PHILOSOPHER'S HOUSE

哲学者の家

設計・監理=神谷武夫建築研究所



   


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現代美術の作家が哲学者に変身した。芸術家の精神を内に秘めつつ、カントやドゥールーズなどの哲学を研究する単独者の住まいである。見晴らしのよい高台に より高く3階建てとし、虚空を眺めながら思索にふける空間を内包する。


『 物体と隙間 』


所在地: 神奈川県川崎市多摩区東三田 / 設計: 神谷武夫建築研究所 / 設計期間:1998年2月〜8月 / 構造: 須賀設計事務所 / 設備: 三共設備設計事務所 / 電気: 山崎設備設計事務所 / 工事期間: 1998年9月〜1999年7月 / 施工: 大祥工業 / 鉄筋コンクリート造3階建 / 敷地面積:198u / 延床面積:108u / 写真撮影: 斎部功

【 設計要旨 】

閑静な大学町の高台に、老朽化した木造住宅を3層のコンクリート住宅に建て直した。かつては前衛的な美術家が今は大学の哲学、芸術学の教授となって研究に打ち込んでいる。単身者の家であり、敷地も狭くはないので平屋で建てることもできたが、あえて3階建てを望んだのは、思索する精神の内奥が地上の矮小な世界と縁をきっていたのかもしれない。南側に壁とガラス屋根をもつ矩形のテラスをつくり、それとは対照的にL型の敷地の奥を非人工的な、土と植物による自然の庭としたのも「哲学する精神」の要請であった。


 

全体は打ち放しコンクリートのコンパクトなマッスとし、シルバーのラスター・タイルの帯で各階を区切った。 この帯ではさまれた梁が南に伸びて南端の塀とつながり、テラスを整形の半外部空間とする。対する北側は、谷部を見下ろす眺望を最大限享受するよう、階段室の全面をハーフ・ミラーのガラス窓とした。 道路側は大きく採光しながらマッシブな壁面を連続させるべく、各階ともガラスブロックの大窓としている。ステンレスの庇の下の鮮やかな青紫色の玄関ドアは、モノトーンの世界における「考える葦」の存在証明である。


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