2番目に実現した「成長する美術館」、東京の 国立西洋美術館 設計:ル・コルビュジエ
1959年竣工。 一辺が約 41メートルの正方形なので、アフマダーバードとチャンディーガルの美術館の 50メートル角よりも ひと回り小さい。

1937年のプロジェクト C「現代美術センター」のための このスケッチは、国立西洋美術館の中央にある「19世紀ホール」の オリジナル・コンセプトである。 (柱が鉄骨造のように細いが2本立ち、2階の展示室に上る斜路を設け、トップライト天井から採光する)
( From "Le Corbusier, Oeuvre Complète 1934-38", Zurich, p.153 )

国立西洋美術館、中央の19世紀ホール(かつては壁に、チーク材のような 木の合板を貼っていたような気がする)。 観覧者は玄関ロビーから まずこのホールへ入り、ここから斜路で2階の展示室に行く。
まず 騒がしいミュジアム・ショップに導くような商業主義は、 ル・コルビュジエの望むところではない(美術館としての 常識と矜持にも欠ける)。
この 19世紀ホールは、こんな貧相な展示ではなく、もっと ずっと大きな彫刻や絵画(タぺストリーなどでも)を展示して、観覧者に、あゝ 美術館に来たのだ、という高揚感を与えるための空間です。


国立西洋美術館での、ずいぶん昔の「ル・コルビュジエ展」の入場券

国立西洋美術館は 1959年6月に開館して、初年度に 58万人もの入場者を数えたという。1960年からは企画展を開催できるようになり、最初に 日本国内に分散していた 松方コレクションの(売却された)絵画・彫刻作品を集めて「松方コレクション名作選抜展」(1960年 5ー7月)を開催、2回目が「20世紀フランス美術展」(1960年 10ー12月)だった。
そして第3回の企画展として(といっても、世界巡回展の日本会場ということだったが)、ル・コルビュジエの作品展を 1961年の 1月24日から 2月19日まで開催したのである。(これに先立って、同じ内容が 前年末の 11月から 12月にかけて 大阪の市立美術館で展示されたので、それぞれ「ル・コルビュジエ 大阪展」、「ル・コルビュジエ 東京展」という名称になった)
当時 ル・コルビュジエは存命中で 73歳。私はまだ中学生だったが、中学校に美術部をつくって熱心に活動していたので、西洋美術館には よく出かけた。この「ル・コルビュジエ東京展」も見に行き、その時の入場券の 半券が残っている(図は、モデュロール男)