お知らせ・神谷武夫

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シマリスへの 懐旧の情

リス
シマリスの子供 (ChooChoo's Story より)

●5月に「リスの思い出」を書きましたが、それを書こうかな と思いはじめた頃から 毎日、リスを写したユーチューブなどの動画を見ています。「思い出」を書き終わって HP にアップしてからも、昔 飼って 失踪したシマリスへの「懐旧の情」が収まらず、最も可愛い動物は、やはり「シマリス」だなぁ と思います。もう一度 リスを飼おうか とも考えましたが、もう 年齢的に、リスを 最後まで面倒見ることは できないかもしれないので、思いとどまりました。 シマリスへの愛着は 止まりませんが、ネットで リスの動画を見るだけで 満足することにして、毎日1時間ぐらい見たり、そこから 静止画を作ったりしています。動画で見るシマリスたちも、可愛くてなりません。  ここをクリック すると、「神谷武夫のプロフィール」のサイトの『 シマリスへの懐旧の情 』のページに跳びます。   ( 2024 /12/ 01 ) 

古書の愉しみー60 范曽の『 魯迅小説挿図集

魯迅小説挿図集

● この本は、前回の『天心全集』のように、帙に入った「和本」です と言いたいところですが、中国の本ですから「和本」ではなく「唐本」か、いや 現代の本なので「古式製本の中国書」と 言うべきでしょう。造本・装幀は『天心全集』とよく似ていますが、本体は1冊だけなので、帙は ずっと薄い。1973年の 初版『魯迅小説挿図集』は、もっと小型の 粗末なペーパーバックでしたが、2002年の再版の時に 大型にして、帙入りの豪華本に仕立てたようです。日本への輸出用だったのかとも思いましたが、それにしては 日本語が全然書いてありません。中国でも人気が高く、その頃には 画家の 范曽(はんそう)も有名な大家になっていたので、国内版だったのでしょう。内容は、『阿Q正伝』や『故郷』や『兎と猫』など、魯迅(ろじん)の短編小説の いろいろな場面を基に、范曽 が描いた、単色の「挿絵図集」です。毛筆であっても、「日本画」とは違った「中国画」が 楽しめます。 ここをクリック すると「古書の愉しみ」のサイトの『 魯迅小説挿図集 』のページに とびます。    ( 2024 /11/ 01 )

古書の愉しみー59 岡倉覚三の『 天心全集

天心全集

● 「古書の愉しみ」の 第26回で 岡倉覚三(天心)の 英文3部作 を採りあげました。岡倉は生前に英文で『東洋の理想 (The Ideals of the East) 』、『日本の覚醒 (The Awakening of Japan) 』、『茶の本 (The Book of Tea) 』の3冊を出版しましたが、和文の本は一冊も出しませんでした。覚三の一周忌に、再興 日本美術院 は その敷地内に「天心霊社」を建てて 彼を神格化し、死後8年目には その全集を出版して、『岡倉覚三全集』ではなく、『天心全集』と名付けました。本名の「覚三」よりも雅号の「天心」のほうが 彼を偉大に見せると考えたのでしょう。
 昭和 55年 (1980) に平凡社から ほぼ完全な『岡倉天心全集』が出て以来、それ以前の全集は 資料的な価値を失い、まして最初の『天心全集』(1922) など、その写真さえ見たこともない人が ほとんどでしょう。この「古書の愉しみ」では、今から 100年も前に出版された、和本の「全集」の たたずまいに関心があるので、見たこともない人たちのためにも、私の蔵書をスキャンして、ここに紹介しようと思います。ここをクリック すると「古書の愉しみ」のサイトの『天心全集』のページにとびます。    ( 2024 /10/ 01 )

古書の愉しみー58 リュプケ世界美術史

リュプケ

● この「古書の愉しみ」シリーズの 最初のほうでは、誰が最初に「世界建築史」の通史を書いたのだろうか、ということを探求して、それはイギリスの ジェイムズ・ファーガスン (James Fergusson, 1808-86) だとわかりました。では、最初に「世界美術史」の通史を書いたのは誰かというと、ドイツの美術史家、フランツ・クーグラー (1808-1858)です。しかし、それを増補改訂するようにして ヴィルヘルム・リュプケ (1826-93) が書いた『世界美術史』が、建築史におけるファーガスンの『世界建築史』のような役割をして、世界中に流布しました。ファーガスンとリュプケの2人とも 19世紀の人で、同じ頃に それぞれ 初版を出版しました。今から160年ぐらい前のことです。リュプケの『世界美術史』が 1860年、ファーガスンの『世界建築史』が 1865年です。ここをクリック すると「古書の愉しみ」のサイトの『 世界美術史』のページにとびます。    ( 2024 /09/ 01 )

INTERMEZZO

アルメニア
暑中お見舞い申し上げます(アルメニア より 愛をこめて)

● 今月は夏休みなので、新しい記事はありません。
そのかわりに映画の DVD の紹介をします。
今回は 世界の映画を6本ですが、珍しく その半分が 日本映画です。
映画の制作年度順に並べます。   ( 2024 /08/ 01 )





破戒

●『 破戒1962年(日)監督:市川崑 (1915-2008), 脚本:和田夏十,主演:市川雷蔵, 長門裕之、藤村志保、三国連太郎、岸田今日子、中村鴈次郎、杉村春子,撮影:宮川一夫,音楽:芥川也寸志,原作:島崎藤村(1872-1943)
 感涙物。島崎藤村の原作を読んだのは たしか中学生の時で、やはり感涙したと思います。あまりに強い印象を受けたので、国語の試験では、いつも「はかい」を「破壊」ではなく「破戒」と書いてしまって、国語の先生に何度も注意されたのを覚えています。若き藤村が 詩から小説に転向して、最初に書いて 自費出版した 意欲作です(1906)。この 13年後の『新生』という 下らないものには がっかりしましたが。
 映画化は 1948年に木下恵介監督によっても なされましたが、この 1962年の 市川崑 監督のものが 最良と思います。市川はこの2年前に幸田文 原作の『おとうと』を撮って 数々の受賞をし、これも 同じ 宮川一夫 の撮影で 美しいモノクロ映画にしています。私としては、前期の『破戒』と 後期の『細雪』が、最高の市川作品と思っています。脚本の 和田夏十(なっと)は、市川監督の妻です。丑松の恋人の 志保を演じた若い女優は、島崎藤村の「藤村」と、役名の「志保」とから、藤村志保という芸名にしたという。



蜂蜜

●『 蜂蜜2010年(トルコ)監督・脚本:セミフ・カプランオール (1963- ),主演:ボラ・アルタシュ、エルダル・ベシクチオール
 トルコの山奥の、森に囲まれた山村での、あまり声の出ない、吃音の少年・ユスフ と その家族(父と母と、たまに祖母)の、自然の中での生活を 淡々と、静かに、非常に静かに描いた作品。付随音楽が一切無く、木々のそよぎや 鳥のさえずり といった 自然の音だけを背景にした、タルコフスキーの映画のような 静謐な、そして人間の心の奥の、遠い魂を描いたような映画です。ユスフ3部作(『卵』2007、『ミルク』2008)の、幼年期に遡った完結編と言いますが、映画としては それぞれ あまり関連の無い、独立した作品です。 予告編は こちら



海街 diary

●『 海街(うみまち) diary2015年(日)監督・脚本:是枝裕和 (1962- ),主演:綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず,原作:吉田秋生(コミック)
 『細雪』のような 四姉妹の家族の物語、といっても親はいず、誰も結婚していず、4人だけで 古い一軒家に住んでいます)。家族を描いて 小津安二郎にも負けない 是枝裕和 監督の演出が素晴らしく、四姉妹を演じる俳優も、みな適役です。是枝作品の中では、問題作ではないけれど、気張ったところがなく、私は これが一番好きです。
 映画を見た数年後に、原作の 吉田秋生(あきみ)のコミック(「海街 diary」全9巻、小学館)を読んだら、これも とても面白かった(こちらでは 末娘の すずちゃんが主人公ですが)。 絵も 非常に うまくて、背景まで 実に ていねいに描いています。感心しました、お勧めです。(映画化されたのは、第3巻まで)



ファーム

●『 ビッグ・リトル・ファーム、理想の暮らしの つくり方』 2018年(米)
監督・撮影・出演:ジョン・チェスター (1971 - ),出演:モリー・チェスター、愛犬トッド、動物たち、植物、鳥、虫、微生物
 ロサンジェルスのアパートに住んでいた ジョンとモリーの若夫婦が、愛犬の鳴き声への苦情のために住めなくなり、思い切って都会生活を離れて、料理家の妻 モリーの理想のもと、市から車で1時間の所にあった 20ヘクタールもの 荒れ果てた農場 を買って、協力者たちとともに、そこを本当の「自然」、多様な動物や植物の住む 「楽園」 "エイプリコット・レイン・ファーム" に変えていく、8年間の苦闘と幸福を記録した、素晴らしいドキュメンタリー映画です。ジョンは もともと映画製作者で カメラマンをしていたというだけあって、映像の美しさ にも 感嘆しました。原題は "The Biggest Little Farm" です。 予告編は こちら




新聞記者

●『 新聞記者2019年(日) 監督:藤井道人 (1986- ),主演:シム・ウンギョン、松坂桃李、本田翼、岡山天音,原案:望月衣塑子 (東京新聞)
 政府(内閣府)が 国民をだまして、新設医科大学の名のもとに 生物兵器製造の研究所を作ろうとしている。それを暴いて国民に知らせようとする 女性新聞記者 と、それを隠蔽しようとする官僚との接触と苦悩を描く社会派ドラマ。各種映画賞を総なめにしました。文書改ざん問題 で自殺した赤木さん、安倍元首相の「モリカケ問題」などを もじっています。直接の原作ではないですが、『東京新聞』の勇気あるジャーナリスト 望月衣塑子(いそこ)さんの活動と その著書『新聞記者』に基づいています。主演の新聞記者役を引き受ける 日本の女優が いなかったので、韓国の女優 シム・ウンギョン(沈恩敬)を起用した といいます(母が韓国人、父が日本人のハーフ)。 予告編は こちら




ミナマタ

●『 MINAMATA ミナマタ2020年(米)監督:アンドリュー・レヴィタス (1977- ),主演:ジョニー・デップ、真田広之、美波、ビル・ナイ、国村隼,音楽:坂本龍一
 反公害闘争の原点である「水俣病」と、ミナマタを告発した写真家の ユージン・スミスのことを知った アメリカの俳優、ジョニー・デップが 製作を志し、ユージン・スミスの役で主演もしています。起用された監督の アンドリュー・レヴィタスは、アメリカの画家で、彫刻家、映画監督、作家、プロデューサー、写真家という多彩な活動をする人らしい。まあ、アメリカの 正義感に満ちた映画人たちの良心的な映画です。東大助手時代から沖縄大学教授時代まで 水俣病を主とする公害問題を闘い続けた 宇井純のことが出てこないのは、写真集『MINAMATA』(1975) によって水俣病を世界に知らしめた写真家、ユージン・スミス (1918-78) と その妻の アイリーン・美緒子・スミス を描いた映画だからでしょう。レヴィタス監督への インタビュー記事は こちら

( 2024 /08/ 01 )

古書の愉しみー57 『 ヒロシマ 』と『 ピカドン

ピカドン

● 『古書の愉しみ』は 7年前の 第 42回で 『 原爆体験記 』について書きましたが、今回(第 57回)は その姉妹編というべきか、原爆投下後、最初期に出版された本、アメリカ人ジャーナリストの ジョン・ハーシー (John Hersey) が書いた『ヒロシマ』と、丸木位里・俊 夫妻が描いた 原爆絵物語『ピカドン』を中心に、原爆関係の本の若干を ほぼ年代順に紹介します。 前回紹介した、丸木夫妻による『原爆の図』は 大きな 屏風絵のシリーズでしたが、この『ピカドン』は それとは対照的に 小さな袖珍本(しゅうちんぼん)の「絵本」であって、GHQ(連合国軍 最高司令官 総司令部)によって出版禁止にも されたので、あまり 知られてこなかった本です。 その反対に、ハーシーの『ヒロシマ』は アメリカでも 日本でも、ずっと増刷されて 読まれ続けてきたばかりでなく、各国語に翻訳されて 世界的に知られた本です。  ここをクリック すると、「古書の愉しみ」のサイトの『「ヒロシマ」と「ピカドン」』のページに跳びます。    ( 2024 /07/ 01 )



●● この「お知らせ」欄に 次の意見を書いたのは、2年前の 2022 年6月 21日です。

日本銀行の黒田総裁は、一刻も早く退陣すべきです

 日本の国力 が、どんどん落ちています。国力を示す指標は、その国の 通貨 の価値です。黒田が 2013年に日銀総裁に就任してから9年の間に、円は5割も弱くなりました。ドル換算で、90円 だったものが、今や 135円 です。外国から物を買うのに(食料や燃料や原材料を買うために)5割も多く支払わねばならなくなりました。日本の製品は、5割も安く買い叩かれます。途上国に同じ10億円を援助しても、感謝される度合いは5割減です。
 日本の国力が5割も落ちたということです。最近の物価上昇の、大きな原因です。コロナのおかげで あまり外国旅行ができませんが、今 旅行に出れば、9年前の5割も高くつくのです。安倍元首相の経済政策は とっくに破綻しているということです。それなのに、黒田 は「家計の 値上げ許容度が高まっている」などと言って 平然としています。円安 を喜ぶのは 大企業だけです。
 どんな組織も、トップが長期間 居座っていると、まわりはイエスマンばかりになり、政策変更ができなくなります。黒田総裁は、一刻も早く 退陣すべきです。こうしている間にも、日本の国力は どんどん落ちているのです。参院選を前にした野党の どれひとつとして これを主張しないのは、情けない限りです。  ( 2022 /06/ 21 )

 黒田は 2023年春まで 10年間も 日本銀行の総裁に居座り、4月9日に やっと植田和男(東京大学名誉教授)に交代しました。これでやっと 為替が正常化 されるかと思いきや、植田は 黒田の政策を踏襲するばかりで、1年間にわたり、円の価値を いっそう落してゆき、ついに この4月26日には 一時「1ドル160円」にまで下落しました(何のために 総裁を代わったのか 分かりません)。
 2022年に始まった急激な円安によって 原材料燃料 食料の 輸入価格が高騰し、それが物価の急上昇を引き起こし、そこから 連鎖反応 による諸物価の上昇が 次から次へと続きました。日銀が 「超円安 」を野放しにしているので、物価上昇悪循環 は 留まるところを知らず、国民が 生活難を訴えても、植田は 平然として、「基調的な物価上昇に大きな影響を与えていない」などと言って、何の手も打ちません。これでは 黒田と 何の変りも ありません。 なぜ、こんな人を 黒田の 次期総裁に 選んだのでしょうか? 不可解です。 日本の国力は 衰えるばかりです(日本の 国際的発言力は 半減し、ロシアや 北朝鮮にさえ バカにされています)。
 この絶望的状態を 是正できるのは 首相だけなのに、岸田もまた 何もしません。自民党の「裏金問題」ばかりでなく、この国のシステムは、すべてが 劣化衰亡しているのでしょう。

