お知らせ・神谷武夫

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イスラームの建築種別ー13 「 水利施設( カナート、ノリア、サビール )

ハマー

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第 13回は『 水利施設( カナート、ノリア、サビール、チェシュメ )』です。  イスラーム圏は 降雨量の少ない亜熱帯地方に広まったので、生命の源としての水の確保は 為政者に課せられた最重要の課題でした。住民や戦士への飲料水の供給がなければ 都市も聖戦も成立しないし、農業用水が確保されなければ 作物は生育せず、国家の税収入が得られません。したがって 都市も農村も 完全な砂漠では成り立たず、河川や 地下水のあるオアシスに発展しました。それでも夏の乾燥期には 水が不足するので、カナートや 貯水槽や 水車や 給水所など、さまざまな 水利施設が工夫されたのです。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『水利施設』の項に跳びます。   ( 2022 /12/ 01 )

古書の愉しみー56 坂本健の『 麻謌末(マホメット)

麻謌末

● 『古書の愉しみ』の第 56回は、坂本健一 の『 麻謌末(マホメット)』です。 前回の『コーラン經』を翻訳した文学士、坂本蠡舟(れいしゅう)こと 坂本健(本名 健一)は、ムハンマドの伝記である『 麻謌末 (マホメット) 』も書きました。帝大卒業の翌年です。簡素な本ですが、19世紀最後の 1899年 (明治32) の出版で、今から 123年前の本です。 少年向けの「世界歴史譚」全36冊の内の 第6編で、博文館の出版、北 蓮蔵による 見開き挿絵9点を含みます。他の巻では 横山大観、下村観山、中村不折なども挿絵を担当した、偉人・英雄の伝記シリーズで、著者には高山樗牛、上田敏、柳田国男などがいました。 ここをクリック すると「古書の愉しみ」のディヴィジョンの『 麻謌末(マホメット)』のページが 別のウィンドウに開きます。    ( 2022 /11/ 01 )


日本銀行の黒田総裁は、一刻も早く退陣すべきです

●● 日本の国力 が、どんどん落ちています。国力を示す指標は、その国の 通貨 の価値です。黒田が 2013年に日銀総裁に就任してから9年の間に、円は5割も弱くなりました。ドル換算で、90円 だったものが、今や 135円 です。外国から物を買うのに(食料や燃料や原材料を買うために)5割も多く支払わねばならなくなりました。日本の製品は、5割も安く買い叩かれます。途上国に同じ10億円を援助しても、感謝される度合いは5割減です。
 日本の国力が5割も落ちたということです。最近の物価上昇の、大きな原因です。コロナのおかげで あまり外国旅行ができませんが、今 旅行に出れば、9年前の5割も高くつくのです。安倍元首相の経済政策は とっくに破綻しているということです。それなのに、黒田 は「家計の 値上げ許容度が高まっている」などと言って 平然としています。円安 を喜ぶのは 大企業だけです。
 どんな組織も、トップが長期間 居座っていると、まわりはイエスマンばかりになり、政策変更ができなくなります。黒田総裁は、一刻も早く 退陣すべきです。こうしている間にも、日本の国力は どんどん落ちているのです。参院選を前にした野党の どれひとつとして これを主張しないのは、情けない限りです。  ( 2022 /06/ 21 )

●● 『 朝日デジタル 』の記事 9月3日 16時00分
日本円が「ジャンク通貨」に? ロシアや新興国通貨よりも価値下落
 「行きすぎた円安で円が ジャンク(がらくた)通貨化している」。日本銀行の政策を長年分析してきた「日銀ウォッチャー」で知られる、東短リサーチの 加藤出(いずる)チーフ エコノミストは、ドルに対して 24年ぶりの円安水準となる 140円台をつけたことを受け、円の現状に警鐘を鳴らした。「日銀の政策の影響で、私たちが ためてきたお金の対外(的な)価値が落ち、生活コストが上昇してきている」と述べ、日銀の政策の影響の大きさも指摘している。
 歴史的な 円安 ドル高水準にな……

●● 1ドルが、ついに 145円に なりました。このまま行けば、日本は破滅します。
10月8日の『 週刊エコノミスト Online 』には、
 「 藤巻健史氏「日銀は紙幣印刷所」、いずれ 円は 紙くず化する と あります。 
  ( 2022 /10/ 08 )


