● 『 インド建築案内 』が1996年の秋に TOTO出版から刊行されると、
大評判になり、多くの新聞や雑誌に 書評や新刊案内が載りました。
その反響のいくつかを紹介します。(本の詳細は、「神谷武夫の著訳書」の
サイトに掲載してありますので、ここをクリック してください。)
まず『朝日新聞』には 写真家の藤原新也さんが、とても良い書評を書いてくれました。
「 想像広げる宗教空間 全土を踏破した労作 」 私たちはガイドブックのようなものを はじめから作品ではないと決めてかかっていて、このような欄で取り上げられることも あまりない。しかしミシュランのガイドブックを例にあげるまでもなく、すぐれて巧緻(こうち)に、そして時間の犠牲を伴って仕立てられたガイドブックというものは、なまじの文芸作品などを軽やかに凌駕(りょうが)することがあるものだ。この『インド建築案内』という平易なタイトルの本を なにげなくめくってみた時、それと同種の感慨をもたらされると同時に、このような本が同じアジア人である日本人の手によって編まれたということに、ある種の冥利(みょうり)を感じざるを得なかった。 B5変型の 600ページ弱の分厚い本には、インド全土にわたる二千点の有名無名の建築写真が収められており、それぞれの写真に 400字 900枚に及ぶテキスト、そして地図、建築図面が付されている。インドの建築本といえば、かつてこの国を植民地としたイギリス人の共著になる『モニュメント・オブ・インディア』が古典と言われているが、この著作には写真もあまり載っていず、必ずしも全地域を踏破しているわけではなく、文献によって書かれているケースが多い。 そのような意味からすると、本書はインド全土を踏破してインド建築を網羅した、おそらく世界ではじめての著作ではないかと思う。そしてなによりも特筆すべきことは、この膨大な作業が一人の手によってなされたということだ。著者は建築家だが、この 20年にわたるインド建築への行脚は、本作りという矮小(わいしょう)な目的ではなく、建築家としての個人的興味に貫かれていたからこそ 成された技だと思う。 本書に収められた建築は インドのものであるから、当然 宗教空間を表現したものが圧倒的に多い。思うに 18世紀以降今日に至るまで、私たちの生きた世紀は「経済の世紀」だった。しかし人類はそれ以前の大部分を「宗教の世紀」の中で生きてきたという事実がある。本書に展開される宗教空間は、経済の世紀の破綻(はたん)の兆候の見られる 20世紀末において、あらためて 人間が本来住まうべき空間とはなにか、ということを 図らずも提示しているように思う。 (評者・藤原新也)
「すごい本を出しましたね。誌面で大きく報道しますよ。」
ということでした。しかし これを電話盗聴したマフィアは、毎日新聞の上層部に圧力をかけたようです。
こちらは そんなことは知らないので、いつまでたっても載らないのを不審に思っていたら、2週間後の 10月29日の夕方になって 梶原さんから電話があり、 『 インド建築案内 』の紹介は、木曜日の朝刊の 12面、住宅のページに
と言うのです。あっけにとられましたが、実際、送ってきた その日(10月31日)の新聞を見ると(下に掲げてある、12面ではなく 19面の上半分のスキャンですが)、この一番下の4行分に載っています。これは まさに「チョロ」っと、できるだけ 目立たないように、できるだけ わからないようにと 工夫して載せた、としか見えません。 |
「庶民の家とは、結び付けられないが、TOTO出版の「インド建築案内」(2800円)は、すぐれもの。インド全土の建築といっても7,寺院やお城が多いが、カラー1800枚。r旅行案内」とは比べものにならないほど、網羅されている。 これは、著者の建築家、神谷武夫さん自らが撮影した。神谷さんは20年間にインドに12回行き、それぞれ1ヵ月から1ヵ月半、回っているそうだ、持っているネガは2万枚。めったにお目にかかれない写真が多い。自身が設計した建築の中には、イスラム建築の影響を受けたものもあるそうだ。」
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『 日本経済新聞 』 1996年12月13日号、文化欄記事
この記事は、この「プロフィール」のページの 上のほうに 載せてあります。
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『芸術新潮』 1996年12月号 p.143 インドの建築といえばイスラムの白亜の霊廟タージ・マハルか、妖艶なヒンドゥ彫刻で名高いカジュラーホの寺院か?そんな代表的遺跡は、実はこの国の豊穣な建築史のほんの一端に過ぎなかった! それを目の当たりにさせるのが、建築家・神谷武夫が 20年に及ぶ調査行の末に自らの写真と文とで刊行した『インド建築案内』だ。 612の重要物件を、1800点ものカラー写真と 300点余の地図・図面で紹介。日本の神社や天守閣に酷似したヒマラヤ地方の木造ヒンドゥ寺院、ピンクに統一された 18世紀の計画都市ジャイプルなどなど、ページをめくるごとに「インド文化とはかくも多種多彩だったか!」と驚かされる。実体験に基づく旅行ガイドも添え、門外漢も思わず机上の仰天建築旅行へ引き込まれる一冊なのだ。
国際地学協会 『旅のネタ本 アジア編』 p.11
「『インド建築案内』の人気には 驚いているんですよ。
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