1ドル= 120円 以下に 戻すべきです。 そうしよう という 意志も 能力も 無いのなら、さっさと 辞任してほしい。      ( 2024 /04/ 27 )


リスの思い出・その他の小動物

リス
シマリス、チャキーの子供

● 今から 58年も前の 1965年(昭和 40年)、私が大学2年生の秋に、3ヵ月くらいだけ、リス を飼っていたことがあります。愛らしい 小さな シマリス ですが、偶然に飼うことになり、短期間でもあったので、名前も付けていませんでした。「思い出」シリーズのひとつとして、「」と「」に続いて「リス」の思い出も、わずかですが、書き留めておくことに しました。 これは短いので、飼ったことはないけれど 見たことのある小動物や、その他の興味深いペットについても触れ、それらについての 動画チャンネルの紹介も することにします。 ここをクリック すると、「神谷武夫のプロフィール」のサイトの『 リスの思い出・その他の小動物 』のページに跳びます。   ( 2024 /06/ 01 ) 

ガザ・イスラエル紛争

ガザ 紛争  パレスチナ地図 パレスチナの地図

● この「お知らせ」欄で、今に 再び「 アラブの忠臣蔵 」が起きるのではないかと書いたのは、4年前の 2019 年4月です。危惧したとおり、この 10月に起こりました。近年増加する、イスラエルによるパレスチナへの 植民と蹂躙、それを容認してイスラエルを軍事支援する アメリカへの反撃です。今回の軍事衝突の きっかけとなった 10月7日の ハマスによるイスラエルへの攻撃について、国連の グテーレス事務総長でさえ、次のように発言しています。 ( 2023 /10/ 26 ABC News )

 これは、「何もない状況で 急に起こった わけではない」
「パレスチナの人々は 56年間、息のつまる占領下に置かれてきた。自分たちの土地を、(イスラエルの)入植によって少しずつ失い、暴力に苦しんできた。経済は 抑圧されてきた。人々は 家を追われ、破壊されてきた。そうした苦境を 政治的に解決することへの希望は 消えつつある」

ガザ市街
砲撃を受ける ガザ市街(朝日新聞デジタル より )

 そこで、「 パレスチナの 吉良邸 討ち入り 」が起こりました。「朝日新聞デジタル」11月10日号で、東京外国語大学の黒木英充教授(中東地域研究)は、次のように語り、米国など主要7カ国(G7)の 二重基準と 偽善・欺瞞(ぎまん)を 指摘しています。

 「イスラエルは ガザの「民族浄化」のために、住民を強制移動させつつ 爆撃し、生活基盤を徹底破壊して、約1万人を殺害しています。これはすでに 絵に描いたような 国際人道法違反の戦争犯罪です。1948年 国連総会採択の「ジェノサイド条約」に照らして、ジェノサイドに当たる可能性が高い と思います。
 ガザ住民の大半は、イスラエル建国以来、その領域から追放された 難民の子孫です。イスラエルは ガザを国際法に反して 占領・封鎖してきました。境界での自由な往来を 許さず、許可した わずかな物資しか搬入させず、さらに今回、水・電気・燃料・食料の全てを 早々に遮断しました。
 不法な占領下の人々には 抵抗する権利があります。民間人を拉致・殺害するのは 犯罪ですが、イスラエル軍を攻撃するのは、国際法でも認められた 抵抗権の行使だと言えます。」

● 第2次大戦における、ナチスによるユダヤ人への迫害と虐殺には 満腔の同情をし、彼らの苦難を描いた映画を 時々紹介してきましたが、そのユダヤ人が イスラエルを建国し、かつて自分たちが被った苦難を、いまでは 自分たちが パレスチナ人に対して課しているのには、深い失望と憤りを覚えます。これでは 世界中で、ユダヤ人への共感は薄れるでしょうし、イスラエルに軍事支援するアメリカの バイデン大統領の再選も むずかしくなるでしょう。  ( 2023 /11/ 10 )

 現在、世界最大のテロリストは、ロシアの プーチンと、イスラエルの ネタニヤフです。私の心の中でも、「ユダヤ人というのは、非道徳的で 残虐な民族だ」という気持ちが、次第に高まりつつあるようです。   ( 2024 /04/ 01 )


犬の思い出 ( 昭和30年頃の 犬の飼い方 )

福ちゃん
記憶のタロに そっくりな犬(福ちゃん)

● 昨年の秋に、それまで「建築」という静的な芸術の世界に浸っていたのが、ふと 小動物 の世界に関心が広がり、思いもかけず、それに熱中するようになりました。そうしているうちに、昔 うちで飼っていた タロという雑種犬のことを 思い出すことが多くなり、時には 何時間も、タロのことや、あの時代の事を 想起したり 考えたりしているので、それを「犬の思い出」と題するページに 書いて、「神谷武夫のプロフィール」のサイトに乗せておくことにしました。ユーチューブなどの動画のチャンネルに見る、現今のペットの飼い方とは ずいぶん違う、その頃の様子を描いて、「昭和 30年頃の 犬の飼い方」という 副題を付けました。今の ペット・ラバーたちからすれば、驚いたり 呆れたりするようなことが 多いでしょう。 ここをクリック すると、『犬の思い出(昭和 30年頃の 犬の飼い方)』のページに跳びます。   ( 2024 /04/ 01 ) 

自民党の国会議員たち

安倍派
安倍派のパーティー (From Asahi Digital)

● 「私腹を肥やす」という言葉は、近年 あまり聞かなくなったな、そういう「古典的」な「悪徳政治家」は 少なくなったのかな、と思っていたら、あにはからんや、現在の 自民党の国会議員の 大多数が、「私腹を肥やし」てきた「悪徳政治家」だった と言うでは ありませんか。10年も前から続く、自民党の「組織犯罪」というべきものです。これを捜査してきた 検察は、各派閥の 会計責任者 のみを在宅・略式起訴し、真の「悪徳政治家」である 幹部たち は 立件しないという。こんなに 国民をバカにした話は ありません。
私のような世代の人間が 思い出すのは、副総理まで勤めた 自民党の 超大物議員、金丸 信(かねまる しん)です。もう 30年も前のことですが、建設業界その他からの ヤミ献金を5億円も 自宅に蓄えて「私腹を肥やし」ていたことが明らかになり、逮捕されたのです。

朝日新聞の 朝刊漫画、『となりの山田君』(354) では、山田君が ののちゃんに 質問します、
「事故を おこしちゃうことを?」
ののちゃん 「ジコる
「トラブルに なっちゃうことを?」
ののちゃん 「トラブる
「モーロクして 善悪の区別が つかなくなることを?」
ののちゃん 「わかんない」
山田君 「カナマる
と 書かれたものです。

その頃から、いや それ以前から、自民党の体質は 何ら変わっていないのです。議員の誰一人「善悪の区別が つかない」のです。国民を欺いて「私腹を肥やし」ていたことが発覚しても、議員辞職 を しようとさえ しません。
しかしながら、こうした 前代未聞の 醜聞を引き起こした責任の半分は、国民 にあります。自民党 および その議員が 悪いことをしても、わるいことをしても、選挙のたびに 自民党に投票をし続けて、彼らを増長させ、「善悪の区別も つかない」体質に 育てあげてきたからです。  ( 2024 /01/ 21 ) 

本日 自民党 は、こういう悪徳政治家たちに、最も重くて「離党勧告」することに 決めたそうです。 どこまで 国民をバカにしているのか。 国民をだまし続けていた彼らには、「議員辞職」を求めるのが スジでは ありませんか。党にとどまっていようと、離党しようと、そんなことは どうでもいい。  ( 2024 /04/ 04 ) 

昭和 戦中・戦後の 少額貨幣

50銭札
昭和 23年の 50銭紙幣

● 前回の「犬の思い出」を書いている間、昔のことを あれこれ思い出していた時、父が生前に、名刺用の青いプラスチックの箱をくれたのを思い出しました。その中には 昭和の 戦中戦後紙幣硬貨が、わずかな量ですが、たたんで入っていました。特に コレクションをしたというわけではなく、折々に 余った小銭を、なぜか 取っておく気になったらしく、今から見れば珍しい アンティークの「近代日本の お金」です。そんなものを、私なら 多少興味をもってくれるだろう と思って、くれたのでしょう。 机の中を さがしたら 出てきましたので、あまりに少なすぎる分量の「少額貨幣」ですが、物珍しく思う方もいるでしょうから、今回は それらをスキャンして、額面順に、この HPに 載せておこうと思います。 ここをクリック すると「神谷武夫のプロフィール」の中の『 昭和 戦中・戦後の 少額貨幣』のページに飛びますので、興味のある方は ご覧ください。    ( 2024 /05/ 01 )

インドの 古都市図集

都市史図集

● 都市史図集編集委員会(代表:曽根幸一)の編集によって世界の歴史上の都市を集めた『都市史図集』が 1999年に 彰国社から出版されました。(B5判,294ページ,ソフトカバー,4,600円 ) その内、私は南アジアの中の 次の3項を書きました。 「インドの宗教都市」 / 「伝統的都市-1,北インド」 / 「伝統的都市-2,南インド」 これらを、「インド建築入門」のディヴィジョンに再録しておくことにしました。  ここをクリック すると「インド建築入門」の ディヴィジョンの 『 インドの古都市図集 』の項に跳びます。   ( 2024 /03/ 01 ) 



● 東京都の 小池 百合子 都知事の、いわゆる 学歴詐称 について、ぜひ 次の本を読むことを お勧めします( 石井妙子著『 女帝 小池百合子 』2020年5月発行、文芸春秋、1,650円 )と、3年前に書きました。

女帝 小池百合子    女帝 小池百合子

●● この本が、今年の11月に Kindle版 の文庫本になりました。小池 百合子の、エジプトのカイロ大学を 首席で卒業したという「学歴詐称」について、実証的に(証言者の本名を出して)、詳細に語られています。ぜひ ご一読ください。 ( 2023 /11/ 08 )
  文春文庫、石井妙子著 『 女帝 小池百合子 』2023年11月発行、文芸春秋、1,100円


イスラームの建築種別ー18 「 都市(マディーナ、ミスル)

バグダード

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第 18回(最終回)は『 都市( マディーナ、ミスル )』です。 イスラーム圏の都市の特徴は何か といえば、モスクをはじめ、この章で採りあげてきた 種々の建築種別を多くかかえていること、としか 言いようがありません。古い都市であれば 歴史遺産を多く蔵しているので、「イスラーム都市」といった趣があります。しかし ムハンマドの時代に ムスリムが住んでいたのは、イスラームが誕生する以前から 連綿と続く都市(マディーナ)だったのであり、イスラーム軍が征服した地に 新たに建設した軍営都市(ミスル)も、それら既存の都市に倣って 作るほか ありませんでした。以前の都市と 異なっていたのは、唯一神 アッラーフを礼拝するための モスク が 市内の主要位置を占める、ということだけです。したがって『クルアーン』にも、「ムスリムのための都市」の あるべき姿の記述は ありません。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの 『都市 』の項に跳びます。
 これで、長く続いた「イスラームの建築種別」のディヴィジョンも、やっと終了しました。と言っても、私家版『イスラーム建築』の第4章を再録したにすぎませんが、これで、あの本の内容の大方は、このサイトで読めることになりました。残る 第5章(「イスラーム建築の特色」)も、いずれ 再録しよう と思っています。  ( 2024 /02/ 01 )


謹賀新年 2024

年賀状


今年は 大晦日の夜から、ラヴィ・シャンカルの『シタール協奏曲』を聴きながら
新年を迎えました。アンドレ・プレヴィン 指揮のロンドン交響楽団です (EMI)。


● 年の初めは 新しい記事の代りに、古い映画の DVD の紹介です。
  今回は 諸国の 多様な映画を6本、
制作年度順に並べます。  ( 2024 /01/ 01 )




残菊物語

● 『 残菊物語1939年(日)監督:溝口健二 (1898-1956)、主演:花柳章太郎、森赫子、河原崎権十郎、高田幸吉,原作:村松梢風,構成:川口松太郎
 往年の日本映画の巨匠といえば、だれでも 小津安二郎溝口健二 の名を思い浮かべることでしょう。その溝口健二監督の出世作が、今から 85年も前の 昭和14年に撮られた、新派悲劇のような日本的情緒の『 残菊物語(ざんぎく ものがたり)です。これを見ていると、同時代のフランス映画で、やはり劇場の人々を描いた『天井桟敷の人々』(1945年、マルセル・カルネ監督、ジャン・ルイ・バロー主演) を思い起こさせます。古い白黒映画のロマンスの、東西の双璧と言えるでしょう。五代目 尾上菊五郎(音羽屋)の息子・菊之助と、彼に献身する女中・お徳の物語ですが、1954年の『近松物語』と どちらを採るか 迷いました。日本のヒロイン・お徳 と、フランスのヒロイン・ガランス の違いは、それぞれの国民性に由来するのでしょう。『壺坂霊験記』(1879) の お里と、『居酒屋』(1877) の ジェルヴェーズの対比のように?