最近の読書  『 仏教大東亜戦争

鵜飼秀徳   植木等
鵜飼秀徳 著『仏教の大東亜戦争』2022、文春新書
植木等 著 『夢を食いつづけた男』2018、ちくま文庫

 評判の『仏教の大東亜戦争』を読みました。本の帯には 「なぜ 仏教は 国民を ”殺生”に 駆り立てたか」とあります。 著者の鵜飼秀徳 (1974- ) は ジャーナリストであるとともに、浄土宗 正覚寺の住職でもあるそうです。僧職者自身が 仏教界の最大のタブーに挑んだ、勇気ある著作です。たとえば 本の 119ページには、次のように書かれています。

「戦時中の仏教界の軍事支援は、「銃後運動」という間接的支援だけには留まらなかった。「はじめに」でも少し触れたが、宗門が主体的に、強力に戦争に関わった事例が、零(ゼロ)戦をはじめとする 軍用機、あるいは 軍艦の献納だ。仏教者が 殺戮の道具である兵器を造って納めることに、当人たちは何の罪悪感も持っていなかった」

 その次のページには、それぞれの教団が国に納めた 戦闘機の種類や台数などの表があります。曹洞宗、日蓮宗、天台宗、浄土宗、臨済宗、西本願寺、四天王寺、真言宗、浄土真宗本願寺 などが こぞって戦闘機を奉納し、真宗大谷派では なんと、軍艦建造のための多額の献金(一期だけでも、現在の金額に換算して25億円以上)を献金したという。日本の仏教が、「宗教」とは言えないところまで腐敗堕落した姿を、完膚なきまでに 調査、記録した書です。

 ただ この本の終わり近くには、戦争に協力しなかった 稀な仏教僧侶たちが 紹介されています。その一人が、『スーダラ節』や『無責任一代男』などを歌った歌手・コメディアンの植木等(うえき ひとし 1926-2007)の父親、植木徹誠(てつじょう 1895-1978)です。この「反戦僧侶」について植木等が書いた父親の伝記『夢を食いつづけた男, おやじ徹誠一代記』(1984) も読んで(古い本ですが、知らなかったので)たいへんに 面白く、また感心しました。

お知らせ・神谷武夫

 ところで、このHPの「古書の愉しみ」のサイトには、第42回として『原爆体験記』を採りあげて 載せてあります。ところが そのページは、何年も前から、グーグルや ヤフーで検索できなくなっています。いろいろ調べて推測したところ、次の部分のせいだろう とわかりました。

「この 原爆体験記の小冊子が出版されようとした時、原爆を投下して広島と長崎の数十万人の市民(非戦闘員)の命を奪うという「戦争犯罪」を犯したアメリカは、それを、戦争を終わらせるために必要だった と言って正当化し、原爆のもたらす悲惨さを最大限 包み隠そうとしていたため、GHQ(連合国軍総司令部)すなわち日本を占領する「進駐軍」は この小冊子を「反米的」として、すでに印刷・製本が できあがっていたにもかかわらず、これを配布させず、出版禁止処分にしたのでした。」

 つまり、アメリカによる原爆投下を「戦争犯罪」と書いていることが、「検閲」の対象となったようです。         

( 2022 /10/ 17 )

イスラームの建築種別ー12 「 種々の施設( タキーエ、 ハマーム )

チュニジア

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第 12回は『 種々の施設(タキーエ、ハマーム、ジャンタル・マンタル )』です。  イスラーム圏に建つ建物を すべてイスラーム建築と呼ぶなら、建築種別は なお多岐にわたります。ここでは、ややマイナーな種々の施設を概観しておきます。 修道場(ハーンカー)のことを トルコ語では テッケと呼びますが、テッケ あるいは、もとのアラビア語の タキーヤ(テキーエ)という呼称は、もっと幅広く用いられました。根本はスーフィーの修行所であっても、それぞれの教団(タリーカ)によって さまざまの機能が 付加されたのです。オスマン朝最大の君主スレイマンは、ダマスクスに シナンの設計で「スレイマンのテッケ」を建てました。これは修道場としてよりも、マッカへの巡礼の出発地における 巡礼宿としての機能が主でした。こうした巡礼宿としてのタキーヤも各地に建てられました。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『種々の施設』の項に跳びます。   ( 2022 /10/ 01 )


