップで、おがくずの間から出てきた シマリス
ショップの 大きな透明プラスチック・ケースの中で、「おがくず」に潜(もぐ)って隠れているリスを、周りの おがくずを どかすと、「ああ、本当のリスだ!」と、何十年ぶりかの、(動画とも、実物大フィギュアとも まるで違う)本物のシマリスを まじかに見て、感動しました。ほんの少しの間 手に持つと(すぐに逃げて おがくずに潜ってしまいますが)何とまあ 柔らかく、やせて 軽いことでしょう。成人シマリスは 体重が 100グラムぐらいなのですが、このリスは まだ生後1ヵ月なので、45 グラムしかない ということでした。45グラムですよ! ケースに入った音楽 CD1枚が 約100グラムですから、その半分以下の重さです。現在の「頭胴長」(シッポを含めない 体の長さ)は、8センチくらいです。これから 2ヵ月くらい かかって 13 〜14センチに成長していくのですから、まだ 小さな子リスです。人間で言ったら、「幼稚園児」ぐらいの段階です。本当に 小さい。
![]() 家に来た翌日、ケージから脱走した 子リス(頭胴長 8cm) ネットで調べると、シマリスの 日本への年間輸入量は、約3万匹だそうです。ほとんどは 中国からですが、そんなに多いとは 意外でした(1994年に韓国からの輸出が禁じられる前は、その数倍だったそうです)。コロナ禍もあり、現在の実数はその半分か1/3くらいになっている との説もあります。いずれにせよ、 その内、寿命を全うできるシマリスは、半分くらいではないか という気がします。前にも書いたように、シマリスは きわめて小さい上に、非常に すばしこいので、逃亡しやすいのです。シマリスというのは「野性味」を多く残した動物ですから、自然に帰りたいという情動を 常に抱いているようです。そしてまた、シマリスが「噛みリス」になったりすると、飼育放棄されて、野に放たれてしまうこともあります。そうしたリスたちは、鳥や猫やカラスに襲われたり、車に轢かれたり、食べ物不足や 病気になったりして、早く死んでしまうのです。 さて、購入契約の段になって、問題が生じました。近年「動物愛護法」の適用が厳しくなってきたとかで、私が最後までこのシマリスの面倒を見きれないかもしれない ということを、ショップが懸念しました。動物の幸福を第一に考えるという、ショップの方針には 賛同できますが、私が購入できない かもしれなく なりました。私が老衰するまでに、このリスを「私のあとで面倒を見てくれる人」を 探すことを「誓約する」ということで、何とか OK になりました。
ショップで、昔のような 小型のケージを買おうと思っていたのですが、大きなケージしか無かったので、それは 翌日 ネットで探すことにし、店にあった 透明プラスチックの 古いキズ物の小型ケージ(プラ・ケース)を もらって、そこに入れて 買い物バッグで持ち帰りました。大きなケージは 持ち帰れませんし。 このシマリスが オスかメスかは、まだ分からないということでした。私は どちらでも こだわりはありません。性器が 見分けが付くほどに成長するには 数カ月かかるらしいですが、ショップの人が見るところ、「おそらく」メスではないだろうか、という話でした。
昔 飼っていたリスには 名前を付けなかったので、今度は 良い名を付けてあげようと 思いました。たぶん 女の子のようなので、初め、日本の名前にしようと思いましたが、「みどり」とか「さゆり」といった名にすると、どうしても現実の日本女性が思い浮かんできてしまうし、「お徳」とか「お夏」では古めかしすぎるので、外国人のようなカタカナ名前にしようと決めました。でも「エリザベス」とか「シャルロッテ」のような長い名前は呼びにくいので、4文字以内に しようと、あれこれ考えた末に、「サスキア」にしました。
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『 フローラに扮した サスキア 』( 「レンブラント全画集」 より )
サスキアと名付けた 私のシマリスは、ショップで「ビビリ 性格ですよ」と 言われたとおり、翌朝になっても おがくずの中に潜(もぐ)ったまま、一向に出てきません。プラスチック・ケージのフタを開けて、おがくずをどけて 姿を出させたり、陶器の「えさ置き場」を 中に置いたりしました。しかし このプラスチック・ケージというものに 私は慣れていなかったのと、リスが おがくずの中に潜ったままなので 油断して、昼に出かける時に、うっかり フタを閉め忘れてしまったのです。帰宅してケージを見ると、リスが いません。誰もいないのを見計らって、プラスチックをよじ登って、部屋に出てしまったのです。ビビリだったのは 見せかけだけで、実は 大胆不敵なシマリスだったのです。プラ・ケースには、戻ってきません。部屋じゅうを走り回って 神出鬼没、私が ちょっと近づくと 逃げて、どこかに隠れてしまいます。1ヵ月ぐらいで 新しい環境に馴れたら、部屋に「放し飼い」にしよう と思っていたのに、買ってきた翌日に、早くも 放し飼いになって しまいました。