Love Letter

● 『 ビフォア・サンライズ、恋人までの距離1995年(米・墺・スイス)監督・脚本:リチャード・リンクレイター (1960- )、主演:ジュリー・デルピー、イーサン・ホーク、音楽:フレッド・フリス
 ヨーロッパを旅していたアメリカ男と、ブダペストからパリへ帰るフランス女が 同じ列車に乗り合わせて 知りあい、その日一日 ウィーンの街を歩きまわって 行動を共にし、饒舌で 他愛ない会話を し続けるだけ。 たいした筋書きもない、文字通りの「 カンバセーション・ピース」ですが、それが とても面白い。この映画の9年後に、同じ監督と同じ2人の俳優が その続編の映画『 ビフォア・サンセット』を撮り、そのまた9年後に さらに続編の映画『 ビフォア・ミドナイト』を撮ります。ごく低予算で これだけ面白い映画を作れる リンクレイター監督の才能に敬服。



Love Letter

● 『 映画 日本国憲法2005年(日)監督:ジャン・ユンカーマン (1952- )、製作:山上徹二郎(シグロ), 日本国憲法についてのインタビュー・ドキュメンタリー
 岸田首相は昨年度の軍事予算(防衛費)を、アメリカの要請に答えて 6.8兆円に拡大し、軍事大国化を推し進め、平和憲法を踏みにじっています。そんな時、もう20年近くも前に作られたドキュメンタリーですが、ジャン・ユンカーマン監督の『 映画 日本国憲法』を見直すのは意味あることです。世界各国の多数の言論人に 意見や思い出を語ってもらっています。インタビュアーは、前に採り上げた『沖縄 うりずんの雨』を後につくることになる ジャン・ユンカーマン監督です。出演者(インタビューを受ける人)は、ジョン・ダワー、C・ダグラス・ラミス、日高六郎、ベアテ・シロタ・ゴードン、チャルマーズ・ジョンソン、ミシェール・キーロ、ジョゼーフ・サマーハ、班忠義(バン・チュンイ)、申惠秀(シン・ヘス)、韓洪九(ハン・ホング)、姜萬吉(カン・マンギル)、ノーム・チョムスキーの諸氏。ジャケットの絵は 奈良美智。予告編は こちら



ともだち

●『 ぼくの大切なともだち2006年(仏)監督:パトリス・ルコント (1947- ),主演:ダニエル・オートゥイユ、ダニー・ブーン,原案:オリヴィエ・ダザ
 あなたは友達がいますか? それは誰ですか? 本当の友達ですか? あなたが そう思い込んでいるだけで ないですか? そもそも 友達とは何ですか? どうすれば 友達になれるのでしょう? そういう問題に シリアスに (?) 取り組んだコメディで、順風満帆の充実した人生を送っているはずの 中年の美術商 フランスワ は、あんたに 本当の友達はいるのか? と問われて、にわかに 友達作りを始めることになります。 あの『髪結いの亭主』を撮った パトリス・ルコント監督が、腕によりをかけて作った映画です。 



消えた声が

●『 消えた声が、その名を呼ぶ2014年(独・仏・伊・露・加・波・土) 監督・脚本:ファティ・アキン (1973- ),主演:タハール・ラヒム、シモン・アブカリアン 
 世界の映画賞を総なめにした俊才、ファティ・アキンは トルコ系ドイツ人の監督、脚本家、俳優で、本来のトルコ語の読みは ファーティフ・アクン です。19世紀初めの オスマン・トルコによるアルメニア人の虐殺(ジェノサイド)にまつわる、声を失った男(父親)の、娘を捜す壮絶な旅を 描いています。昔のトルコ映画、ユルマズ・ギュネイ監督の『(みち)』を思い出しました。 この『 消えた声が、その名を呼ぶ 』は、ファティ・アキンの前作『そして、私たちは愛に帰る』に続けて、「愛、死、悪に関する三部作」の 最終作となります。 予告編は こちら




異端の鳥

●『 異端の鳥、The Painted Bird2018年(チェコスロヴァキア・ウクライナ) 監督・脚本:ヴァーツラフ・マルホウル (Václav Marhoul 1960- ),主演:ペトル・コトラール,原作:イェジー・コシンスキ 『ペインテッド・バード』(2011 松籟社),モノクロ・ワイド作品
 ヴァーツラフ・マルホウル監督が 11年がかりで映画化したという、3時間近い長さの、実に衝撃的で、すさまじい映画です。原作の小説は、ポーランド人の イェジー・コシンスキ が アメリカに移民した後、英語で書き、1965年に出版しました。母国ポーランドでは 出版禁止になったそうです。しかし 映画で話されている言語は、舞台の国を特定しないよう、インタースラーヴィク という スラブ系の半・人工言語が使われています。せりふも音楽もほとんど無い、厳しく 禁欲的な映画です。
 主人公の少年が どこまでも ひたすら 逃走していく 過程で、人間のもつ 残酷さや偏見差別迫害暴力悲惨卑劣強欲、その他 あらゆる 悪業 に蹂躙されて、ほとんど口がきけなくなりますが、自らも罪を犯し、それでも生き延びて 成長していく、裏返しの "ビルドゥングス・ロマン" です。高橋和己の 破滅小説も 思い起こさせます。原題の "The Painted Bird" というのは、捕まえた鳥に色を塗って離してやると、群れにもどった鳥は、その異質さゆえに いじめられて死んでしまう、という生態で、この物語を象徴させています。モノクロながら 撮影は実に美しいですが、あまりに むごたらしい場面や おぞましい淫靡な場面の苦手な人には、お勧めできません。監督へのインタビュー記事は こちら

( 2024 /01/ 01 )


●● 以上を HP にアップした途端に、北陸で大地震が起こり、その詳細がわからないうちに、今度は 羽田空港で 日航機と海上保安庁機との衝突事故が起こり、海外では今日も、ウクライナと ガザで 殺戮が行われ、今年は さらに「悪い年」になるのではないか という予感もします。 災害で亡くなられた方々に、心から哀悼の意をささげます。  ( 2024 /01/ 03 )


世界建築ギャラリー 「 メキシコ市国立芸術院

メキシコ

● メキシコ合衆国の首都は シウダー・デ・メヒコ といい、英語に直訳すると シティ・オブ・メキシコ ですが、普通「メキシコ・シティ」と呼んでいます。人口 2.000万というので 東京よりも大都会になりますが、かつてテノチティトランと呼ばれたアステカ帝国の首都であり、「メキシコシティの歴史地区とソチミルコ」がユネスコ世界遺産に登録されているものの、スペインの植民都市として発展したので、14世紀から 16世紀にかけて栄えた アステカ文明の面影はほとんど無く、スペインコロニアル建築 で埋め尽くされています。
 かつて 私はマヤ・アステカ文明の遺跡を訪ねて、中米のメキシコ、グァテマラ、ホンジュラスを旅したことがあります。その写真ギャラリーを作ろうと思いながら、いまだに果たしていません。今回は マヤ文明ではなく、メキシコ・シティで最も印象深かったコロニアル建築の「国立芸術院(ベジャス・アルテス宮殿 )」を紹介することにしました(まずは この方が、ずっとたやすいので)。 ここをクリック すると「世界建築ギャラリー」の ディヴィジョンの『国立芸術院(ベジャス・アルテス宮殿 )』の項に跳びます。   ( 2023 /12/ 01 )


イスラームの建築種別ー17 「 庭園 (バーグ、ジャンナ)

シャーラマール

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第 17回は『 庭園( バーグ、ジャンナ )』です。 「庭園」は アラビア語で「ジャンナ」、ペルシア語では「バーグ」といいます。庭園芸術はペルシアで大いに発展しましたが、アラビアでは自然条件が厳しすぎるせいか、それほど作られず、むしろ憧れの対象であったので、ジャンナの語は、来世の庭園(楽園)の意で用いられることが多い。東方イスラーム圏にあまねく普及したイスラーム庭園は ペルシアを源流とするので、中央アジアからインドに至るまで バーグと呼ばれます。ムガル朝の創始者 バーブル は インド来住以前に造園した カーブルのヴァファー庭園を なつかしみながらも、インドにおける作庭に 情熱を傾けました。以後の数々の「ムガル庭園」は、イスラーム庭園の代表的存在となります。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの 『庭園 』の項に跳びます。   ( 2023 /11/ 01 )

最近の読書から 『 渡辺崋山作「鷹見泉石像」の謎 』など

渡辺崋山

● 日本美術史に出てくる絵画作品の中で、私が一番好きなのは 何だろうと考えてみたら、渡辺華山の『鷹見泉石(たかみ せんせき)像』であると、すぐに思い当たりました。狩野派の流れを汲む日本画でありながら、西洋的なリアリズムの画風をもち、そして宗教画のような深い精神性を たたえている傑作です。高校時代の昔から、この絵は深く心に残っています。
 それでは、この絵の複製画を買って、部屋に飾ろうかなと思い、その前に アマゾンで関連本を調べてみたら、『 渡辺華山作「鷹見泉石像」の謎 』という本が2年前に出版されていることを知りました。しかし著者名(岡田幸夫)も、出版社名(郁朋社)も、聞いたことがありません。図書館で借りてきて奥付を見ると、著者の 岡田幸夫氏は、美術史家でもなく、文学者でも ジャーナリストでもなく、東北大学の工学部電子工学科を卒業したエンジニアで、大手電機メーカーの半導体部門に35年間勤め、57歳で早期退職したあとは、農業をしながら文筆活動に打ちこんでいるそうです。

 2020年に岡田さんが書いた『渡辺華山作「鷹見泉石像」の謎 』を、自費出版を手助けする郁朋社(いくほうしゃ)という出版社から 自費出版で出したようですが、優れた内容ゆえに 第20回「歴史浪漫文学賞 大賞」を受賞したので、全国に配本されて販売され、アマゾンにも出るようになったらしい(1,500円)。探求心と調査力は 経歴からも 来るものでしょうが、文才は若いころからのものだったのでしょう。肩書きでなく、実力で勝負した著者が世に出るのは嬉しいことです。
 幕末、三河の小藩 田原(たはら)藩の末席家老を勤める渡辺華山 (1793-1841) は、下総の大藩 古河(こが)藩の家老を勤める鷹見泉石 (1785-1858) の肖像画を描きました。二人は それぞれ 家老として藩政に尽くすとともに、当時の世界情勢を探求する蘭学者でもありました。さらに華山は 家老職とはいえ、貧窮の藩士の家に育ったので、副収入の途を得るために、幼時より絵を習い、その才能のゆえに 日本美術史上 有数の画家となったのでした。しかし、鎖国日本の将来を憂いて書いた文書によって「蛮社の獄」に連座し、2年近くの蟄居の末に 48歳で自刃します。
 『鷹見泉石像』が描かれたのは 天保8年4月15日、泉石が藩主の名代として菩提寺に参拝し、その帰りに 渡辺華山宅に寄ったので、崋山は その時に泉石の像を描いたのだ とされてきました。ところが泉石は その時分 大阪にいたことが明らかなので、この定説は誤りだ ということになる。では、真実は何か、ということが、時代背景や ふたりの交際記録などとともに 実証的に探究されます。著者は 渡辺華山の生涯と思想に大いに共感しながら探求・執筆したようで、たいへん面白く読みました。

伊藤野枝

●● もう一冊、『 村に火をつけ、白痴になれ、伊藤野枝伝 』(2020,岩波現代文庫)。
前に 映画『 金子文子と朴烈』を紹介した時に、金子文子の自伝『何が私をこうさせたか(獄中手記)』について 少し書きましたが、大正時代に金子文子と並ぶ女性アナキストで、100年前の関東大震災のどさくさに 官憲(甘粕大尉)によって、大杉栄 (1885-1923) とともに惨殺された伊藤野枝 (いとう のえ 1895-1923) についての伝記です。書いたのは早稲田の大学院で「日本思想史」を専攻した、アナキズムの研究者(擁護者)として論陣を張っている、若き学者・栗原康氏です。これを出版したのが アカデミズムの牙城、岩波書店だというのも面白い。書店に行かなくなって、新刊をチェックする習慣もなくなってしまったので、この評判の本も まったく知りませんでした。

 どんな社会でも、昔も今も、女は「奴隷」にされてしまう、その最たるものが「結婚制度」であるとして、それを突き破って自由人として生きようとした、日本の エマ・ゴールドマンたる 伊藤野枝の生涯を、栗原康は、これまでないほどに 熱っぽく、思い入れたっぷりに語っています。

 ところで「ちくしょう」という言葉は 誰でも一人で つぶやくことがあるのでしょうが、それを文章に書くことは あまり ありません。子供が大きい声で言うと、母親は「ちくしょう」なんて言っては いけません、と 叱るのが常ですが、この本には 学者である著者の「ちくしょう」という言葉が 何十回も書かれています。あゝ 言文一致体も ここまできたか、という感慨を覚える、そんな文体の本です。そのことに嫌悪感を抱かない人であれば、実に面白く、小説のように読める本です。フェミニストにとっては、興味の尽きない本でしょう。  ( 2023 /10/ 01 )


9月8日、深夜 モロッコ地震

マラケシュ
マグリブ地方の地図

●9月8日の深夜(日本時間9日朝)、モロッコ南部 で大地震がありました。震源地は 古都 マラケシュ の近く、70kmの所で、死者は 2,100人を越え、被災者は 30万人といいます。マラケシュには 多くの歴史的建造物があり、特に、多くの高いミナレットなどは、崩壊が危惧されます。地震の詳細は一般報道に まかせるとして、このサイトでは、いくつかの 重要な 建築作品 の写真を 載せておきます。これらが無事であることを 願いながら。       ( 2023 /09/ 11 )

● マラケシュの歴史的建造物 ●

マラケシュ  メディナ
アグノー門(12世紀の市門)と、メディナ(旧市街)の通り
マグリブの古都は みな、こうした壮大な市門をもっていたが、道筋は狭い。


マラケシュ  クトゥビーヤ  クトゥビーヤ
クトゥビーヤ・モスクのミナレットと入口 12世紀
イスパノ・モレスク美術の精髄たるミナレットの高さは 70m。


マラケシュ  バヒヤ宮殿  バヒヤ宮殿
バヒヤ宮殿 19世紀、バヒヤとは「美」の意。
近世の建築工芸の粋が凝らされた、大規模な、大臣の宮殿.