住所と 電話番号を騙(かた)る 悪い人間

●● 神谷一博(かずひろ)という人がいて、その人が自分の住所と電話番号を 私のものと同じにして、世の中に公表しているらしい。 一昨日、近くの郵便局の配達課から 私に電話があり、私のところに 神谷一博という人が同居していないかどうか と訊かれました。 そんな人は いないし、知り合いにも いないと答えると、その人宛てに、私の住所で小包が届いているというのです。 郵便局が不審に思い、差出局のほうに連絡をとりました。 差出局が 差出人に問い合わせたところ、受取人の電話番号は こうだから、そこに電話してほしい と言われたらしい。で、連絡を受けたこちらの郵便局が その番号にかけたところ、私の家に かかってきた というわけです。
 ともかくその小包は宛先不明ということで返送してもらうことにすると、今度は差出人から電話がありました。 神谷一博の母の神谷清子(きよこ)だと言います。 息子から、現在の住所と電話番号を このように教えられているので、息子に、その住所宛てに ブドウを送ったのだと言うのです。今回私に迷惑をかけたから、このブドウを また送るので、私に食べてほしいと言う。 見ず知らずの人から 食べ物をもらって 食べるわけにはいかないと、断りましたが、もしかすると、それは 毒入りのブドウかもしれない。
 こういうことをさせているのは フジテレビかもしれません。この「お知らせ」欄に『フジテレビの犯罪行為』という記事を載せてからというもの、スペインとシンガポールから 英語のメールが来ました。 どちらも、自分の出版する本に、私の HP にある写真(『武士の娘』の表紙の写真など)を使わせてほしい、金は払う、と言うのです。 どちらのメールも、インチキ・メールだということは すぐ解ります。 手を変え 品を変えて、『フジテレビの犯罪行為』の記事を つぶそうとしているようです。神谷一博という人が 実在するのかどうかは、わかりません。 さらに何を 企んでいるのかも。 あるいは、神谷清子と名乗る女の一人芝居でしょうか?  ( 2022 /08/ 16 )

イスラームの建築種別ー11 「 市場( バーザール、スーク、チャルス )

市場

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第 11回は『 市場(バーザール、スーク、チャルス )』です。 イスラーム圏では モスクの周囲に店舗群が伸びて 市場を形成するのを常とします。市場のことを ペルシア語でバーザール、アラビア語でスーク、トルコ語でチャルシュと言います。バーザールの語は最も広く用いられ、都市近郊の農家の人々が 野菜や果実を広場に持ち寄って開く定期市から、建物に固定された屋内市場にいたるまで バーザールと呼ばれます。スークの語は どちらかというと屋根つきの店舗街をさして用いられることが多いようです。日本の駅前商店街に屋根がかけられると アーケードと呼ばれることが多いですが、スークがその元祖だと言えましょう。日本では 雨を避けるのが主目的であるのに対して、スークでは 日除けが主なので、モロッコでは よしずやテントのような屋根をかけることも多い。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『市場』の項に跳びます。   ( 2022 /09/ 01 )



●● 安倍 元首相を「国葬」にする などということには、絶対反対です。 ( 2022 /07/ 20 )

INTERMEZZO
ブハラ
暑中お見舞い申し上げます( ウズベキスタンより 愛をこめて)

● 今月は夏休みなので、新しい記事は ありません。 そのかわりに 映画のDVDの紹介をします。 特にテーマはありませんが、バラエティに富んだ映画を6本です。 映画の制作順に並べます。    ( 2022 /08/ 01 )



終電車

● 『 終電車1980年(仏)監督・脚本:フランスワ・トリュフォ (1932-84),主演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、ハインツ・ベンネント
 フランスのヌヴェル・ヴァーグを ゴダールとともに代表する監督 フランスワ・トリュフォは、若い時の実験的な作品から次第に円熟し、晩年に作った代表作『隣の女』と『終電車』で、三面記事的な情痴ドラマを ギリシャ悲劇のような芸術作品へと昇華させました。『終電車』は、パリがドイツに占領されていた時代、ある劇場の男と女の俳優の物語です。当時流行していたシャンソン、リュシエンヌ・ドリールの歌う『サンジャンの私の恋人』がテーマ音楽です。