![]() 時々、台所でガシャーンと音がするので 行ってみると、「調味料入れ」などを 引っくり返したり、棚から落としたりしながら 跳びまわっています。カリカリと音が続く時に 行ってみると、「砂糖入れ」の底の ゴムの台を齧(かじ)って ボロボロにしています。リスを購入したショップで、「殻付きの クルミ」を買おうと思っていたのに、置いてありませんでした。多分、このリスは一度も クルミを齧ったことが ないのでしょう。私が想像するに、歯が命と言ってもよい リスは、一生 伸び続ける 前歯(切歯)を削って丈夫にするために、毎日 クルミなどの硬いものを 齧る必要があり、それを していないと、歯が かゆく なるのではないでしょうか。それで 齧るものを求めて、柔らかいゴムまで(木の巣箱なども)齧ってしまうのでしょう。そこで アマゾンに「殻付きクルミ」を注文しましたが、届くのは5日も先になります。
一計を案じて、床に置いた プラスチック・ケージの蓋を5センチくらい ずらして開けておいたら、シマリスが エサを求めて ここに跳びこんだので、その瞬間をとらえて サッと蓋を閉めて、リスを捕獲することができました。これで一安心。ところが その翌日、リスのために 水飲み用の皿をいれようとした瞬間に、そのすき間から リスが飛び出てしまいました。狙っていたのかもしれません。再び 放し飼いとなってしまい、彼女は部屋中を走り回って 神出鬼没です。
昔 飼っていたリスに 噛まれたのは、1回だけです。リスが小型のケージの中にいた時に、ケージの中に手を入れて 何かを調整していた時に噛まれたのです。でも それ以外は、あのリスは、希に 描きかけの図面に オシッコをして 黄色いシミを付けてしまったこと以外、「悪さ」をしたことは ありません。 それでも もう一度 昨日の手を使って、プラ・ケースの中に サスキアを捕獲し、もう 絶対に出さないぞ と思いましたが、それでは エサと飲み水を どうやって入れるか、悩みます。そしてプラ・ケースの外から眺めていると、シマリスは やはり可愛い。でも、それまで シマリスは 100 % 可愛いという感情でしたが、こういうことがあってからは、80 % に減退してしまいました。
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プラ・ケースから脱出しようと、陶製の「えさ置き場」に乗って
通気口を齧ろうとしても 齧れないので、舌で 天井を ペロペロ舐める形になる。
将来、サスキアは 放し飼いにはできず、可哀そうだけど 金属ケージに入れっぱなしになるかな、と思いましたが、そうだとしても、できる範囲で 馴らしていくほか ありません。まず、このリスは 生まれてからずっと不規則な生活に振り回されてきたので、体内時計が まだ確立されていず、プラ・ケースの中でも、放し飼いになっている時も、夜おそくまで起きています。その生活慣習を正して、きちんと夜明けに起き、日没時に寝るように しつけようと、夕方7時にプラ・ケースに布をかけて 真っ暗にして、眠るほかないように しました。朝は 私が5時頃に起きるので、寝室から居間に来て、カーテンを開けて 照明も点け、「朝だよ」と言って 明るくします。リスは ビビリを装って、おがくずの中に潜って「寝たふり」をしています。この間は 蓋をはずしても 大丈夫だと分かったので、エサ置き場を洗って 新しいエサを入れ、水飲みグラス(タンブラー・ オンザロック)を替えます。リスはじきに(数日後から)、自分から 夕方6時過ぎに おがくずの中に潜って 眠るようになりました。
そうしている内に、噛みつかれた時の 私の「失敗」に 気が付きました、あの時、私が 手の平の上に エサを置いて差し出せば、サスキアは 私の手の平に乗ってきて エサを食べたのかもしれない、エサ無しで 手の平を出したので、リスは 私の「手」を食べ物だと思いこんで、ガブリと噛んだのではないか、と。 この説が正しければ 一安心ですが、しかし いったん私の手に3回も噛みついたので、それがサスキアの感覚と記憶に残って 習慣化してしまうかもしれません。まあ、その辺は すぐには 結論が出ないでしょう。
