準備書面ー2

事件番号  令和2年(ハ)第11887号
      水道料金返還及び慰謝料請求事件
原告    神谷武夫
被告    小池百合子 外2名

                                  2020年9月8日
東京 簡易裁判所民事第5室御中
                                  原告 神谷武夫


訴状を提出してから7ヵ月以上たちますので、その間の出来事を整理して 報告いたします。

訴状を出したのは1月27日でしたが、裁判所では、このように 東京都の公務員を個人として被告にし、水道料金返還および慰謝料請求をするということが 訴訟として成り立つのかどうかを、時間をかけて検証されたようです。結論として、本件の場合 それは成り立つという判断をされたようで、「訴状棄却」とはなりませんでした。
 で、裁判を行うことになると、私の訴状に瑕疵があり、それは、「被告ー4東京都水道局 北営業所員 武田」 に、名前(姓名の「名」)が記載されていないので、個人としての特定が不十分である、ということです。そこで裁判所の書記官から、3月3日付の「事務連絡」文書で問い合わせがありましたので、3月4日に次のような「調査嘱託申立書」を書いて、裁判所に送りました。

1 証すべき事実:上記事件の「被告4武田」の氏名
2 嘱託先:   東京都水道局 北営業所長 勝健輔(かつ けんすけ)
3 調査対象者: 東京都水道局 北営業所員、上記事件の「被告4武田」(たけだ)
4 調査事項:  東京都水道局 北営業所員、上記事件の「被告4武田」の 姓名

3週間後の3月24日に書記官から電話があり、「本日 東京都水道局 北営業所の所長・勝健輔氏に「調査嘱託書」を送りました、回答期限は4月24日です」という連絡を受けました。
 被告ー4武田は ひたすら逃げている(あるいは、させられている)のだから、どうせ すぐには 裁判所に返事が来ないだろうと思っていましたら、驚いたことに(後から わかったのですが)、嘱託先であり 被告ー3でもある 勝健輔 所長が、「調査嘱託書」送付の1週間後の4月1日付けで(裁判所に返事をすることなく)、墨田都税事務所に転勤(出向)になっていたのでした。後任の北営業所長は、港都税事務所から移動になった 高橋正純という、水道局の課長です(各地の営業所長は、水道局の課長がなり、北営業所では その下に3人の課長代理がいます。)
 裁判所には 期限ぎりぎりの1か月後に、現・高橋所長が 代理回答をし、結論として、次のように書いています。

調査嘱託について(回答の最終部分) 「水道料金返還及び慰謝料請求事件」に係る請求は、地方公共団体である「東京都」に対して行うべきものであり、職員個人に対して行うことはできないため、調査嘱託に応ずる必要性はないと思料しますので、職員個人の氏名を回答することはできません。」

 こうして東京都水道局は、私の地区の検針担当の水道局員・武田の名前を(彼が名刺を作ってもらえずに「姓」だけを手書きしたカードを置いていったので、その「名」を尋ねているというのに)ひたすら秘密にし続けて、裁判が開かれるのを妨害し続けました。
 また、公務員が個人的に犯した犯罪的行為(名誉棄損、侮辱)に対して私は、その慰謝料を「東京都」に請求して「都民の税金」で払ってもらおうとは、まったく思ってもいません。悪いのはこの事件の被告4人であって、東京都民でもなければ、水道局全体でもありません。都知事の公務としての政策を問題にしているのでもなければ、水道局の政策に苦情を言っているのでもありません。公務員というのは、市民に奉仕するのが仕事です。それが 市民を侮辱したり名誉棄損をしたりするのは、「公務」としてではなく、公務員でありながら個人として悪行をし、かつ無反省であり、名前を隠して逃げ回っていることを非難しているのです。

 訴状に書きましたように、身に覚えのない高額料金を請求されたので私が抗議し、調査がすむまで自動引落しをしないようにと 武田氏に頼んだにもかかわらず、水道局は 自動引落しをストップせずに 引落してしまった。これは、市民の銀行口座から、本人の同意なくして預金を引き出してしまうという、市民の財産に対する「窃盗行為」のようなものです。こんなことをされたのでは、市民は たまったものではありません。そこで私は、銀行からの水道料金の自動引き落しを、1月17日に解約しました。自動ではなく、その都度、請求書をチェックしてから 支払うことにしたのです。

 裁判の開始が遅れている間にも、2ヵ月ごとに水道局から請求書が送られてきます。私は十年一日のごとくに同じリズムで生活していますので、水道使用料は一定しています。2カ月間で 4,000円くらいになります。それが、昨年末の 12月3日から 今年初めの2月4日までの2ヵ月分として、24m3、5,579円の請求書が来たのです。1年半前の「身に覚えのない高額料金」の再現です。そこで4月11日に、水道局の北営業所に宛てて、次のような文面の葉書を出しました(甲11号証)。