東京裁判

●『 東京裁判1983年(日)監督:小林正樹 (1916-96),ナレーター:佐藤慶,音楽:武満徹,企画・製作:講談社,2018年 デジタルリマスター版、DVD2枚組
 25年の秘匿期間を経て、1983年にアメリカ国防総省から公開された 延べ 170時間もの裁判記録フィルムを元に編集された、極東国際軍事裁判を描いた4時間半のドキュメンタリー映画です。判決は、東条 英機以下 死刑7人、終身刑16人でした。天皇が被告にされなかったのは、裁判官の判断ではなく、アメリカとGHQの意図でした。そうした全てを含め、偏りのない、客観的で公平な記録です。アメリカ人弁護士が、米国の原爆投下まで持ち出して被告の無罪を主張していたのは驚きです。インドの パル判事の意見書も出ます。



ルオマの初恋

●『 雲南の少女、ルオマの初恋 2002年(中国)監督:章家瑞 チアン・チアルイ (1958- ),主演:李敏 リー・ミン、ヤン・チーカン
 『ルオマの初恋』は、『初恋のきた道』、『 小さな中国のお針子』と並ぶ、中国の三大初恋映画のひとつ。 中国の南西部、ビルマに近い雲南省の山奥の小さな町にも、北京の都会人がやってきます。かつての日本の奥地のような、棚田が山を埋め尽くす ハニ族の美しい山村で、村人が伝統的な農業に はげむ中、都会にあこがれるルオマの心情を描いた、静かな、ほろりとさせる映画です。



Tomorrow

●『 Tomorrow パーマネントライフを探して2015年(仏) 製作・監督:シリル・ディオン (1978- ) 共同制作:メラニー・ロラン、(ドキュメンタリー)
 『ネイチャー』誌に21人の科学者グループが論文を書いて、「人類は絶滅する恐れがある」と主張しました。気候変動による地殻の破壊と 人口増加が、人類を破滅へと導くと。これに政治家たちは反応しませんでしたが、フランスの映画人たちが、世界の さまざまな地で 現在のシステムを変えるべく 行動を起こしている 人や自治体や国を訪ねて 旅をします。その明るいタッチが受けたのか、フランスで120万人が見たといいます。限られた長さの映画で 個々の活動のすべては 理解できませんが、多くのサジェスチョンが得られます。シリル・ディオンは環境活動家・作家・映画監督で、この映画のあと『未来を創造する物語: 現代のレジスタンス 実践ガイド』という本を書いています(丸山亮・竹上沙希子共訳、2020, 新評論)。 メラニー・ロランは、映画『オーケストラ』で ヴァイオリニストを演じた女優です。予告編は こちら



彼らが本気で

●『 彼らが本気で編むときは、2017年(日) 監督・脚本:荻上直子, 1972- ),主演: 生田斗真、柿原りんか,桐谷健太
 トランスジェンダーの家族をテーマにした映画ですが、「家族」については 誰でも苦しい思い出や 遣り切れない思い出をもっていることでしょう。それを、ある特殊な家族関係の中で描いています。荻上直子(おぎがみ なおこ)監督の作品は初めて見ましたが、たいへん才能のある 優れた監督です。その わざとらしさのない画面作りに感心しました。俳優陣もよい、特に子役の 柿原りんか に好感。題名は、取って付けた感じですが。



沖縄

●『 沖縄 うりずんの雨2019 年(日) 監督:ジャン・ユンカーマン (1952- )
 アメリカ人映画監督のジャン・ユンカーマンが 沖縄の戦後史を描いた、2時間半のドキュメンタリーです。第1部「沖縄戦」、第2部「占領」、第3部「凌辱」、第4部「明日へ」という構成です。「うりずん」というのは「うるおいぞめ」が語源で、春3月から梅雨にはいる5月くらいまでの時期をさす言葉で、県民の4人に一人が死んだ 沖縄の地上戦の季節と重なるそうです。一体 いつになったら、政府は 沖縄県の基地負担を半減させるのでしょうか。 予告編は こちら

( 2022 /08/ 01 )



フジテレビというTV局
「古書の愉しみ」の『武士の娘』の画像について

画像

● 私はテレビを見ませんし、テレビ受像機も持っていませんが、フジテレビというのは、視聴率のために ずいぶんと いかがわしいこともするTV局だという噂は よく聞きます。今回、それを実際に体験しました。

