新潮社版『堀辰雄全集』普及版の背と表紙、クォーター・クロス装。
背まわりが白いクロスで、平が青緑色のミューズ・コットン紙。
背には小さめの黒活字でタイトル。 実に典雅な装幀である。


本文ページともども、今もなお きれいなので、半世紀以上も前の
古書には見えない。もっとも、けばけばしい色彩と どぎついデザインで
毎日大騒ぎしているテレビ番組で育った現代の日本人には、
これは あまりにも刺激のない、物寂しい装幀に見えるかもしれない。



      

新潮社版『堀辰雄全集』の本来の 紙装の函。
函だけは、半世紀に わたる背やけ、天端の汚れ、シミが だいぶ進んでいたので、
この上に 新しい紙を貼ることにした。もとの函の色は、本体の平と
同系色の(青系の)明るいミューズ・コットンではあるが、その明るい色では
本体の背の白い色が 映えないので、もう少し 濃く 渋い色が よいと思われた。


(うぐいす)色の紙を貼って リフレッシュした函に入れた『堀辰雄全集』
各巻の内容は、オリジナルの「平」から 縮小コピーしておいたものを貼付。



    

当時の 新刊・近刊案内には、「普及版全六巻」と書いてあるが、本にも 函にも
月報の一面にも、「普及版」の字は無い。 ただ 月報における 福永武彦の
解説のみが、これが7巻本全集の普及版であることを述べている。本の体裁予告には
「清楚な装幀」、「特別判型 美本」とある。出版社としても 自信作だったのだろう。