マラケシュ  サアド朝  サアド朝
オスマン帝国の征服を はねつけた サアド朝の廟 16世紀
サアド朝 (1549-1659) の代々のスルタンを祀った 三連の間の廟群。


マラケシュ  バアディン
クッバ・バアディン(古廟) 12世紀
厳格なムラービト朝の美術を伝える マラケシュで唯一の、古拙な廟建築。


マラケシュ  ザーウィヤ
シディ・ベル・アッバース・ザーウィヤ 13世紀
マラケシュで最も崇敬された聖人の廟所。長い参道がある。


マラケシュ  メナーラ
メナーラの、貯水池のある 広大な庭園の パビリオン 19世紀
マラケシュ市民のピクニックと憩いの場である。


マラケシュ  フナ広場
メディナの中心広場、店舗群、飲食店、屋台、大道芸人で賑わう ジェマ・アル・フナ広場と、
2008年に 私が泊まった オテル・シェラザダ本館の屋上(部屋は、とても趣のある古い別館)


  ● 『イスラーム建築の名作』における、マラケシュの「イブン・ユースフ学院
    については、ここをクリック           ( 2023 /09/ 11 )



イスラームの建築種別ー16 「 旧市街 (メディナ、イチャンカラ)

ヒヴァ

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第 16回は『 旧市街( メディナ、イチャンカラ )』です。 北アフリカのマグリブでは、伝統的な都市は堅固なレンガ造の市壁で囲われていて、市壁には数ヵ所に壮麗な市門があり、都市を完全に閉じることもできました。都市の外枠が固定されていれば、内部は高密度の市街地となるので、これを改造するのは容易でなく、碁盤目状のフランス風 新市街地は 市壁の外側に発展することとなりました。市壁で囲われた旧市街は、都市を意味するマディーナがなまってメディナと呼ばれ、生きた都市でありながら、改造の手が加わらない伝統的な街並みや、イスラーム都市を構成する諸要素が保存されています。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『旧市街 』の項に跳びます。   ( 2023 /09/ 01 )

INTERMEZZO

アンマン
暑中お見舞い申し上げます(ヨルダンより 愛をこめて )

● 今月は夏休みなので、新しい記事はありません。そのかわりに映画の DVD の紹介をします。
今回は、世界の「女性映画」特集の6本です。映画の制作順に並べます。  ( 2023 /08/ 01 )



女の園

● 『 女の園1954年(日)監督:木下恵介 (1912 -98)、主演:高峰秀子、高峰三枝子、岸恵子、久我美子,モノクロ・スタンダード、原作:阿部知二
 今から 70年近くも前の、と言っても 戦後の、女性映画です。 題名からは ロマンチックな恋愛ドラマが想像されるかもしれませんが、実は硬派の文学者・阿部知二の原作小説『人工庭園』(1954) を、『二十四の瞳』を撮った木下恵介監督が 同年に映画化した、戦後の混乱期の日本の 私立の女子大学における、少々深刻な人間群像を描いたものです。 封建的な社会規範や校則で がんじがらめになった女子学生たちが、ついに立ち上がって 学校側と戦い始めますが、誰もが皆 困難な問題をかかえていて ....昔なつかしい女優が 次々と出てきます。高峰秀子久我美子岸恵子高峰三枝子望月優子浪花千栄子、さらには東山千栄子も、と言っても、今の若い人は それらの名前さえ 知らないかもしれませんね。 大スターの高峰秀子は 私の好みの女優ではなかったけれど、彼女の自伝『わたしの渡世日記』(1998 文春文庫)は、非常に面白い。



ピアノ

● 『 ピアノ・レッスン1993年(オーストラリア)監督・脚本:ジェイン・カンピオン (1954- )、主演:ホリー・ハンター、ハーヴェイ・カイテル,音楽:マイケル・ナイマン
 19世紀なかば、植民地 ニュージーランド を開拓している男に嫁ぐために、はるばるスコットランドから、ピアノとともに 小さな娘をつれた女が、長い航海をして やってきます。しかし 彼女は 声が出ないので、娘が 手話を通訳します。一方、現地に溶け込んで生きている精悍な隣人の男に、彼女はピアノを教えることになります ....チャタレイ夫人のニュージーランド版と言うべきか。鬼才女流監督の ジェイン・カンピオンと、主演女優の ホリー・ハンターは、この作品によって世界中で映画賞を獲得。日本でも 大いに話題になったので、中年以上の映画ファンなら 見ている人が多いでしょう。マイケル・ナイマンが作曲した、抒情的な美しいピアノ曲が 全編に流れるのが 印象的です。



ヘルプ

●『 ヘルプ、心がつなぐストーリー2011年(米)監督:テイト・テイラー (1974- ),主演:エマ・ストーン、ヴァイオラ・デイヴィス、オクタヴィア・スペンサー,原作:キャスリン・ストケット
 アメリカの 黒人問題 を本格的に扱った作品は、1977年の 連続 TV ドラマ『ルーツ』をもって嚆矢とするでしょうが、それに続いて「黒人問題」を扱った 多くの名作映画の中でも、これは ユーモアを交えて描いてミリオンセラーとなった原作小説を 見事に映画化したものです。1960年代の 公民権運動(Black Rights Movement)の中で 一人の若い白人女性(本の著者)に そそのかされて、ついに南部ミシシッピ州の ある町の黒人女性たちが 「人種隔離政策」による差別の蹂躙から立ち上がる姿を描いていて、一種の痛快感さえ もたらします。 ヘルプ というのは、アメリカで 黒人メイド(家政婦)を呼んだ言葉で、原題は 単に「The Help」です。



自転車

●『 少女は 自転車にのって2012年(サウジ・アラビア・独)監督・脚本:ハイファ・アル・マンスール (1974- ),主演:ワアド・ムハンマド、リーム・アブダラ
 イスラーム諸国の中でも 最も厳格な ワッハーブ派が支配する サウジアラビア での女性たちが どのように生活しているかが 見られる映画です。 特に凝ったストーリーではないですが、女性の自由が制限された サウジ・アラビアで 初の 女性監督が撮った 記念すべき作品です。 昔の日本でも、映画『二十四の瞳』にも 多少描かれていたように、女性が自転車に乗る というのは、伝統的価値観に反する、新しい女性の行動でした。 現代のサウジの女子中学生・ワジダ は、いかにして それを成し遂げるのか。 喜劇ではないけれど、あちこち 思わず笑ってしまいます。

聖典「クルアーン」コーカンド の 暗唱    .




本屋

●『 マイブックショップ2017年(英・西・独) 監督・脚本:イザベル・コイシュ (1960- ),主演:エミリー・モーティマー、ビル・ナイ,原作:P・フィッツジェラルド
 ブッカー賞受賞のイギリスの女流作家 ペネロピ・フィッツジェラルド (1916-2000) の小説 "THE BOOKSHOP"(本屋) を、女流監督の イザベル・コイシュが、女優 エミリー・モーティマーを主役にして映画化した「女性映画」です。20世紀半ば、ひとりの勇気ある未亡人が、書店が1軒もない イギリスの田舎町で、古い建物を改装して "The Old House Bookshop" という書店を開きます。ナボコフの『ロリータ』を 250冊も仕入れたりしながら、保守的で悪意ある村人と闘いゆく姿を、英国の美しい風景とともに 静かに描いた、少々悲しい映画です。日本でも、書店が全く無い「書店ゼロ」の自治体が、26 %に上るそうです。




少女

●『 リトル・ガール2018年(仏) 監督:セバスチャン・リフシッツ (1968- ),主演:サシャと その母親 (トランスジェンダーについての ドキュメンタリー映画)
  監督のセバスチャン・リフシッツは パリ生まれで 現在52歳の オープンリー・ゲイです。パリ第1大学で美術史を専攻した後、映画監督になり、2010年代にジェンダーに関する5本のドキュメンタリーを立て続けに発表し、そのすべてが国際映画祭で受賞しました。 本作も 劇映画ではなく、サシャという名の、男の子 の体を持ちながら 女の子 として生きようとする 可愛らしい7歳の子と その母親の生活を追ったドキュメンタリーです。原題は フランス語で「 プチット・フィーユ(少女) 」です。

( 2023 /08/ 01 )


フランクロイドライトの建築

ライト

● 私は 今から36年前の 1987年に、2週間ばかり アメリカに フランク・ロイド・ライト の作品の撮影旅行に行きました。ライトの作品はアメリカ全土に散在しているので、2週間では とても 見たいもの全部を訪れることはできず、また ラーキン・ビルや ミッドウェイ・ガーデンズのように、今は存在しないものもあるし、 ジョンソン・ワックスの研究棟は当時は閉鎖されていました。いつかまた タリアセン・イーストや ベス・ショロム・シナゴーグ、ウィングスプレッドの住宅なども見に アメリカを旅行しようと思っていましたが、それも 実現しなかったので、1987年に撮影した写真のみをスキャンして、『フランク・ロイド・ライトの建築』というサイトを作っておくことにしました。 ここをクリック すると、不完全ではありますが、新設の『 フランク・ロイド・ライトの建築 』のページに跳びます。     ( 2023 /07/ 01 )

イスラームの建築種別ー15 「 宮廷地区(カスル、カーフ、サライ)

ファテプル

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第 15回は『 宮廷地区( カスル、カーフ、サライ )』です。 宮殿というのが 各地の王侯貴族の住居であるのに対して、宮廷というのは 首都における君主の生活と政務の場であり、それをとりまく廷臣や君主の妻妾、それらに仕える人びとの集団を言います。イスラームの宮廷が発展し 組織を整えたのは、アッバース朝の時代です。宗教と政治と軍事のすべての権力を併せもった ハリーファ(カリフ)の宮廷には、それぞれの機能に応じた さまざまの施設が必要とされました。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『宮廷地区』の項に跳びます。   ( 2023 /06/ 01 )

世界建築ギャラリー 「 アレッポ中庭住居群

アレッポ

● 前回の「世界建築ギャラリー」では、昔『ストーンテリア』第6号に書いた「タンクとハンマーム」をHP に掲載したことがないことに 気がつき、再録しましたが、今回は それに次いで、『ストーンテリア』第7号に書いた「アレッポの石の家」に加筆し、写真の数を増やして、「イーワーンのある 中庭住居群」として 再録しておくことにしました。 ここをクリック すると「世界の建築ギャラリー」の サイトの 『 アレッポ の中庭住居群 』の項に跳びます。   ( 2023 /05/ 01 )

イスラームの建築種別ー14 「 城塞 (カルア、カスバ、アルク)

チュニジア

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第 14回は『 城塞( カルア、カスバ、アルク )』です。  イスラーム圏で 戦闘に備えた防御設備を主とする施設は、呼び名も内容も時代や地方によってさまざまですが、英語のキャッスル(城)にあたるのが カサバ、シタデル(城塞)にあたるのが カルアと考えるとわかりやすい。イスラーム圏では地域の守備のために山上に城郭を建てる というようなことが少なく、概して 都市との関わりのなかで設けられました。イスラームの城塞(カルア)というのは 単に軍事的な施設であるだけでなく、その中に都市機能を含み 住民をかかえる、言わば「都市の中の都市」です。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『城塞』の項に跳びます。     ( 2023 /04/ 01 )

世界建築ギャラリー 「 タンクハンマーム

タンク

● 「雑誌や本への寄稿」を整理して、「プロフィール」欄に年代順に載せていたら、昔『ストーンテリア』第6号に書いた「タンクとハンマーム」は、HP に掲載したことがないことに 気がつきました。「イスラーム建築の種別」の第8回「 浴場(ハンマーム)」の もとになった記事ですが、これに加筆し、写真の数を増やして、「世界建築ギャラリー」のサイトに入れておくことにしました。 ここをクリック すると「世界の建築ギャラリー」の サイトの『 タンクとハンマーム 』の項に跳びます。   ( 2023 /03/ 01 )

「 雑誌や本への寄稿 」

寄稿

● 「 神谷武夫のプロフィール 」のページの一番下に、いくつかの新聞記事や 寄稿 などのことを載せてありましたが、ふと それを見て、もう少し多く載せるべきだなと思い、いくつかを書き足したら、あれも入れよう、これも入れよう と次第に増え、ついには 今まで種々の雑誌や本に寄稿したものを、すべて整理して 年代順に並べることにしたら、これは 大変な仕事になりました。まさか こんなに数が多かったとは 思いませんでした。 ここをクリック すると「神谷武夫の著訳書」の サイトの『 雑誌や本への寄稿 』の項に跳びます。   ( 2023 /02/ 01 )

謹賀新年 2023

年賀状


今年は 大晦日の夜から バッハの『 無伴奏ヴァイオリン・ソナタと
パルティータ』(全曲 140分)を聴きながら 新年を迎えました。
ヨハンナ・マルツィの、泣けるような名演の CD です。


● 年の初めは 新しい記事の代りに、古い映画の DVD の紹介です。
  今回は 欧米とアジア諸国の 多様な映画を6本、
制作年度順に並べます。  ( 2023 /01/ 01 )

プロヴァンス

●『 プロヴァンス物語、マルセルの夏1990年(仏)監督:イヴ・ロベール (1920-2002),主演:ジュリアン・シアマーカ、フィリップ・コーベール、ナタリー・ルーセル、ディディエ・パン,原作:マルセル・パニョル
 今から120年ほど前の、古いパリと プロヴァンス地方(南フランス)のヴァカンスの村を舞台にした、少年 マルセルと その一家(父、母、弟、叔母夫婦)の生活を描いた映画で、小説家 マルセル・パニョル (1895-1974) の 子供時代を描いた自伝小説『少年時代』が原作です。ひとりも 悪人が出てこない、これほど「ほのぼの」とした映画は、ほかにないと思います。原題は "La Gloire de mon Père"(父のお手柄)です。この続編が『プロヴァンス物語、マルセルのお城』で、2本を組み合わせた DVDセットが 廉価で売られています。 



クイーン

●『クイーン2006年(英)監督:スティーヴン・フリアーズ (1941- ),主演:ヘレン・ミレン(女王役)、マイケル・シーン(首相役)
 私は 王室や皇室には興味がないのですが、昨年 英国女王が70年もの在位ののちに没して、その記事や映像を見ることが多かったので、10数年前に見て面白かった映画『クイーン』を思い出して もう一度見たら、やはり面白く、良くも悪しくも、女王というのはこういう人間だったのだなあということが良くわかります。 パリで突然に事故死したダイアナ元皇太子妃に対する 王室の冷淡な態度に怒った英国民と、エリザベス女王、その夫・フィリップ、チャールズ皇太子、そして就任したばかりの 労働党のトニー・ブレア首相夫妻 たちの相剋を描いていて、実に みごとな作りの作品です。危機の王室の内情を これほどリアルに映画に描けるというのは、日本から見れば驚きです。エリザベス女王役のヘレン・ミレンの演技は、諸国で絶賛を浴びました。もう一本、英国首相たちを描いた(荒唐無稽な)コメディ『 ラブ・アクチュアリー』(2003) も 面白い。



家計簿

●『 武士の家計簿2010年(日)監督:森田芳光 (1950-2011),主演:堺雅人、仲間由紀恵,原作:磯田道史『武士の家計簿、加賀藩御算用者の幕末維新』(新潮新書)
 今年の 日本の国家予算 114兆円台だと言います。11年連続で過去最高を更新し、その内 1/3が借金(公債)です。長年の自民党政権は 金銭感覚が麻痺しているので、「財政再建」などというのは お題目だけで、金は使い放題です。私たちの収めた税金だけでは 到底足りず、国の累積 借金残高 は 1,200兆円を超えます。国民一人あたり 1,000万円以上の借金ということです。
 江戸時代末期、加賀藩の下級藩士だった猪山家も 借金だらけでした。後を継いだ直之が これを立て直すために、家計に大鉈(なた)をふるいます。 今の日本も それくらいのことをしなければ、孫子(まごこ)の代には、国は破産し、国民は塗炭の苦しみを なめることになるでしょう(暴動が起きるかもしれません)。 防衛費(軍事費)を 6.8兆円に増額などというのは、とんでもない話です。 日本が軍拡競争に加わるのを 許してはいけない。



アルゴ

●『 アルゴ2012年(米)監督:ベン・アフレック (1972- ),主演:ベン・アフレック,原作:アントニオ・J・メンデス
 1979-80年に起きたイランのイスラーム革命で、腐敗したパーレヴィ王朝が倒され、その国王夫妻はアメリカが亡命を受け入れました。これに激怒したイランの民衆が テヘランの米国大使館になだれ込み、占拠します(現在にまで至る、イランとアメリカの不仲の おおもと)。人質となった6人の大使館員の、アメリカ CIA 秘密工作本部による救出作戦を描いた、実に緊迫感のある映画です。「アルゴ」というのは その作戦で用いられた ニセ映画の題名です。ベン・アフレックが監督、主演をしています。この1981年の救出作戦より9か月前、革命直後の 80年にも、52人の大使館員を救出しようとした米軍のヘリコプター群が 失敗して 砂漠に墜落しましたが、その前日に、私はトルコからイランに 陸路入国したのでした。



