インドでは 近世のムガル朝において、細密画 (ミニアチュール) が高度に発展しました。イスラームでは偶像崇拝が禁じられているので、モスクやマドラサなど公共の場には 壁画や彫刻がなく、絵は小さな細密画として 宮廷内などの私的な場で楽しまれました。一方、ヒンドゥのラージプート諸国でも、ジャイナ教や仏教の 絵入り写本 の伝統とムガル朝の影響のもとに 独特の細密画を展開しました。この絵はその一例で、恋に悩むヒンドゥの乙女が 弦楽器をつまびきながら樹下に佇(たたず)み、孔雀に慰められている場面です。写実的で叙情的な画風は、パハーリーの カーングラ派に属するものでしょう。描かれたのは 19世紀と思われます。
原画は わずか 7cm× 13cm の大きさですから、いかに細密に描かれているかが わかります。絵のあちこちに 小さな丸い穴があいているのは、ホタルが飛んでいるのではなく、虫食い穴です。(神谷所蔵)