甲12号証

甲11号証 水道局・北営業所への葉書(2020年4月11日)

「次々と水道料金の請求が来ますが、2018年の6月分と10月分が 身に覚えのない高額料金だったので抗議し、自動引き落としをしないようにと武田氏に頼んだにもかかわらず、水道局は引き落としてしまった(どういう権限で?) この不法行為をつぐなうために、まずそれらを払い戻すことが先決です。その上で 正しい料金を請求すべきでしょう。」
 また、今年の 12/3 〜 2/4 分の請求が 24m3 5,579円とあるが、いつもと同じ生活をしているのに、こんなに高額になる筈はない。またしても(1年半ぶりに)メーターの異常だと言わざるをえない。その証拠に、次の 2/5 〜 4/2 分は正しく 16m3 3,951円となっている。」

 もちろん私は、こんな 身に覚えのない高額料金を払いはしません(自動引き落としのままになっていれば、また「窃盗」されてしまったことでしょう)。ところが水道局は この葉書に対して何の返事もせず、逆に5月14日に、この水道料金 5,579円を支払わなければ 水道を止めるぞと、私の家の郵便受けに通知書をいれて、脅しをかけてきました。

 私の葉書の内容は 北営業所が握りつぶしてしまったようなので、東京都水道局長・中嶋正宏氏と 東京都知事・小池百合子氏に、この葉書のコピーを送りました(甲12号証)。しかし どちらも何の返事も よこさないどころか、水道局からは「給水停止執行通知書」が 送られてきたのです。6月2日から給水を止める、という通告です。(甲13号証)

甲12号証  甲13号証

甲12号証 都知事と水道局長への葉書送付(2020年5月30日)と、
甲13号証「給水停止執行通知書」

しかし私は、不正とは戦い続けます。こんな悪どい役所に従うわけにはいきません。水が来なければ、水のない生活をするしかないでしょう。6月1日の夜に、浴槽に水を一杯に溜めました。毎朝、この水を洗面器で洗面台に移して、タオルを浸け、顔を洗って 体を拭くためです。しかし浴槽の水を沸かしてしまうわけにはいきませんので、風呂には入れません。地方の自治体の中には、このコロナ事態下で 国民が苦しんでいるのだからと、この数カ月の水道料金を無料にしていると聞きます。自治体にできる範囲のことをしようと。それに比べて 東京都は、不当な水道料金を請求して、異議を唱えても 調査もせず、これを払わなければ 水を止めるぞ と脅して、風呂にも入れない生活を、都民である私に強いているのです。「都民ファースト」などというのは、口先だけのスローガンにすぎません。(私は水道料金などの金に困っているわけではないので、正当な料金の請求ならいつでも支払います。)

6月10日に 突然、水道局北営業所の現在の所長(課長)以下3人が私の住まいを訪れました。
高橋正純(北営業所長)、松沢透(課長代理・検診係長)、宮崎剛一(課長代理・収納担当)の3人です(もちろん張本人の武田は来ません)。高橋氏は訴訟の当事者ではありませんが、現在の北営業所長として 詳しい事情と経過を知っておきたいと、1時45分から4時45分にわたって3時間も 私に質問をし、私の懇切な説明を聞いて、最後に「よくわかりました」と言って帰りました。被告の弁護士や東京都側の関係者は、高橋氏にその折のことをよく聞いてほしいと思います。(もっとも、「よくわかりました」と言ったにしては、高橋氏は何もしなかったようですが)。

 上記のように、私は6月2日から3ヵ月以上、風呂に入れないでいます。ただ 予告にもかかわらず、6月2日に「給水停止」は なされませんでした。それですから、トイレや調理には困っていません。しかし「給水停止執行通知書」は取り消されていないので、いつ給水停止になるかわかりませんので、浴槽に溜めておいた水を 沸かしてしまうわけにはいかず、入浴なしの生活を余儀なくされています。そのために水道使用量は、この6月3日〜8月4日の2ヵ月分のメーター検針で、わずか 13m3ということです(以前は2ヵ月ごとに16m3〜20m3でした)。
 ここからも、2014年の8〜9月分が 27m3(6,248円)というのが、いかに ばかげた 過大な請求であったかということが よくわかります。