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アマゾンで買ったクルミは、岩手県の「和ぐるみ」(オニグルミ)だったので、届いて見ると、殻(から)が 非常に厚くて硬いので、シマリスが 齧り割るのは無理でしょう。普段使っている金槌で叩いても、ビクともしません。昔の製図用の、重さ1キロの 鉄の「文鎮(ぶんちん)」の上に乗せ、もう一つで ガンと 思い切り 叩いたら、細かく割れました。そこで、殻だけの破片を取り除き、残りをエサ置き場に入れました。すると サスキアは エサ置き場に来て、2つか3つばかり クルミのかけらを食べましたが、すぐに おがくずに潜ってしまって 出てきません。クルミが好きでないのか、食あたり でも起こしたのかと 見ていると、5分くらい経ってから やっと出てきたと思うと、エサ置き場で 猛然と クルミを食べ始めました。 (これを書いた2日後、湿った おがくずを出そうと、指を入れたところ、驚いたことに、前に入れておいた もう一つのクルミの、割られた「殻」が 出てきました。 何と この子リスは、いつのまにか、あの硬い「和グルミ」の殻を割って、中身を全部 食べていたのです! シマリスの、何という 強靭な 前歯! これなら、割ってあげる必要は ないかな?) しかし 殻の半分しか 出てこないところを見ると、始めから 真っ二つに割ったのではなく、殻の半分を 少しずつ齧って捨てて 中身を食べ、殻の半分は そのまま残したのだと 思われます。その作業に何日も かかって 懲りたのか、新しいクルミをあげても、無視! 齧ろうとはしません。やはり和グルミは、ある程度割ってあげないとダメかな?)
![]() ![]() (左)岩手の「和グルミ」の 説明パンフレットの 写真と説明 ただ、この 和ぐるみは 小さめである上に 殻が厚いので、中身の量は 少ない。でも 私の主目的は リスに 殻を齧らせることなので、あまり気にしません (ただ、齧ってくれないことには ・・・ )。 1個当たりの値段は、送料込みで 約 10円と 安い。
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Amazonで買った リス・ケージ 三晃 8,700円
25日の朝、サスキアは エサを食べたあと、半分 おがくずを被って、相変わらず「寝たふり」をしています。プラ・ケースの蓋には 換気用の小穴が 両端に たくさん並んでいるのですが、これでは不十分だな と、もっと 換気をよくするよう、蓋を少しずらして、両端に1センチくらいずつの アキを作って、まん中に 重さ1キロの 製図用文鎮を 載せておきました。しばらくして、私が机に向かっていると、カタンと音がしたので 見ると、何と、リスが 大テーブルの上を歩いています。 サスキアを4月14日に「お迎え」してから ちょうど半月後、4月28日の朝、プラ・ケースから「家具付きケージ」へと 引っ越しさせました。新居には すべてが備わっているので、体ひとつの 引越しです。「前科者」ですから、ここで ずっと おとなしくしているかどうかは 分かりませんが、逃亡者にならないことを祈ります。 リスは 狭いプラ・ケースから 広い新天地に移って、コーナー・ステージから巣箱に飛び移ったり、一番上の ハンモックに跳び上ったりして ゴキゲンです。しかし 丸い穴(入口)から巣箱に入ると、なかなか出てきません。暗くて、深くて、狭いスペースが、よほど居心地が よいのでしょう。
取り付け小物の構成は、1階が メッシュの 床(その下は ゴミ・糞の掃除用引き出し)、2階に 木製の 広い コーナー・ステージ(この下に 透明プラスチックの 屋根付き トイレ・ハウスを置きます)、3階が コーナー型 木製の 巣箱、3.5階が ハンモックで、サスキアは どこにも ピョン ピョン 飛び移ります。1階に 軍手のような 毛糸の手袋を置いて、部分的な柔らかい床にしていると、リスは たまに 手袋の中に潜りこみます。 ケージの扉を 時々 開け閉め していれば、リスは いずれ そのスキをついて 跳び出てしまうでしょうが、エサは ケージの中にしか無いのですから、扉を開けておけば 戻ってくるでしょう。問題は 家の外に 逃亡することで、これが最大の 厳重警戒事項です。
![]() ( 2025 /05/ 01 )
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