岡倉覚三の 最初の英文著作 "The Ideals of the East" 『東洋の理想』
岡倉覚三の『東洋の理想』の本扉
最初の章「理想の領域」 左ページは、ニヴェーディタ女史による序文の末尾。
平凡社・東洋文庫、布装の『東洋の理想 他』(翻訳)の表紙 1983年
ジョン・マリー社『東洋の理想』再版の表紙 1905年(ウェブサイトより)
『東洋の理想』の最初の米国版は 1903年で、E.P. Dutton 社から
版元装幀の、初版の布装本 John Murray, London ロンドン、ジョン・マリー社
今から 111年前の 1903年(明治36)に出版された。
20cm × 13cm × 3cm、140ページ、重さ 400グラム
初版の部数は 500部にすぎなかったから、今に残る 保存のよいものは少ない。
表紙のタイトルや紋様の朱色が 地の焦げ茶色に沈み込んで、あまり効果をあげていない。
少なくともタイトルは、背文字と同じに、金文字箔押しにすべきだったろう。
著者名の岡倉覚三が KAKASU OKAKURA となっているのは、どこで間違えたのだろうか。
同年の1903年に、米国版が E・P・ダットン社から 同じ装幀で出版されたらしい。
ここでも KAKASU OKAKURA となっているので、誤植ではない。ジョン・マリーへの
紹介者であり、本の序文も書いたニヴェーディタ(マーガレット・ノーブル)の
手書き文字が かすれていたか、誤って読まれたのではなかろうか。
この本は十分な校正がなされなかったと、後に岡倉が書いている。
本文は、Asia is one.(アジアは一つなり)で始まる。
ヨーロッパ人が定めた「アジア」という地理範囲は、イスラーム文化圏と インド文化圏と
中国文化圏から成るが、岡倉が論じる「アジア」には、イスラーム圏の影が薄いようだ。
『東洋の理想』佐伯彰一訳、『東洋の覚醒』桶谷英昭訳、 『日本の覚醒』橋川文三訳。
『茶の本』だけ収録されていないが、この文庫の典雅な装幀は『茶の本』の英文初版と、
大きさも 仕上げも 色合いも、一番よく似ている(表紙にタイトルの金文字はないが)。
著者名は、原書のとおりに 岡倉覚三とすべきだと思うが。
"The Awakening of Japan" 『日本の覚醒』
(1904年 センチュリー社)のデザインを採り入れた。
英国初版のジョン・マリー社版と 同じ装幀で 出版されたらしい。