金子文子

●『 金子文子と朴烈(ぼく れつ)2017年(韓) 監督:李濬益(イ・ジュニク, 1959- ),主演: イ・ジェフン、チェ・ヒソ、キム・インウ、キム・ジュンハン
 大逆罪で死刑判決を受け(朴烈事件)、獄中で壮絶な自伝『 何が私をこうさせたか 』を 書いた 日本のアナーキスト(というより、むしろニヒリスト)金子文子(ふみ、ふみ子, 1903-1926)と、その愛人(内縁の夫)の韓国人アナーキスト(ニヒリスト)朴烈 (1902-74) の、関東大震災当時の東京での 哀切な、しかし 毅然とした人生の物語。 金子文子を演じたのは日本人だとばかり思っていたら、韓国の新人女優だったと知って びっくり(小学生時代を 日本の大阪で過ごしたという チェ・ヒソで、この作品によって、大鐘賞映画祭の 新人女優賞と 主演女優賞をダブル受賞しました)。 映画は 韓国で大ヒットし、 なんと 235万人もが見たそうです。 韓国での題名は『 朴烈(パク ヨル)』。
何が私をかうさせたかー獄中手記 』は、1931年(昭和6)に春秋社から出版され、1972年に黒色戦線社から、1984年には筑摩叢書で復刊されたことがありますが、この映画が作られた 2017年に 岩波文庫化されました。 私には、安倍元首相を射殺した 山上徹也(アナーキストでは ありませんが)が、なぜか 思い起こされるのです。



幸福路

●『 幸福路のチーON HAPPINESS ROAD 長編アニメーション,2017年(台湾) 監督・脚本:宋欣穎(ソン・シンイン, 1974- )
 昔、子供のころにはディズニーのアニメ映画が好きでしたが、後のディズニーのアニメは、画風も物語も あまり受け付けなくなってしまいました。対照的に 日本のアニメの発展は驚くばかりで、私の一番好きなのは『耳をすませば』と『君の名は』ですが、それら日本のアニメとも ディズニーのアニメとも 全く画風の異なった、台湾の長編アニメーションがあります。この『幸福路(こうふくろ)のチー』で、ヘタウマみたいな絵が ダイナミックに動いて、ある少女と その家族のハチャメチャで、しかし純情な庶民生活を描きながら、台湾の戦後史を語っています。京都大学や コロンビア大学に留学した女流監督 ソン・シンインが 自らアニメ・スタジオを設立して作った、半自伝的長編です。台湾の映画は あまり見る機会がありませんが、私にとっては、ホウ・シャオシェンの『悲情城市』と並ぶ 秀作です。

( 2023 /01/ 01 )


イスラームの建築種別ー13 「 水利施設( カナート、ノリア、サビール )

ハマー

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第 13回は『 水利施設( カナート、ノリア、サビール、チェシュメ )』です。  イスラーム圏は 降雨量の少ない亜熱帯地方に広まったので、生命の源としての水の確保は 為政者に課せられた最重要の課題でした。住民や戦士への飲料水の供給がなければ 都市も聖戦も成立しないし、農業用水が確保されなければ 作物は生育せず、国家の税収入が得られません。したがって 都市も農村も 完全な砂漠では成り立たず、河川や 地下水のあるオアシスに発展しました。それでも夏の乾燥期には 水が不足するので、カナートや 貯水槽や 水車や 給水所など、さまざまな 水利施設が工夫されたのです。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『水利施設』の項に跳びます。   ( 2022 /12/ 01 )

古書の愉しみー56 坂本健の『 麻謌末(マホメット)

麻謌末

● 『古書の愉しみ』の第 56回は、坂本健一 の『 麻謌末(マホメット)』です。 前回の『コーラン經』を翻訳した文学士、坂本蠡舟(れいしゅう)こと 坂本健(本名 健一)は、ムハンマドの伝記である『 麻謌末 (マホメット) 』も書きました。帝大卒業の翌年です。簡素な本ですが、19世紀最後の 1899年 (明治32) の出版で、今から 123年前の本です。 少年向けの「世界歴史譚」全36冊の内の 第6編で、博文館の出版、北 蓮蔵による 見開き挿絵9点を含みます。他の巻では 横山大観、下村観山、中村不折なども挿絵を担当した、偉人・英雄の伝記シリーズで、著者には高山樗牛、上田敏、柳田国男などがいました。 ここをクリック すると「古書の愉しみ」のディヴィジョンの『 麻謌末(マホメット)』のページが 別のウィンドウに開きます。    ( 2022 /11/ 01 )


日本銀行の黒田総裁は、一刻も早く退陣すべきです

●● 日本の国力 が、どんどん落ちています。国力を示す指標は、その国の 通貨 の価値です。黒田が 2013年に日銀総裁に就任してから9年の間に、円は5割も弱くなりました。ドル換算で、90円 だったものが、今や 135円 です。外国から物を買うのに(食料や燃料や原材料を買うために)5割も多く支払わねばならなくなりました。日本の製品は、5割も安く買い叩かれます。途上国に同じ10億円を援助しても、感謝される度合いは5割減です。
 日本の国力が5割も落ちたということです。最近の物価上昇の、大きな原因です。コロナのおかげで あまり外国旅行ができませんが、今 旅行に出れば、9年前の5割も高くつくのです。安倍元首相の経済政策は とっくに破綻しているということです。それなのに、黒田 は「家計の 値上げ許容度が高まっている」などと言って 平然としています。円安 を喜ぶのは 大企業だけです。
 どんな組織も、トップが長期間 居座っていると、まわりはイエスマンばかりになり、政策変更ができなくなります。黒田総裁は、一刻も早く 退陣すべきです。こうしている間にも、日本の国力は どんどん落ちているのです。参院選を前にした野党の どれひとつとして これを主張しないのは、情けない限りです。  ( 2022 /06/ 21 )

●● 『 朝日デジタル 』の記事 9月3日 16時00分
日本円が「ジャンク通貨」に? ロシアや新興国通貨よりも価値下落
 「行きすぎた円安で円が ジャンク(がらくた)通貨化している」。日本銀行の政策を長年分析してきた「日銀ウォッチャー」で知られる、東短リサーチの 加藤出(いずる)チーフ エコノミストは、ドルに対して 24年ぶりの円安水準となる 140円台をつけたことを受け、円の現状に警鐘を鳴らした。「日銀の政策の影響で、私たちが ためてきたお金の対外(的な)価値が落ち、生活コストが上昇してきている」と述べ、日銀の政策の影響の大きさも指摘している。
 歴史的な 円安 ドル高水準にな……

●● 1ドルが、ついに 145円に なりました。このまま行けば、日本は破滅します。
10月8日の『 週刊エコノミスト Online 』には、
 「 藤巻健史氏「日銀は紙幣印刷所」、いずれ 円は 紙くず化する と あります。 
  ( 2022 /10/ 08 )


最近の読書  『 仏教大東亜戦争

鵜飼秀徳   植木等
鵜飼秀徳 著『仏教の大東亜戦争』2022、文春新書
植木等 著 『夢を食いつづけた男』2018、ちくま文庫

 評判の『仏教の大東亜戦争』を読みました。本の帯には 「なぜ 仏教は 国民を ”殺生”に 駆り立てたか」とあります。 著者の鵜飼秀徳 (1974- ) は ジャーナリストであるとともに、浄土宗 正覚寺の住職でもあるそうです。僧職者自身が 仏教界の最大のタブーに挑んだ、勇気ある著作です。たとえば 本の 119ページには、次のように書かれています。

「戦時中の仏教界の軍事支援は、「銃後運動」という間接的支援だけには留まらなかった。「はじめに」でも少し触れたが、宗門が主体的に、強力に戦争に関わった事例が、零(ゼロ)戦をはじめとする 軍用機、あるいは 軍艦の献納だ。仏教者が 殺戮の道具である兵器を造って納めることに、当人たちは何の罪悪感も持っていなかった」

 その次のページには、それぞれの教団が国に納めた 戦闘機の種類や台数などの表があります。曹洞宗、日蓮宗、天台宗、浄土宗、臨済宗、西本願寺、四天王寺、真言宗、浄土真宗本願寺 などが こぞって戦闘機を奉納し、真宗大谷派では なんと、軍艦建造のための多額の献金(一期だけでも、現在の金額に換算して25億円以上)を献金したという。日本の仏教が、「宗教」とは言えないところまで腐敗堕落した姿を、完膚なきまでに 調査、記録した書です。

 ただ この本の終わり近くには、戦争に協力しなかった 稀な仏教僧侶たちが 紹介されています。その一人が、『スーダラ節』や『無責任一代男』などを歌った歌手・コメディアンの植木等(うえき ひとし 1926-2007)の父親、植木徹誠(てつじょう 1895-1978)です。この「反戦僧侶」について植木等が書いた父親の伝記『夢を食いつづけた男, おやじ徹誠一代記』(1984) も読んで(古い本ですが、知らなかったので)たいへんに 面白く、また感心しました。

お知らせ・神谷武夫

 ところで、このHPの「古書の愉しみ」のサイトには、第42回として『原爆体験記』を採りあげて 載せてあります。ところが そのページは、何年も前から、グーグルや ヤフーで検索できなくなっています。いろいろ調べて推測したところ、次の部分のせいだろう とわかりました。

「この 原爆体験記の小冊子が出版されようとした時、原爆を投下して広島と長崎の数十万人の市民(非戦闘員)の命を奪うという「戦争犯罪」を犯したアメリカは、それを、戦争を終わらせるために必要だった と言って正当化し、原爆のもたらす悲惨さを最大限 包み隠そうとしていたため、GHQ(連合国軍総司令部)すなわち日本を占領する「進駐軍」は この小冊子を「反米的」として、すでに印刷・製本が できあがっていたにもかかわらず、これを配布させず、出版禁止処分にしたのでした。」

 つまり、アメリカによる原爆投下を「戦争犯罪」と書いていることが、「検閲」の対象となったようです。アメリカ大使館からの圧力でしょうか。         

( 2022 /10/ 17 )

イスラームの建築種別ー12 「 種々の施設( タキーエ、 ハマーム )

チュニジア

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第 12回は『 種々の施設(タキーエ、ハマーム、ジャンタル・マンタル )』です。  イスラーム圏に建つ建物を すべてイスラーム建築と呼ぶなら、建築種別は なお多岐にわたります。ここでは、ややマイナーな種々の施設を概観しておきます。 修道場(ハーンカー)のことを トルコ語では テッケと呼びますが、テッケ あるいは、もとのアラビア語の タキーヤ(テキーエ)という呼称は、もっと幅広く用いられました。根本はスーフィーの修行所であっても、それぞれの教団(タリーカ)によって さまざまの機能が 付加されたのです。オスマン朝最大の君主スレイマンは、ダマスクスに シナンの設計で「スレイマンのテッケ」を建てました。これは修道場としてよりも、マッカへの巡礼の出発地における 巡礼宿としての機能が主でした。こうした巡礼宿としてのタキーヤも各地に建てられました。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『種々の施設』の項に跳びます。   ( 2022 /10/ 01 )


住所と 電話番号を騙(かた)る 悪い人間

●● 神谷一博(かずひろ)という人がいて、その人が自分の住所と電話番号を 私のものと同じにして、世の中に公表しているらしい。 一昨日、近くの郵便局の配達課から 私に電話があり、私のところに 神谷一博という人が同居していないかどうか と訊かれました。 そんな人は いないし、知り合いにも いないと答えると、その人宛てに、私の住所で小包が届いているというのです。 郵便局が不審に思い、差出局のほうに連絡をとりました。 差出局が 差出人に問い合わせたところ、受取人の電話番号は こうだから、そこに電話してほしい と言われたらしい。で、連絡を受けたこちらの郵便局が その番号にかけたところ、私の家に かかってきた というわけです。
 ともかくその小包は宛先不明ということで返送してもらうことにすると、今度は差出人から電話がありました。 神谷一博の母の神谷清子(きよこ)だと言います。 息子から、現在の住所と電話番号を このように教えられているので、息子に、その住所宛てに ブドウを送ったのだと言うのです。今回私に迷惑をかけたから、このブドウを また送るので、私に食べてほしいと言う。 見ず知らずの人から 食べ物をもらって 食べるわけにはいかないと、断りましたが、もしかすると、それは 毒入りのブドウかもしれない。
 こういうことをさせているのは フジテレビかもしれません。この「お知らせ」欄に『フジテレビの犯罪行為』という記事を載せてからというもの、スペインとシンガポールから 英語のメールが来ました。 どちらも、自分の出版する本に、私の HP にある写真(『武士の娘』の表紙の写真など)を使わせてほしい、金は払う、と言うのです。 どちらのメールも、インチキ・メールだということは すぐ解ります。 手を変え 品を変えて、『フジテレビの犯罪行為』の記事を つぶそうとしているようです。神谷一博という人が 実在するのかどうかは、わかりません。 さらに何を 企んでいるのかも。 あるいは、神谷清子と名乗る女の一人芝居でしょうか?  ( 2022 /08/ 16 )

イスラームの建築種別ー11 「 市場( バーザール、スーク、チャルス )

市場

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第 11回は『 市場(バーザール、スーク、チャルス )』です。 イスラーム圏では モスクの周囲に店舗群が伸びて 市場を形成するのを常とします。市場のことを ペルシア語でバーザール、アラビア語でスーク、トルコ語でチャルシュと言います。バーザールの語は最も広く用いられ、都市近郊の農家の人々が 野菜や果実を広場に持ち寄って開く定期市から、建物に固定された屋内市場にいたるまで バーザールと呼ばれます。スークの語は どちらかというと屋根つきの店舗街をさして用いられることが多いようです。日本の駅前商店街に屋根がかけられると アーケードと呼ばれることが多いですが、スークがその元祖だと言えましょう。日本では 雨を避けるのが主目的であるのに対して、スークでは 日除けが主なので、モロッコでは よしずやテントのような屋根をかけることも多い。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『市場』の項に跳びます。   ( 2022 /09/ 01 )



●● 安倍 元首相を「国葬」にする などということには、絶対反対です。 ( 2022 /07/ 20 )

INTERMEZZO
ブハラ
暑中お見舞い申し上げます( ウズベキスタンより 愛をこめて)

● 今月は夏休みなので、新しい記事は ありません。 そのかわりに 映画のDVDの紹介をします。 特にテーマはありませんが、バラエティに富んだ映画を6本です。 映画の制作順に並べます。    ( 2022 /08/ 01 )



