ELLE S'APPELAIT SARAH

サラの鍵(彼女の名はサラです)

神谷武夫

サラの鍵   サラの鍵

 映画館に行かなくなってから、もう20年近くになるでしょうか。その代わりに、今や充実した公立図書館で 映画のDVDを 片っ端から借りてきては 見ています。タダなので、つまらないものは 2、30分で見るのをやめてしまいます。つまらないものが多いですが、時には 思いがけず、すばらしい映画に めぐりあいます。昨年見たものの中では、フランス映画の『サラの鍵』が そうでした。第2次大戦中に フランスがナチスに占領されて、親独的なヴィシー政権ができたとき、フランスの警察が「自主的に」パリの(フランス人の)ユダヤ人狩をし、アウシュヴィッツに送った「ヴェル・ディヴ事件」を題材にしたものです。あまりにも酷い時代に翻弄される 幼い姉と弟の運命はいかに。

 この『サラの鍵』に 感動しました。深く感動しました。映画館に行っていた頃は洋画ばかり見ていて、邦画はめったに見ませんでしたが、公立図書館は 洋画と邦画のDVDを半数ずつにしているようなので、たくさんの邦画を見るようになりました。しかし、この『サラの鍵』(2010年、ジル・パケ=ブランネール監督)のような、内容的にも形式(映画芸術としての)の上からも、優れた邦画というのは、まず ないのではないかと思います。いったい何故なのか? なぜ日本では、バカバカしい内容を チープな映像にしてばかり いるのでしょうか?

 この映画『サラの鍵』には 原作の小説があり、フランスの タチアナ・ロネ という女流作家が、それまで仏語で小説を書いていたのを、2006年に 初めて英語で書いた "Sarah's Key" という小説で、それがベストセラーになり、仏語に翻訳された題名は "Elle s'appelait Sarah" (彼女の名はサラです)でした。この映画が優れていたのは、まずもって 原作の小説が優れていたからにちがいないと、今年になって、高見浩訳(新潮社)で読みました。またまた感動しました。翻訳もすばらしい。『サラの鍵』は、映画も小説も、お勧めです。  (2018/ 02 /02)



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