 6月23日に裁判所の書記官から電話があり、水道局への(被告-4武田についての)調査嘱託に対して、上記のような回答がありました。2月7日にも尋ねたことですが、あらためて確認したい。訴状を、個人ではなく東京都を相手にすることに変更する気はありませんか? と問われ、私は 次のように答えました。悪いのはこれら被告4人であって、その誰か一人でも 適切にふるまっていれば、裁判沙汰などに ならなかったはずです。また、都民の税金で慰謝料を払ってもらう気は ありませんので、被告は東京都ではなく、これら4人の個人なので、訴状に変更はありません、と。

 これで 訴状が棄却されるかもしれないなと思いましたが、そうはならず、6月27日に裁判所から「補正命令」が届きました。個人を相手にするのであれば、都知事とか水道局長という肩書は不要である、単に書類の送達場所として勤務先を書くよう、また被告-4武田の名(下の名前)を明らかにした「準備書面」を送るように、と。
 7月10日に「準備書面(1)」を裁判所に送り、被告-4については、次のように書きました。

被告4 氏名 武田某 住居所不明 送達場所(被告の勤務先)東京都水道局 北営業所
「被告4武田」の名を「某」とした理由を、以下に説明します。

訴状に書きましたように、原告の身に覚えのない「水道使用量・料金のお知らせ」が2018年10月に届きましたので、原告は直ちに水道局の北営業所に、納得できない旨の電話をいれたところ、この地区の担当である武田氏が10月16日に来宅したので、原告は1時間以上にわたって、水道使用状況の説明をしました。その際 武田に名刺を請求したところ、平局員は名刺を作ってもらえないので、持ってないと言って、その代わりとして、「最終通知」というタイトルのカードを取り出して、そこに「武田」というサインをして置いていきました(甲10号証)。 (中略)
 彼はその時に、意図的にかどうか わかりませんが、「姓」だけ書いて「名」を書きませんでした。原告が それを気にも留めなかったのは、もし北営業所に複数の武田姓の人がいるのなら、「名」を書いたはずだからです。「姓」だけ書いたということは、武田という姓だけで 水道局北営業所の人物(私の地区の担当者)は 特定できる、ということを示しているからに ほかなりません。事実、原告は北営業所に何度か電話をして、武田氏を呼んでもらったり、武田氏の「名」を尋ねたりしましたが、電話に出た人から、どの武田ですか?と問われたことは一度もありません。「北営業所の武田」で、本人の特定ができることは明らかです。
 訴状を出す前の本年1月16日に、訴状に書き入れるべく、原告は北営業所に電話をして、武田氏の名を知りたいと言いましたら、だいぶ待たされ、武田本人が出るのかと思ったら出ず、松沢という上司が出て、武田の名前は教えないと言います。

 3月24日には、裁判所から北営業所の所長・勝健輔氏(被告-3)に、局員・武田の氏名を回答するように「調査嘱託書」を送ってもらいましたが、勝健輔は嘱託に答えることなく転勤(出向)してしまいました。後任の高橋正純氏が裁判所に代理回答をしましたが、やはり武田の名は回答できないということでした。したがって原告は「被告-4武田」の「名」を知ることはできません。しかし 以上のことから、北営業所には武田姓の人が一人しかいないことは明らかですので、本人特定に問題はなく、訴状では「武田某」ということにしておきます。

 7月13日に裁判所の書記官から電話があり、裁判を始めるので、第1回口頭弁論の期日を決めたい と言います。それで私は、裁判官は上記の準備書面に納得したのだなと思って安堵し、期日を9月9日と決定しました。ところが7月19日に裁判所から「訴状却下命令」書が送られてきました。それには訴状の写しも付けられていたので、私はてっきり 訴状全体が却下されたのだと思い込んでしまいました。もう裁判はないものと あきらめていましたら、9月4日に川上法律事務所から「答弁書」が送られてきたので、驚いてしまいました。改めて「訴状却下命令」を読み直すと、訴状却下命令は被告-4武田についてだけであって、被告-1〜3の3人については 裁判をやるのだとわかりました。

 しかしながら、今回の事件の張本人である「武田某」が外されてしまっては、裁判が成り立つのだろうか、裁判の意味があるのだろうかと、戸惑っています。でも 半年以上かかって、せっかく ここまで来たのだから、私が敗訴になろうと 最後まで見届けて、私のホームページ『神谷武夫とインドの建築』の当該ページに 書き加えて 読者に読んでもらおう、「武田某」については、下の名前がわかった時点で、改めて訴訟を起こそう、と考えている次第です。それにしても、裁判で堂々と自己主張しようとはせずに、名前を隠し続けて逃げ回るとは、ずいぶんと卑劣な公務員もいるものだと思います。
                                       以上