終電車

● 『 終電車1980年(仏)監督・脚本:フランスワ・トリュフォ (1932-84),主演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、ハインツ・ベンネント
 フランスのヌヴェル・ヴァーグを ゴダールとともに代表する監督 フランスワ・トリュフォは、若い時の実験的な作品から次第に円熟し、晩年に作った代表作『隣の女』と『終電車』で、三面記事的な情痴ドラマを ギリシャ悲劇のような芸術作品へと昇華させました。『終電車』は、パリがドイツに占領されていた時代、ある劇場の男と女の俳優の物語です。当時流行していたシャンソン、リュシエンヌ・ドリールの歌う『サンジャンの私の恋人』がテーマ音楽です。



東京裁判

●『 東京裁判1983年(日)監督:小林正樹 (1916-96),ナレーター:佐藤慶,音楽:武満徹,企画・製作:講談社,2018年 デジタルリマスター版、DVD2枚組
 25年の秘匿期間を経て、1983年にアメリカ国防総省から公開された 延べ 170時間もの裁判記録フィルムを元に編集された、極東国際軍事裁判を描いた4時間半のドキュメンタリー映画です。判決は、東条 英機以下 死刑7人、終身刑16人でした。天皇が被告にされなかったのは、裁判官の判断ではなく、アメリカとGHQの意図でした。そうした全てを含め、偏りのない、客観的で公平な記録です。アメリカ人弁護士が、米国の原爆投下まで持ち出して被告の無罪を主張していたのは驚きです。インドの パル判事の意見書も出ます。



ルオマの初恋

●『 雲南の少女、ルオマの初恋 2002年(中国)監督:章家瑞 チアン・チアルイ (1958- ),主演:李敏 リー・ミン、ヤン・チーカン
 『ルオマの初恋』は、『初恋のきた道』、『 小さな中国のお針子』と並ぶ、中国の三大初恋映画のひとつ。 中国の南西部、ビルマに近い雲南省の山奥の小さな町にも、北京の都会人がやってきます。かつての日本の奥地のような、棚田が山を埋め尽くす ハニ族の美しい山村で、村人が伝統的な農業に はげむ中、都会にあこがれるルオマの心情を描いた、静かな、ほろりとさせる映画です。



Tomorrow

●『 Tomorrow パーマネントライフを探して2015年(仏) 製作・監督:シリル・ディオン (1978- ) 共同制作:メラニー・ロラン、(ドキュメンタリー)
 『ネイチャー』誌に 21人の科学者グループが論文を書いて、「人類は絶滅する恐れがある」と主張しました。気候変動による 地殻の破壊と 人口増加が、人類を破滅へと導くと。これに 政治家たちは反応しませんでしたが、フランスの映画人たちが、世界の さまざまな地で 現在のシステムを変えるべく 行動を起こしている 人や自治体や国を訪ねて 旅をします。その明るいタッチが受けたのか、フランスで120万人が見たといいます。限られた長さの映画で 個々の活動のすべては 理解できませんが、多くのサジェスチョンが得られます。シリル・ディオンは環境活動家・作家・映画監督で、この映画のあと『未来を創造する物語: 現代のレジスタンス 実践ガイド』という本を書いています(丸山亮・竹上沙希子共訳、2020, 新評論)。 メラニー・ロランは、映画『オーケストラ』で ヴァイオリニストを演じた女優です。予告編は こちら



彼らが本気で

●『 彼らが本気で編むときは、2017年(日) 監督・脚本:荻上直子, 1972- ),主演: 生田斗真、柿原りんか,桐谷健太
 トランスジェンダーの家族をテーマにした映画ですが、「家族」については 誰でも苦しい思い出や 遣り切れない思い出をもっていることでしょう。それを、ある特殊な家族関係の中で描いています。荻上直子(おぎがみ なおこ)監督の作品は初めて見ましたが、たいへん才能のある 優れた監督です。その わざとらしさのない画面作りに感心しました。俳優陣もよい、特に子役の 柿原りんか に好感。題名は、取って付けた感じですが。



沖縄

●『 沖縄 うりずんの雨2019 年(日) 監督:ジャン・ユンカーマン (1952- )
 アメリカ人映画監督のジャン・ユンカーマンが 沖縄の戦後史を描いた、2時間半のドキュメンタリーです。第1部「沖縄戦」、第2部「占領」、第3部「凌辱」、第4部「明日へ」という構成です。「うりずん」というのは「うるおいぞめ」が語源で、春3月から梅雨にはいる5月くらいまでの時期をさす言葉で、県民の4人に一人が死んだ 沖縄の地上戦の季節と重なるそうです。一体 いつになったら、政府は 沖縄県の基地負担を半減させるのでしょうか。 予告編は こちら

( 2022 /08/ 01 )



フジテレビというTV局
「古書の愉しみ」の『武士の娘』の画像について

画像

● 私はテレビを見ませんし、テレビ受像機も持っていませんが、フジテレビというのは、視聴率のために ずいぶんと いかがわしいこともするTV局だという噂は よく聞きます。今回、それを実際に体験しました。

● 昨年(2021年)の 9月6日に、テレビ番組の制作をしているという、トリックスターの川中子という人から メールが来ました。

「この度、弊社にて BSフジ『日本史の新常識7』という番組を制作しており その中で今回、杉本鉞子を取り上げることとなりまして、 神谷さまのサイト内の 杉本鉞子『武士道』の画像をお借りしたく思いご連絡させていただきました。 http://www.kamit.jp/15_kosho/28_etsu/etsu.htm  こちらを テレビ番組で使用させていただくことは 可能でしょうか?」

と問われたので、 「可能です。」 と、メールで返事をしました。

● しかし、どの画像を、どのような条件で、どのように使いたい という連絡が来ると思っていましたが、いつまで経っても 何も来ないので、結局 使うのをやめたのだろうと思っていました。 ところが、それから半年後の 2022年(つまり今年)、3月17日に、トリックスターの吉留という人から突然 次のようなメールが来たので、たいへん驚きました。

「番組制作会社トリックスターの吉留(ヨシドメ)と申します。今回、BSフジ「日本史の新常識 第7弾」が4月16日(土)に再放送が決定致しました。前回の放送で神谷様から提供して頂いた武士の娘の画像を再度使用したくご連絡致しました。再放送の際に、申請の手続きなど必要になりますでしょうか。」

● 翌日私は、何がなんだか わからないので、ともかく

「どういう使い方をしたのかわかりません。
きちんと出典が入っていたのでしょうか」

とだけ、返事をしました。 というのは、本の場合でも ウェブの場合でも、通常、無断で使用されても、出典さえ書いてあれば、容認することにしているからです。

● 5日後の3月22日になって、トリックスターの吉留からメールが来ました。

「前任者(川中子)に神谷様との画像提供に関するメールを確認致しました。画像の使用許可は頂いておりましたが、出典表記の確認の際、神谷様からご返信がなかったので、出典表記を無しで放送を致しました。 また画像の使用方法としましては BSフジ スペシャル番組「日本の新常識 第7弾」の番組MCである歴史学者 河合敦先生が海外で活躍した日本人として杉本鉞子様を紹介したく番組で取り上げさせて頂きました。
BSフジにて4月16日(土)20時~21時55分で再放送を致しますので、武士の娘の画像を再度使用させて頂きたく思います。」

● 私に使用許可をもらったとか、画像を提供してもらった、などと デタラメを言い、いったい、いつの放送で使ったのかさえ 書いてありません。 やむなく翌3月23日に、次のような返事をしました。

「私は、トリックスターの川中子さんから、 「神谷さまのサイト内の杉本鉞子『武士道』の画像をお借りしたく思いご連絡させていただきました。 http://www.kamit.jp/15_kosho/28_etsu/etsu.htm  こちらをテレビ番組で使用させていただくことは可能でしょうか?」 と訊かれて、「可能です。」と答えましたが、何かを許可した覚えは、まったくありません。
どの画像を、どのような条件で、どのように使いたい という連絡が来ると思っていましたが、何も来ないので、結局使うのを やめたのだろうと思っていました。
私はTVを見ませんし、TV受像機も持っていません。 いったい、どこのTV局がこのようなことをさせたのか、教えてくれませんか?」

● すると3月24日、今度はトリックスターの宮麻美(みや あさみ)という人から、次のようなメールが来ました

「私、番組制作会社(株)トリックスターの宮と申します。弊社の川中子、吉留の両名より画像使用に至るまでの経緯報告を受けご連絡をさせて頂きました。
該当画像に関して『使用可能』という神谷様からのメールのお返事を当方で 『使用許可を頂いた』と勘違いし放送をしてしまい大変申し訳ありませんでした。また、画像の使用方法や放送日など詳しい説明もなく 大変不躾なお問い合わせをしたこと重ねてお詫び申し上げます。
放送しているのはBSフジになりますが、当番組は弊社で全制作過程を担当しておりますので全て弊社の責任でございます。」

● これは「著作権の侵害」です。犯罪行為 です。たとえ下請けの会社が製作したとしても、放送責任は、制作依頼と内容チェックをして 放送した テレビ局にあります。同日の 私の返事は、

「BSフジという会社の、本件に関する責任者と担当者の連絡先(名前、住所、電話番号)をお知らせください。」

● それから4日たった3月28日に(じっくり フジTVと相談していたのでしょう)トリックスターの宮からメールが来ました。

「 先日ご連絡頂きました放送局の責任者の名前や連絡先を提示する件ですが、当企画は放送局より業務委託を受けている弊社(トリック スター)の制作物であるとことから、弊社が神谷様へ誠意をもってご対応をさせて頂く次第でございます。
また、本件のことを深く反省し4月16日(土)に予定をしておりました 当番組の再放送は中止とさせて頂きました。

● それから10日以上経っても、何の連絡もありません。フジテレビというのは、いつも こういう番組作りをしているのでしょう。誤った放送をすれば、全て下請けの会社の責任にして、自らは何の責任もとらず、謝罪もせずに、知らぬ顔をしているのでしょう。ちょうど 政治家が悪いことをしても、すべて秘書がやったことで、自分は何も知らないと、ほおかぶりするのと同じです。フジTVは、娯楽番組だけでなく、報道番組でも同様のことをやっていると思われます。フジTVの報道番組など、絶対に 信用してはいけません。      ( 2022 /04/ 08 )



イスラームの建築種別ー10 「 公共施設 複合体( キュリエ )

キュリエ

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第 10回は『 公共施設 複合体(キュリエ)』です。 イスラーム圏においては、住民の福祉のための公共施設の建設が 中世から盛んでした。学院や病院、公衆浴場や隊商宿、市場や救貧院、水路や給水所など、市民が社会生活を営むうえで不可欠の施設が、他のどんな文明よりも 多く見られます。キリスト教では 教会が学校や病院を併設することがありましたが、イスラームには教会制度がないので、モスクが そうした施設の出資者となることはありません。では 何が かくも多くの施設を可能にさせたかというと、それは ワクフ と呼ばれる 寄進制度 です。王侯貴族に限らず、個人の資産のある人なら誰でも、その私財や収益を 慈善的目的に用いるために 一種の財団を設立し、私権を永久に停止、放棄することができました。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『公共施設 複合体』の項が、別のウィンドウに出ます。    ( 2022 /07/ 01 )


プーチンは、帝政ロシア時代の ニコライ1世の亡霊か?

 ●● ウクライナ 頑張れ!  ●● ゼレンスキー大統領 頑張れ!

この事変は、プーチンの死をもって終わるほかない ような気がします。
それが自殺であるか 暗殺であるかは わかりませんが。
ただ私には この事変が、かつて日本が引き起こした満州事変のようだという思いが . .

というのは、日本政府は「力による一方的な現状変更を許さない」と、いつも言っていますが、かつて中国や朝鮮で 大々的にそれをしたのは 日本です。 ロシアがウクライナでやっているような、中国・朝鮮民衆への大殺戮・虐殺もしました。 それについての謝罪の心をもたず、戦前の日本の行為を正当化しようとする日本政府・自民党の姿勢・意識は、現在のロシアと似たようなものです。
 日韓関係の これほどの悪化も、そうした安倍元首相や「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」などの なしたことです。 中国・韓国侵略の戦犯を合祀する靖国神社に参拝して、韓国・中国の人々の神経を 逆なでし続けるのでなく、きちんと謝罪の意識を持ち続けて 行動していれば、「慰安婦問題」も「元徴用工問題」も、起こらなかった とまでは言えないにしても、国家関係を左右するほどの運動にはならなかった、民衆が それに賛同しなかった、と思います。 
 自分(日本)のことを棚に上げ、ただ正義漢風に ロシアを非難している言論には、少し違和感があるのです。    ( 2022 /05/ 25 )


大川周明の 『 回教概論 』と『 古蘭

大川周明

● 『古書の愉しみ』の第55回は、大川周明 の『 回教概論 』と『 古蘭 (コーラン)』です。日本で最初にイスラーム教の詳しい概説書を書いたのは、大アジア主義者で、大正、昭和時代における右翼の巨頭、大川周明だと聞いたら、誰でも意外に思うことでしょう。大川周明 (1886-1957) というのは、前回の「古書の愉しみ」で書いた東海散士(柴四朗)と 思想的、政治的に目指したところが似ていますが、年代的には 散士よりも35年ほど後の人で、東海散士が明治を体現したような人であるのに対し、大川周明は 大正時代から昭和戦前に多岐な活動をし、影響力の大きな著作をした人でした。「東京裁判」を生き延びた戦後の晩年には、若き日の志向を再燃させて イスラーム研究にうちこんだのです。 ここをクリック すると「古書の愉しみ」のディヴィジョンの「『回教概論』と『古蘭』」のページが 別のウィンドウに開きます。    ( 2022 /06/ 01 )


イスラームの建築種別ー8 「 浴場( ハンマーム )

浴場

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第8回は、『 浴場(ハンマーム) 』です。 イスラームの都市や建築に欠かせない要素に、浴場があります。身体の清潔を重んじたイスラームでは、とりわけ礼拝の前に体を浄めるべきことを『クルアーン』は繰り返し説いていて、それは モスクの中庭の 浄めの泉 となりました。浴場の施設は、ムスリムが征服していった 古代ローマ領地の各地に見出し、その方式を採り入れたと考えられます。大規模なもののほかに、色ガラスを嵌めたトップライトがちりばめられた小規模なドーム屋根の並ぶ ハンマーム は、スペインからインドまで、ハンガリーから中国まで いたる所にあり、イスラーム諸国では 今も銭湯として使われています。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『浴場』の項が、別のウィンドウに出ます。    ( 2022 /04/ 01 )