● 昨年(2021年)の 9月6日に、テレビ番組の制作をしているという、トリックスターの川中子という人から メールが来ました。

「この度、弊社にて BSフジ『日本史の新常識7』という番組を制作しており その中で今回、杉本鉞子を取り上げることとなりまして、 神谷さまのサイト内の 杉本鉞子『武士道』の画像をお借りしたく思いご連絡させていただきました。 http://www.kamit.jp/15_kosho/28_etsu/etsu.htm  こちらを テレビ番組で使用させていただくことは 可能でしょうか?」

と問われたので、 「可能です。」 と、メールで返事をしました。

● しかし、どの画像を、どのような条件で、どのように使いたい という連絡が来ると思っていましたが、いつまで経っても 何も来ないので、結局 使うのをやめたのだろうと思っていました。 ところが、それから半年後の 2022年(つまり今年)、3月17日に、トリックスターの吉留という人から突然 次のようなメールが来たので、たいへん驚きました。

「番組制作会社トリックスターの吉留(ヨシドメ)と申します。今回、BSフジ「日本史の新常識 第7弾」が4月16日(土)に再放送が決定致しました。前回の放送で神谷様から提供して頂いた武士の娘の画像を再度使用したくご連絡致しました。再放送の際に、申請の手続きなど必要になりますでしょうか。」

● 翌日私は、何がなんだか わからないので、ともかく

「どういう使い方をしたのかわかりません。
きちんと出典が入っていたのでしょうか」

とだけ、返事をしました。 というのは、本の場合でも ウェブの場合でも、通常、無断で使用されても、出典さえ書いてあれば、容認することにしているからです。

● 5日後の3月22日になって、トリックスターの吉留からメールが来ました。

「前任者(川中子)に神谷様との画像提供に関するメールを確認致しました。画像の使用許可は頂いておりましたが、出典表記の確認の際、神谷様からご返信がなかったので、出典表記を無しで放送を致しました。 また画像の使用方法としましては BSフジ スペシャル番組「日本の新常識 第7弾」の番組MCである歴史学者 河合敦先生が海外で活躍した日本人として杉本鉞子様を紹介したく番組で取り上げさせて頂きました。
BSフジにて4月16日(土)20時~21時55分で再放送を致しますので、武士の娘の画像を再度使用させて頂きたく思います。」

● 私に使用許可をもらったとか、画像を提供してもらった、などと デタラメを言い、いったい、いつの放送で使ったのかさえ 書いてありません。 やむなく翌3月23日に、次のような返事をしました。

「私は、トリックスターの川中子さんから、 「神谷さまのサイト内の杉本鉞子『武士道』の画像をお借りしたく思いご連絡させていただきました。 http://www.kamit.jp/15_kosho/28_etsu/etsu.htm  こちらをテレビ番組で使用させていただくことは可能でしょうか?」 と訊かれて、「可能です。」と答えましたが、何かを許可した覚えは、まったくありません。
どの画像を、どのような条件で、どのように使いたい という連絡が来ると思っていましたが、何も来ないので、結局使うのを やめたのだろうと思っていました。
私はTVを見ませんし、TV受像機も持っていません。 いったい、どこのTV局がこのようなことをさせたのか、教えてくれませんか?」

● すると3月24日、今度はトリックスターの宮麻美(みや あさみ)という人から、次のようなメールが来ました

「私、番組制作会社(株)トリックスターの宮と申します。弊社の川中子、吉留の両名より画像使用に至るまでの経緯報告を受けご連絡をさせて頂きました。
該当画像に関して『使用可能』という神谷様からのメールのお返事を当方で 『使用許可を頂いた』と勘違いし放送をしてしまい大変申し訳ありませんでした。また、画像の使用方法や放送日など詳しい説明もなく 大変不躾なお問い合わせをしたこと重ねてお詫び申し上げます。
放送しているのはBSフジになりますが、当番組は弊社で全制作過程を担当しておりますので全て弊社の責任でございます。」

● これは「著作権の侵害」です。犯罪行為 です。たとえ下請けの会社が製作したとしても、放送責任は、制作依頼と内容チェックをして 放送した テレビ局にあります。同日の 私の返事は、

