『イスラムの建築文化』の函(1987年)。定価 22,000円
函の大きさは 29cm × 22cm × 3cm。
表の写真はデリーのフマユーン廟、断面図はエディルネのセリミエ、
裏の写真はダマスクスのウマイヤ・モスク、断面図はカイロのバルクーク廟、
背の小写真はコルドバのメスキータの天井と、カイロのカーイト・バイ廟の天井、
写真はすべて筆者撮影のもの。 デザイナーによる装幀案が
どうも気に入らなくて、私がデザインし直したという記憶がある。
タイトル文字を斜体にするというのは、最後までデザイナーがこだわった点であった。

     

『イスラムの建築文化』本体の布装の表紙。
28cm × 21.5cm × 2.8cm。 タイトルは金文字箔押し。
装幀は長岡さんにまかせていたが、できるだけ原書に忠実にしたのだと思う。
紺色の布に金文字だけというのは、今見ても高雅な感じで、とても良い。
花ぎれと スピン(しおり紐)の色が白いのは、私の希望だったと思う。

『イスラムの建築文化』扉。
周囲の余白が小さく、やや窮屈な感じがするのは、
どういう理由か わからないが、長岡さんが決めた。
紙取りの経済性 ということではないような気がする。

『イスラムの建築文化』 p.1。
原書にはない「A. 宗教的予備知識」と「B. 建築的予備知識」を
「訳者序言」として書き加えて、読者の理解の便を図った。


訳者序言

 本書は スイスの建築史家 Henri Stierlin による Architecture de l’Islam, Office du Livre, Fribourg, 1979 の全訳である。専門家向けの研究書ではなく、イスラム文化に興味を持つ人、および 建築愛好者を対象とした一般書であるので、記述は平易であり、訳者としても 最大限 読み易さ本位に翻訳をした。とは言え、イスラム文化というのは まだまだ日本人になじみが薄く、ごく基本的なことであっても、読者の側に 知識のないこともあるだろうと思われる。そこで、建築愛好者でありながら イスラム建築の本は初めて読むという方、そして イスラム文化については知識がありながら 建築のことはよく知らない という方、たちが あらかじめ頭にいれておけば 本書の理解が より容易であろうと思われることがらを、以下にまとめてみた。前者のためには「A. 宗教的予備知識」、後者のためには「B. 建築的予備知識」である。勿論 どちらについても造詣の深い方は、このページを無視して頂いて差支えない。

 その前に、本書の訳語の扱い方について 説明しておきたい。 読者が なじみのない カタカナことばに出会う度合いを できるだけ少なくするように、極力 日本語に置き代えるよう努めた。それでも 多数のアラビア語、ペルシア語、トルコ語等が登場することになるが、固有名詞も含め、これらのカタカナの表記の仕方は 原則として『イスラム事典』(平凡社、1982、日本イスラム協会監修)に従っている。ただし 建築用語として頻出する 「ヴォールト」を「ボールト」と書くわけにはいかないので、「ヴ」の音は復活させている(例えば サファビー朝ではなくサファヴィー朝 のように)。 固有名詞の語頭にある 定冠詞の「アル」は、すべて省略した。なお、以下の予備知識の説明においても、上記『イスラム事典』を参考にしている。本文に関する図版の番号は その都度 右肩に添えて、参照の便をはかっている。また 訳注は 本文中に〔 〕内に挿入した。


『イスラムの建築文化』 p.2-3 「B. 建築的予備知識」