原智恵子

●● ピアニストの 原 智恵子 (1914 -2001) と言っても、知る人はあまり多くないでしょう。私も ほとんどまったく知りませんでした。彼女は天才的ピアニストと謳われて13歳でフランスにわたり、パリ音楽学校のピアノ科を首席で卒業し、1937年に日本人として初めてショパン国際ピアノコンクールに出場して「特別聴衆賞」を受賞、ヨーロッパと日本で多くのリサイタルを行いました。しかし日本の音楽界からは無視され、締め出されて、もっぱらヨーロッパで活躍。中年になって、カザルスと並ぶ世界有数のチェリスト、ガスパール・カサド と結婚、「デュオ・カサド」として世界中を演奏旅行しました。
 最近、何がきっかけだったか 原智恵子のことを知り、本を読んだり、数少ないCDを聴いたりしています。特に 石川康子が書いた伝記『 原智恵子、伝説のピアニスト 』(2001、KK ベストセラーズ、ベスト新書)が非常に興味深く、クラシック音楽と ピアニストについて興味のある方には お薦めです。    ( 2022 /04/ 07 )

東海散士(柴 四朗)の 『 佳人之奇遇

回教概論

● 今回の「古書の愉しみ」第 54回は、初めて「和本」を採り上げます。手彫りの「木活字」(もっかつじ)で 和紙に印刷し、糸で「和綴じ」にした、今から 130年以上前の、明治時代の本です。しかも、見開きの細密な 石版画リトグラフ)が 全部で 40枚も挿入された「挿絵本」でもあります。木活字の書体も美しく、主に 西洋古書を紹介してきた「愛書家」にとっても、なかなかに 魅力的な古書です。ずいぶん長い章になりましたが、 ここをクリック すると「古書の愉しみ」のディヴィジョンの『 佳人之奇遇 』のページが、別のウィンドウに開きます。  ( 2022 /03/ 01 )

イスラームの建築種別ー7 「 隊商宿( キャラバンサライ、ハーン )

隊商宿

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第7回は、『 隊商宿(キャラバンサライ、ハーン) 』です。 かつて シルクロードに代表される交易路が、イスラーム圏各地を 網の目のように結んでいました。鉄道のできる以前、大量の荷を積んで長途の旅に耐える動物は、まずラクダ、そしてラバ、馬でした。盗賊団から身を守るために、護衛つきの 数十頭から数百頭の隊伍を組んだ隊商(キャラバン)は 一日に平均 30キロを行進します。町と町の間には、彼らが安全に宿泊できるよう、30キロおきに 隊商宿(キャラバンサライ)が必要でした。また、終着点の都市内のものは、「ワカーラ」や「フンドゥク」とも 呼ばれました。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『隊商宿』のページが、別のウィンドウに開きます。    ( 2022 /02/ 01 )



いよいよ第3次世界大戦か?

新型コロナ感染者の死者も、1日で 322人となりました。

狂言 「鉢叩(はちたたき)より
何事も 皆偽りの世の中に 死するばかりぞ 誠なりける
あれを見よ 鳥辺の山に立つ煙 立ちつづけても 立たぬ日もなし
あだし野の 露は はかなき たとえなり 露にも劣る人の命ぞ
思えば 浮世は 夢の世ぞかし

   ( 2022 /02/ 23 )


謹賀新年 2022

年賀状

今年は 大晦日の夜から バッハの『フーガの技法』を聴きながら
新年を迎えました。 ベルリン古楽アカデミーの演奏による DVDです。



● 年の初めは 新しい記事の代りに、映画のDVDの紹介です。 今回は 異色の内容の映画を6本。 制作年度順に並べます。  ( 2022 /01/ 01 )



ブラック・ムーン

●『ブラックムーン1975年(仏・伊)監督・脚本:ルイ・マル (1932-95) ,主演:キャスリン・ハリスン、ジョー・ダレッサンドロ、テレーズ・ギーズ
 現代のフランス (?) なのに、ひとりの女が車で街道を走っていると、パルティザンたちが兵士に処刑されている地に入り込み、とある屋敷に逃げ込むと、そこには老婆が寝ていて、奇妙な出来事が 次から次へと脈絡なく起こり、一角獣(ユニコーン)まで現れて、論理的帰結なしに幕を閉じる という、ルイ・マルの 唯一の シュルレアリスムの映画です。 発想のもとは、15世紀のフランスのタペストリー『貴婦人と一角獣』であったでしょう(パリ中世美術館蔵)。フランス映画ですが、セリフは英語です。



コーリャ

●『 コーリャ 愛のプラハ(チェコ)1996年,監督:ヤン・スヴェラーク(1965- ),主演・脚本:ズデニェク・スヴェラーク,原案:パヴェル・タウセック
 チェコの名優 ズデニェク・スヴェラークが主演するばかりか、その映画の脚本を書き、その息子のヤン・スヴェラークが監督して作った映画です。1989年にビロード革命で 共産党支配体制が崩壊する直前のプラハで、もと交響楽団の名チェリストだった55歳のロウカが 種々の雑仕事で かろうじて生計を立てているところへ、西側に脱出したいロシア女性との偽装結婚の話が舞い込み、その報酬につられて承諾したはよいが、女性は5歳の子供 コーリャを残して失踪。残された子供と初老の音楽家の二人暮らしは どうなるのでしょうか?



アフガン

●『 アフガン零年(アフガニスタン・日本・アイルランド)2003年,監督・脚本:セディク・パルマク Siddiq Barmak,主演:マリナ・ゴルバハーリ
 タリバン支配下のアフガニスタンの一家と その少女の悲惨な物語です。私はイスラーム諸国の建築調査をして 各国に撮影旅行をしてきましたが、アフガニスタンとイラクだけは、とうとう行くことができませんでした。一時的に政権が崩壊した時に わずかな地を訪ねることはできたでしょうが、私はその国の主要な建築作品をすべて訪ねるのを原則にしているので、それでは私の目的は達せられません。2000年代の初めに アフガ二スタンは アメリカによって タリバンの圧政から解放され、その時期に作られたのが この映画ですが、アメリカ軍は平和を達成することはできず、ベトナム戦争のような泥沼に陥りました。ついに昨年 アメリカ軍が全面撤退をすると、とたんにタリバンが全土を制圧して、元の木阿弥と化しました。



92才の

●『 潜水服は蝶の夢を見る2007年(仏) 監督:ジュリアン・シュナーベル (1951- ) 主演:マチュー・アマルリック、エマニュエル・セニエ、マリ=ジョゼ・クローズ、原作:ジャン=ドミニック・ボービー『 潜水服は蝶の夢を見る 』(1998 講談社)
 フランスの有名なファッション雑誌『エル』の元編集長 ジャン=ドミニク・ボビーは、42歳の時 突然 脳幹出血で倒れ、まるで「潜水服に閉じこめられて海に沈められた」かのような全身不随になってしまいます。右目がふさがれ、しゃべることもできず、手足を動かすこともできずに、ベッドに寝たきりになります(ロックト・イン・シンドローム)。幸いなことに脳は大きな損傷をうけず、思考することができるので、蝶になることを夢見ながら、本を一冊書くことになります。いったい どうやって? 苦闘の体験を、ユーモアを交えて書いた原作が 映画になりました。



92才の

●『 92才のパリジェンヌ2015年(仏) 監督・脚本:パスカル・プザドゥー (1970- ) 主演:サンドリーヌ・ボネール、マルト・ヴィラロンガ、原作:ノエル・シャトレ
 老いた母から、「今まで 愛する家族に囲まれて 充実した人生を送ってきました、ありがとう。でも、もう体が どんどん老化して、自由がきかず、できないことが増えてきました。私は2か月後に あの世に旅立ちます」 と言われたら、あなたなら どうしますか? その2ヵ月間の家族のドタバタと、親子の情愛、人生の哀感を、女流監督が優しく、しっとりと描いています。原題は "Dernière Leçon" (最後の授業)で、リオネル・ジョスパン 元フランス首相の母、ミレイユの尊厳死を、娘で作家のノエル・シャトレが描いた小説が 原作です。

( 2022 /01/ 01 )

イスラームの建築種別ー6 「 王侯の廟( クッバ、グンバト )

王侯の廟

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第6回は、前回の『聖者廟』と対をなす 『 王侯の廟(クッバ、グンバト ) 』です。王侯の廟は国家の記念造営物ともなり、潤沢な予算と有能な建築家の手によって、高度な建築作品 へと昇華します。本来のイスラーム建築の内向性や皮膜的建築の性向に対して、中央アジアからインドにおける 外観重視の建築 への欲求が、東方イスラーム圏における廟建築の大発展を もたらしました。ティムール朝の『グーリ・アミール廟』や ムガル朝の『フマユーン廟』、そして『タージ・マハル廟』と、幾多の傑作を生みました。これらは二重殻ドームで作られ、モニュメンタリティを いっそう強めています。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『王侯の廟』の項が、別のウィンドウに出ます。    ( 2021 /12/ 01 )



会社人間
この絵は「転職ナビ」より借用

● 大学を出て企業に就職した若い人たちが、じきに 会社命令で、あるいは 自ら上司に迎合して、素面で嘘をつくようになる姿を見るのは、心が痛むことです。資本主義社会においては、それは避けられないことなのかもしれませんが、それを乗り越えたはずの「社会主義」あるいは「共産主義」の国が 却って、より ひどい「抑圧社会」あるいは「密告社会」になってしまうというのは、もっと やりきれないことです。
 「会社人間」も 初めのうちは、嘘をつくごとに「良心の痛み」を感じるのでしょうが、次第に平気で嘘をつくようになり、保身のために「信実」を失っていきます。
 現在 日本では「引きこもり」の若者が数十万人もいて、また新卒者の 10人に1人は 入社後 わずか1年たらずで退社してしまうそうです。学生時代には「誠実な生き方をしたい」、「世の中の役に立ちたい」と思っていたのが、営利企業に就職した途端に、欺瞞に満ちた制度や圧力に奉仕することになり、それが耐えられなくなって 退社したり、引きこもり(ミザントロープ)になったりする人の割合が、ある程度を占めるのではないかと思われます。とりわけ、心の繊細な人や、理想を胸に抱くような人は そうでしょう。
 会社員が、これは単に仕事のためだと 割り切って 嘘をついていても、それが積み重なるにつれ、心の深いところで「人間性」を損なっていくのです。そして 新聞やテレビで見る 世の中の悪事や 政治家の嘘にも、不感症になっていきます。政治的にも保守的になり、若い 革新的な気概を 失っていくのです。 若者が自分の良心を保っていくには、どうすればよいのでしょうか。 成熟した大人が、良心的な行動の手本を 見せて行く以外に ないでしょう。   ( 2021 /11/ 17 )

日本大学付属病院の 設計・工事をめぐる不正

日大不正
(この図表は、東京新聞 Tokyo Web, 2021年10月10日の記事より転載)

● こういう事件が起きて、新聞やテレビで連日大きく報道されることによって、「設計事務所」のイメージが 世の中に定着していくのです。 建物施設の設計は「建築家」に依頼するものだという認識には なりません。「建築家」という言葉は 一言も出てきません。 設計をするのは「設計会社」であり「設計業者」であると。 そして「営利業者」である「設計会社」は 不正や悪事にも加担するものだと。 いったいこの国では、いつまで「建築家」という倫理的な プロフェッション の確立に反することばかりを しているのでしょうか。 いつまでも、設計事務所が 株式会社に なっているのは おかしい と 認めないのでしょうか。・・・ 詳しくは、本 HP の、『 あいまいな日本の建築家 』を お読みください。   ( 2021 /10/ 10 )

『 ブルガリアイスラーム建築 』

ブルガリア

● 2018年に 丸善出版から、翌年の 2019年秋に出版する予定の『 東欧文化事典 』(編集代表:羽場久美子・青山学院大学教授)という本に、標記の原稿を依頼されました。翌年春に原稿を送りましたが(マフィアによる妨害も あったりして)、編集は遅れに遅れ、編集担当者も交替し、本の題名も『 中欧・東欧文化事典 』と変更になり、2021年9月になって、やっと本ができたようです。しかし執筆者は大勢なので、出版社としては 一人一人に本を支給することは できないと言います。「抜き刷り」さえも 送ってきません。雀の涙ほどの原稿料よりも はるかに高い値段の本を買う気はないので、私は まだ本の現物を見ていません。私の原稿の内容は、この HP上の『 東欧のイスラーム建築 』のダイジェスト版といった趣の 短文ですが、『世界のイスラーム建築』のサイトの「イスラーム建築の名作」のディヴィジョンに載せておきます。 ここをクリック すると『イスラーム建築の名作』のディヴィジョンの中の、「ブルガリアのイスラーム建築 」のページが 別のウィンドウに開きます。    ( 2021 /10/ 01 )



オカムラ

● 今から8年前(2010年)に、新しい 椅子 を買いました。自宅と事務所をひとつに まとめた後なので、できるだけ多用途で安楽な椅子をさがし、結局 オカムラ(昔は岡村製作所といった)の、黒革の エルシオ ERCIO にしました。最後の椅子と思ったので 金を惜しまず (?)、20数万円だったと思います。重いことと、座に シワ ができてしまうこと以外は、まあ満足していましたが、今年になって重大な故障がおきました。それは、背もたれ が、前に倒れてしまうのです。「不良品」をつかまされた結果だったのですが、オカムラは その責任をとろうとしません。  ここをクリック すると「無責任企業・オカムラ」のページにとびます。  ( 2018 /12/ 14 )

●● とうとうオカムラの椅子「エルシオ」を処分し、新しい椅子を購入しましたので、そのことを付け加えました。  ここをクリック してください。    ( 2021 /07/ 19 )

イスラームの建築種別ー4 「 修道場( リバート, ハーンカー )

修道場

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第4回は、『 修道場(リバート、ハーンカー) 』の項です。修道場の起源と考えられるのはリバートで、イスラームの大征服時代に、征服地を統治するための 軍営都市(ミスル)が建設され、前線には 信仰の戦士が 異教徒との聖戦(ジハード)を遂行するための砦が築かれました。戦士と軍馬のための こうした砦を 北アフリカでは リバートと呼び、ローマの駐屯都市に倣って、半円形の櫓を並べる 強固な壁で囲った中庭型の建物としました。修道場が より鮮明に宗教施設となるのは、スーフィズムの発展に負っていて、それぞれの教団(タリーカ)が 修道場を設けるようになります。これをアラビア語で ザーウィヤ、ペルシア語で ハーンカー、そしてオスマン朝のトルコでは テッケと呼びました。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『修道場』の項が、別のウィンドウに出ます。    ( 2021 /09/ 01 )

INTERMEZZO

アルメニア
暑中お見舞い申し上げます(アルメニアより 愛をこめて)

● 新型コロナが猖獗(しょうけつ)をきわめ、感染者が 連日1万人を超えるというのに、自民党・公明党政権は 国民の命よりも オリンピックのメダル獲得競争といった 愚行を重視して、世論の反対を押し切ってまで、連日 お祭り騒ぎをしています。いったい 彼らの頭は どうなっているのでしょうか? 腐りきっているのでしょうか?