「BSフジという会社の、本件に関する責任者と担当者の連絡先(名前、住所、電話番号)をお知らせください。」

● それから4日たった3月28日に(じっくり フジTVと相談していたのでしょう)トリックスターの宮からメールが来ました。

「 先日ご連絡頂きました放送局の責任者の名前や連絡先を提示する件ですが、当企画は放送局より業務委託を受けている弊社(トリック スター)の制作物であるとことから、弊社が神谷様へ誠意をもってご対応をさせて頂く次第でございます。
また、本件のことを深く反省し4月16日(土)に予定をしておりました 当番組の再放送は中止とさせて頂きました。

● それから10日以上経っても、何の連絡もありません。フジテレビというのは、いつも こういう番組作りをしているのでしょう。誤った放送をすれば、全て下請けの会社の責任にして、自らは何の責任もとらず、謝罪もせずに、知らぬ顔をしているのでしょう。ちょうど 政治家が悪いことをしても、すべて秘書がやったことで、自分は何も知らないと、ほおかぶりするのと同じです。フジTVは、娯楽番組だけでなく、報道番組でも同様のことをやっていると思われます。フジTVの報道番組など、絶対に 信用してはいけません。      ( 2022 /04/ 08 )



イスラームの建築種別ー10 「 公共施設 複合体( キュリエ )

キュリエ

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第 10回は『 公共施設 複合体(キュリエ)』です。 イスラーム圏においては、住民の福祉のための公共施設の建設が 中世から盛んでした。学院や病院、公衆浴場や隊商宿、市場や救貧院、水路や給水所など、市民が社会生活を営むうえで不可欠の施設が、他のどんな文明よりも 多く見られます。キリスト教では 教会が学校や病院を併設することがありましたが、イスラームには教会制度がないので、モスクが そうした施設の出資者となることはありません。では 何が かくも多くの施設を可能にさせたかというと、それは ワクフ と呼ばれる 寄進制度 です。王侯貴族に限らず、個人の資産のある人なら誰でも、その私財や収益を 慈善的目的に用いるために 一種の財団を設立し、私権を永久に停止、放棄することができました。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『公共施設 複合体』の項が、別のウィンドウに出ます。    ( 2022 /07/ 01 )


プーチンは、帝政ロシア時代の ニコライ1世の亡霊か?

 ●● ウクライナ 頑張れ!  ●● ゼレンスキー大統領 頑張れ!

この事変は、プーチンの死をもって終わるほかない ような気がします。
それが自殺であるか 暗殺であるかは わかりませんが。
ただ私には この事変が、かつて日本が引き起こした満州事変のようだという思いが . .

というのは、日本政府は「力による一方的な現状変更を許さない」と、いつも言っていますが、かつて中国や朝鮮で 大々的にそれをしたのは 日本です。 ロシアがウクライナでやっているような、中国・朝鮮民衆への大殺戮・虐殺もしました。 それについての謝罪の心をもたず、戦前の日本の行為を正当化しようとする日本政府・自民党の姿勢・意識は、現在のロシアと似たようなものです。
 日韓関係の これほどの悪化も、そうした安倍元首相や「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」などの なしたことです。 中国・韓国侵略の戦犯を合祀する靖国神社に参拝して、韓国・中国の人々の神経を 逆なでし続けるのでなく、きちんと謝罪の意識を持ち続けて 行動していれば、「慰安婦問題」も「元徴用工問題」も、起こらなかった とまでは言えないにしても、国家関係を左右するほどの運動にはならなかった、民衆が それに賛同しなかった、と思います。 
 自分(日本)のことを棚に上げ、ただ正義漢風に ロシアを非難している言論には、少し違和感があるのです。    ( 2022 /05/ 25 )


大川周明の 『 回教概論 』と『 古蘭

大川周明

● 『古書の愉しみ』の第55回は、大川周明 の『 回教概論 』と『 古蘭 (コーラン)』です。日本で最初にイスラーム教の詳しい概説書を書いたのは、大アジア主義者で、大正、昭和時代における右翼の巨頭、大川周明だと聞いたら、誰でも意外に思うことでしょう。大川周明 (1886-1957) というのは、前回の「古書の愉しみ」で書いた東海散士(柴四朗)と 思想的、政治的に目指したところが似ていますが、年代的には 散士よりも35年ほど後の人で、東海散士が明治を体現したような人であるのに対し、大川周明は 大正時代から昭和戦前に多岐な活動をし、影響力の大きな著作をした人でした。「東京裁判」を生き延びた戦後の晩年には、若き日の志向を再燃させて イスラーム研究にうちこんだのです。 ここをクリック すると「古書の愉しみ」のディヴィジョンの「『回教概論』と『古蘭』」のページが 別のウィンドウに開きます。    ( 2022 /06/ 01 )


