東海散士 著 『佳人之奇遇』サンプル・ページ 


佳人之奇遇

東海散士 著 『佳人之奇遇』巻の1、劈頭ページ、明治18年 (1885)
手彫りの木活字の書体は 実に美しい。 ローマ字は 全く出てこない。
23×13cm、「費府」にはフィラデルフィア、「獨立閣」にはインデペン
デント・ホールと 振り仮名が付いている(現在の 独立記念館のこと)
基本的に句読点は無いが、漢詩、漢文には 句点(。)がつけられている。
上欄に 漢文詩や漢文評が 全編にわたって書かれているが、読むのは難しい。



佳人之奇遇

『佳人之奇遇』のサンプル・ページ、23×13cm、巻の2、劈頭ページ
袋綴じだが 紙が薄いので、裏ページが透ける。固有名詞には左傍線をつけている。
1ページは 20字 × 10行で、ちょうど 200字になる。『佳人之奇遇』は全巻で
1,334ページなので、400字詰めにして 670枚ぐらいの長編小説である。



学問のすすめ

< 比較 参考 >(同縮尺)
福澤諭吉・小幡篤次郎 著 『學問のすゝめ』初編の劈頭ページ、明治5年 (1872)
慶應義塾の活字版(日本近代文学館による復刻版、1981、ほるぷ出版)
『佳人之奇遇』より13年も早く、活字も小さいのに、読みやすい。句読点は無い。
これは木活字ではなく、金属製の彫刻活字だという。



木活字

   木活字(もっかつじ) ( 横浜開港資料館の ウェブサイト より
文字のかわりに絵を刻めば、木口木版になる(大きさを問わず)
そうすれば 活字と同じ高さなので、活字と絵を一緒に製版・印刷が できる。
ただし『佳人之奇遇』では 木口木版画ではなく、挿絵は すべて石版画にしている。



佳人之奇遇

東海散士 著 『佳人之奇遇』巻の8、奥付、明治21年 (1888)
柴四朗の肩書は「青森県士族」となっているが、巻1~巻6では「福島県士族」
だった。これは、福島県の会津若松を藩都としていた会津藩が、
会津討伐によって 青森県の僻地、斗南(となみ)に移封されたからである。
検印紙には「東海散士之印」と書かれている。 定価は 35銭。
「印行」というのは印刷のことであるから、「刻成」というのは完成のことらしい。

著者兼発行者が 柴四朗となっているので、自家出版ということになるが、
発売者の原田庄左衞門が、出版社 博文堂の主人で、写真家の小川一眞(かずまさ)
兄である。 四朗はアメリカ留学中に 、ボストンで小川一真と知り合った。