●● 今月は夏休みなので、新しい記事はありません。そのかわりに映画のDVDの紹介をします。今回は欧米の古い映画3本と、アフリカを舞台にした映画を3本です。映画の制作順に並べます。    ( 2021 /08/ 01 )



わが谷は

●『 わが谷は緑なりき1941年(米)監督:ジョン・フォード (1894-1973),主演:ウォルター・ピジョン、モーリン・オハラ,原作:リチャード・レウェリン
 今から 80年も前に作られた モノクロ・スタンダードのアメリカ映画で、昔のイギリスのウェールズ地方の炭鉱町における一家族、男は皆 炭鉱夫だったモーガン家の人々の変遷を描いたイギリスの小説を、名匠 ジョン・フォード監督が『怒りの葡萄』 (1940) に続いてメガフォンを取った傑作。原題は "How Green was my Valley" で、一家の末っ子 ヒューの語りで物語が進行します。アメリカ映画というよりは ヨーロッパ映画と言ったほうがよい、歴史的名画です。



秘密と嘘

● 『 秘密と嘘1996年(英)監督:マイク・リー (1943- ) 主演:ブレンダ・ブレッシン、マリアンヌ・ジャン=バプティスト,カンヌ国際映画祭で パルム・ドール受賞。
 ある日、ロンドンの下町で暮らす中年の庶民女のシンシアに、昔 若い時に生み落として、すぐに養子に出したまま 一度も会ったことのない、彼女の娘だと称する若い女から、一度会いたいという、晴天の霹靂(へきれき)のような電話が かかってきます。ここから生まれる 驚愕、懐疑、罪の意識、嘘、家族関係のトラブルや 心の変転などを描いた、深みのあるコメディです。今から 25年前の映画ですが、 監督と俳優たちが、脚本なしに、話し合いと即興の堆積で作ったという、信じがたい作品です。



アメリ

●『 アメリ1998年(仏) 監督・脚本 : ジャン=ピエール・ジュネ (1953- ) 主演:オドレイ・トトゥ, マチュー・カソヴィッツ, セルジュ・メルラン、音楽:ヤン・ティルセン。
 原題は「アメリ・プーランの数奇な運命」 最初に偶然にテレビで見て その面白さに驚き、そこでビデオを買って見て 一層 感心し、後にDVDを買って 何度も見ました。この大ヒット 作品の骨子は ひとえに、才気あふれる監督の「機知」と、映画作りの「策謀」にあるでしょう。こんなに面白い映画は めったにあるものでないと言えます。細部に至るまで たくらみに満ちたコメディです。とびきり美人というわけではない オドレイ・トトゥに、「カフェ・デ・ドゥ・ムラン」で働く 内気で ひょうきんな娘 アメリ・プーランの役は 打って付けでした。



ルワンダ

●『 ホテルルワンダ2004年(英・伊・南ア・米)監督・脚本:テリー・ジョージ (1952- ),主演:ドン・チードル、ソフィー・オコネドーニック・ノルティ 
 1994年、東アフリカのルワンダ共和国における ツチ族とフツ族の争いによって、100日で 50万人から 100万人もの人命が虐殺されたと言います(ヒロシマ・ナガサキの原爆よりも大きな惨事!)。 その最中、首都キガリの四ツ星ホテル、ホテル・コリーヌの支配人が、命を賭して、1,200人もの避難者、女子、子供をホテルに匿って 命を救いました。その実話を、彼自身の家族を救う奮闘と からめて、テリー・ジョージ監督が、手に汗を握る映画に作りあげました。こういう紛争が、今も世界中で起きているかとおもうと、暗澹たる気持ちになりますが、映画はそれを もっとヒューマン・タッチで描いています。



映画

●『 インビクタス負けざる者たち 2009年(英・伊・南ア)監督:クリント・イーストウッド (1930- ),主演:モーガン・フリーマン、マット・デイモン
 南アフリカで、アパルトヘイトと闘い、非暴力で 自由と平等を訴えた、インドのマハートマ・ガンディーに匹敵する 偉大なる男、ネルソン・マンデラが 30年に及ぶ獄中生活から解放され、選挙で大統領に選ばれたところから話は始まります。彼は 黒人と白人から成る新生国家を統合するために、翌年に南アフリカで開催される ラグビーの世界大会(ワールドカップ)に賭けます。マンデラ役の黒人俳優 モーガン・フリーマンが素晴らしい。そして、昔の TV 西部劇ドラマ『ローハイド』の ロディ役の若者 クリント・イーストウッドが、長じて こんな大監督に育ったとは!



映画

●『 女を修理する男2015年(ベルギー) 監督・脚本 : チエリー・ミシェル (1952- ) 
 奇妙な題名ですが、喜劇ではなく、原題 "L'Homme qui Répare les Femmes" の直訳で、 アフリカのコンゴの婦人科医、デニ・ムクウェゲ医師が 生命の危険にさらされながらも、フツ族とツチ族の抗争・殺し合いの中で、レイプされて 体(性器)と心を破壊された女たちを 修理(治療)し、世界に平和を訴える姿を描いた ドキュメンタリーです。楽しい映画ではありませんが、アフリカ(コンゴ)の現実、常に虐げられてきた女たちについて、そして闘い始めたアフリカの女たちについて知る映画です。

( 2021 /08/ 01 )


イスラームの建築種別ー3 「 学院( マドラサ、メドレセ )

学院

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの 第3回は、『 学院(マドラサ、メドレセ ) 』の項です。イスラームの教育機関には初等教育を受けもつ「クッターブ」と、高等教育を担う「マドラサ」があり、マドラサ(学院)はクルアーン諸学やハディース学の学習と研究を主としながら 種々の学問をする、ヨーロッパで発達する 大学に相当するものでした。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『学院』の項が、別のウィンドウに出ます。    ( 2021 /07/ 01 )

 「 文化の翻訳伊東忠太の失敗 」の 韓国語訳

表題

● この HP の『 原術へ 』のサイトに収録した3つの論文のうち、「 文化の翻訳伊東忠太の失敗」が、韓国語に翻訳されました。 韓国のフリーランスの建築エディター、 仲鏞 (LEE JOONG YONG) さんが、常々私と同じように、「アーキテクチュア」に「建築」という訳語をあてはめることの不適切さについて悩んでいたので、私のサイトを見つけて「文化の翻訳」を読み、大いに共感したそうです。 そこで これを韓国語に翻訳して、韓国の建築家や建築学者に読んでもらおうと、決心したのでした。 李さんは日本への留学経験でもあるのか、実に日本語に堪能で、インターネット翻訳機も利用しながら、私の論文を1フレーズづつ、丹念に翻訳して、両者を併記したのです。 実に素晴らしい。 多少 日本語に通じた 韓国の建築関係者には、非常に便利なことと思います。 韓国の学生さんたちは、韓国語の部分だけを通読して、「アーキテクチュア」という言葉の 正しい意味を知ってくれることでしょう。 もちろん、建築に関する 韓国と日本の 制度の違い がありますから、100パーセントは理解できないかもしれませんが。 ここをクリック すると 韓国語訳のページ に とびますので、興味のある方は ご覧ください。     ( 2021 /06/ 10 )


イスラームの建築種別ー1 「 住 居( ダール, バイト)

住居

● 私家版『イスラーム建築』は、今でも たまに、頒布用の在庫はないかと 問い合わせをもらいますが、もうありません。しかし その内容の半分くらいは、『世界のイスラーム建築』のサイトの どこかで読めます。それでも 第4章の「イスラームの建築種別と その集合体」は、HPに載せたことがありません。まとまって見られるようにすれば、本をお持ちでない方には 便利だと思いますので、『世界のイスラーム建築』のサイトに そのディヴィジョンを作って、本の項目順に載せていくことにしました。最初は「住居(ダール、バイト)」の項です。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『住居』の項に とびますので、興味のある方は ご覧ください。    ( 2021 /05/ 03 )

世界建築 ギャラリーゲガルド修道院(アルメニア)

ゲガルド

● 『アルメニアの建築』のサイトから、前回のハグパト修道院に続いて、 ゲガルド修道院 も「世界建築ギャラリー」のディヴィジョンに単独で扱うことにしました。 ハグパト修道院 と並んで、アルメニアで最も重要な修道院建築で、ユネスコ世界遺産に登録されています。「アルメニア中部の建築」の章では12点の写真を掲載していましたが、大幅に増大させて33点にします。 ここをクリック すると「世界建築ギャラリー」のディヴィジョンの『ゲガルド修道院』のページが 別のウィンドウに開きます。    ( 2021 /03/ 01 )

謹賀新年 2021

年賀状

今年も 大晦日の夜から バッハの『マタイ受難曲』を聴きながら
新年を迎えました。リヒター版のDVD(196分、日本語字幕版)です。




● 年の初めは 新しい記事の代りに、 映画のDVDの紹介です。 今回は、今から半世紀以上前のものから 近年のものまで、「私の好きな映画」の続きです。ヨーロッパ映画を4本と 日本映画を1本、それに音楽作品を1本 加えました。 制作年度順に並べます。  ( 2021 /01/ 01 )



尼僧物語

●『 尼僧物語1958年(米) 監督 : フレッド・ジンネマン (1907-97) 主演:オードリー・ヘプバーン、ピーター・フィンチ,原作:キャスリン・ヒュウム。
 高校1年の終わりの春休みに、先輩から映画の試写会の切符をもらい、有楽町の読売会館ホールに見に行ったら、それが『ローマの休日』(1953) の最初のリバイバル上映で、初めて見るオードリー・ヘプバーンの姿に、あゝ世界には こんなにも美しい人がいるものかと、驚天動地の思いをしました。以後、彼女の出る映画は だいたい見に行きましたが、ほとんどが 内容的には 他愛ない「ロマンチック・コメディ」で、『ローマの休日』以外に 映画芸術的に評価できるのは、ジンネマンの『尼僧物語』、ワイラーの『噂の二人』、ヒューストンの『許されざる者』ぐらいだったでしょうか。『尼僧物語』では、ベルギーのカトリックの厳格な修道院の尼僧になった主人公が 紆余曲折の後、希望していたアフリカのコンゴに、尼僧看護婦として赴任して・・。



シベール

●『 シベールの日曜日1962年(仏) 監督・脚本 : セルジュ・ブールギニョン (1928- ) 主演:ハーディー・クリューガー、パトリシア・ゴッジ,原作:ベルナール・エシャスリオー(『ビル・ダヴレーの日曜日』)。
 高校2年生のときに『芸術新潮』だったかに、ブールギニョン監督が日本の水墨画の美しさに感銘を受け、これを映画で表現しようと この作品を撮った、と書かれているのを読んで、これは是非見たいものだと、上映している名画座を探して 見に行きました。今から 60年近くも前の映画ですが、その水墨画のような白黒画面の美しさと、純粋無垢の心の悲劇のドラマに、堀辰雄と立原道造を愛読していた若い魂は 甚だしく感動しました。また、高校の第二外国語でフランス語を学び始めていたので、ところどころ台詞が解ったのも うれしかった記憶があります。



ローズマリー

●『ローズマリーの赤ちゃん1968年(米) 監督・脚本:ロマン・ポランスキー (1933- ) 主演:ミア・ファーロウ、ジョン・カサヴェテス,原作:アイラ・レヴィン。
 ユダヤ系ポーランド人のロマン・ポランスキーは 私の 怪奇幻想趣味を 最もよく満たしてくれる映画監督で、最初に『反撥』(1965) を見たときは衝撃的でした。アメリカに渡って撮った『ローズマリーの赤ちゃん』は 恐怖映画というよりは、ヨーロッパの「悪魔」についての 現代の おとぎ話という味わいです。他には『吸血鬼』、『チヤイナタウン』、『赤い航路』などを撮って若者を魅了しましたが、最後には『戦場のピアニスト』(2002) のようなヒューマニズムの傑作を撮って絶賛を博し、ポランスキーも歳をとったな と思わせました(尤も それは恐怖映画でもありましたが)。



映画

●『(ハル)1995年(日) 監督・脚本 : 森田芳光 (1953-2011) 主演:深津絵里、内野聖陽、戸田菜穂,音楽:野力奏一。
 まだインターネットが普及する前、1990年代に「パソコン通信」というソーシャル・コミュニケーションズが流行りました。私は やっていませんでしたが、これに興味をもって森田芳光監督が作ったのが この映画で、(ハル)と(ほし)というハンドル・ネームを使っての 主人公たちのメールの対話が、まるで無声映画における セリフのように、全部 文字で画面に出ます。フロッピー・ディスクの時代の物語です。才気煥発の森田芳光は私の愛する日本の監督でしたが、10年ほど前に61歳で突然 世を去ってしまいました。『(ハル)』は 森田作品の中では 比較的地味な作品ですが、私は これが一番好きです。



海の沈黙

●『 海の沈黙2004年(仏) 監督・脚本 : ピエール・ブートロン (1947- ) 主演:ジュリー・ドラルム, トマ・ジュアネ, ミシェル・ガラブリュ。
 原作は ヴェルコールの同名の短編小説で、ナチス・ドイツの占領下にあったフランスにおける レジスタンス文学の代表作です(1942年)。戦後まもなくの 1948年に ジャン・ピエール・メルヴィル (1917-73) 監督によって映画化され、傑作のほまれ高い ドキュメンタリー・タッチのモノクロ・スタンダード作品となりました。その半世紀後のピエール・ブートロン監督は、よりドラマティックに脚色して、カラー・ワイドの映画にしました。映画作品として完成度が高いのは ブートロン作品ですが、原作に より忠実なのは メルヴィル作品です。どちらを取るかは 好みの問題です。



フーガの技法

●『 フーガの技法Die Kunst der Fuge, BWV 1080,2007年11月 録音・録画(独)
 作曲:ヨハン・セバスチヤン・バッハ,演奏:ベルリン古楽アカデミー。 輸入盤
これは劇映画ではなく、音楽の演奏会の 録音・録画です。私が 最高の音楽作品だと思う バッハの『フーガの技法』の 私の愛聴盤は、前に書いたように、クロード・パスカルとマルセル・ビッチュによるオーケストラ編曲盤ですが、ここに採り上げるのは ベルリン古楽アカデミーのメンバーによるオーケストラ編曲盤です。前記のものと違和感がないので、それを模範にしたのかもしれません。ベルリン古楽アカデミーというのは 小編成のオーケストラで、しばしば 室内楽の場合と同じように、指揮者なしで演奏します。そして 古楽器の柔らかな響きによる 名演奏です。チェンバロの音色の美しいこと。こんなに宇宙的な音楽を 指揮者なしで演奏するというのは、よほど 楽団員の一体感が強いのでしょうか。DVDで見ていると、どの楽器が どの楽器を追いかけて行くのかが よくわかります。残念なのは 全曲録音ではないことと、冒頭のコラールが不要なこと。

( 2021 /01/ 01 )


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お知らせ・神谷武夫

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