イスラームの建築種別ー9 「 病院( ビーマーリスターン )

病院

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第9回は、『 病院( ビーマーリスターン、ダールアッシファー) 』です。 ペルシア語で病人のことをビーマールということから、ペルシア語のビーマーリスターン、あるいはマーリスターンが 病院をさす言葉として イスラーム圏で最も広く用いられます。アラビア語ではダール・アッシファーと言いますが、トルコでは ダーリュッシファー、あるいは ビマルハネ の語を用いました。建築的に保存のよいものは シリアのアレッポ(アルグン)や ダマスクス(ヌール・アッディーン)のビーマーリスターン、トルコのディヴリーイやエディルネ(バヤジト2世)のダーリュッシファーです。そのうち、ダマスクス以外の3つが精神病院(癲狂院)であったというのは驚きで、中世において精神病者を 狂人として抹殺するのでなく、病院で治療しようとしていた点において、ヨーロッパよりも ずいぶんと進んでいました。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『病院』の項が、別のウィンドウに出ます。    ( 2022 /05/ 01 )

イスラームの建築種別ー8 「 浴場( ハンマーム )

浴場

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第8回は、『 浴場(ハンマーム) 』です。 イスラームの都市や建築に欠かせない要素に、浴場があります。身体の清潔を重んじたイスラームでは、とりわけ礼拝の前に体を浄めるべきことを『クルアーン』は繰り返し説いていて、それは モスクの中庭の 浄めの泉 となりました。浴場の施設は、ムスリムが征服していった 古代ローマ領地の各地に見出し、その方式を採り入れたと考えられます。大規模なもののほかに、色ガラスを嵌めたトップライトがちりばめられた小規模なドーム屋根の並ぶ ハンマーム は、スペインからインドまで、ハンガリーから中国まで いたる所にあり、イスラーム諸国では 今も銭湯として使われています。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『浴場』の項が、別のウィンドウに出ます。    ( 2022 /04/ 01 )




原智恵子

●● ピアニストの 原 智恵子 (1914 -2001) と言っても、知る人はあまり多くないでしょう。私も ほとんどまったく知りませんでした。彼女は天才的ピアニストと謳われて13歳でフランスにわたり、パリ音楽学校のピアノ科を首席で卒業し、1937年に日本人として初めてショパン国際ピアノコンクールに出場して「特別聴衆賞」を受賞、ヨーロッパと日本で多くのリサイタルを行いました。しかし日本の音楽界からは無視され、締め出されて、もっぱらヨーロッパで活躍。中年になって、カザルスと並ぶ世界有数のチェリスト、ガスパール・カサド と結婚、「デュオ・カサド」として世界中を演奏旅行しました。
 最近、何がきっかけだったか 原智恵子のことを知り、本を読んだり、数少ないCDを聴いたりしています。特に 石川康子が書いた伝記『 原智恵子、伝説のピアニスト 』(2001、KK ベストセラーズ、ベスト新書)が非常に興味深く、クラシック音楽と ピアニストについて興味のある方には お薦めです。    ( 2022 /04/ 07 )

東海散士(柴 四朗)の 『 佳人之奇遇

回教概論

● 今回の「古書の愉しみ」第 54回は、初めて「和本」を採り上げます。手彫りの「木活字」(もっかつじ)で 和紙に印刷し、糸で「和綴じ」にした、今から 130年以上前の、明治時代の本です。しかも、見開きの細密な 石版画リトグラフ)が 全部で 40枚も挿入された「挿絵本」でもあります。木活字の書体も美しく、主に 西洋古書を紹介してきた「愛書家」にとっても、なかなかに 魅力的な古書です。ずいぶん長い章になりましたが、 ここをクリック すると「古書の愉しみ」のディヴィジョンの『 佳人之奇遇 』のページが、別のウィンドウに開きます。  ( 2022 /03/ 01 )

イスラームの建築種別ー7 「 隊商宿( キャラバンサライ、ハーン )

隊商宿

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第7回は、『 隊商宿(キャラバンサライ、ハーン) 』です。 かつて シルクロードに代表される交易路が、イスラーム圏各地を 網の目のように結んでいました。鉄道のできる以前、大量の荷を積んで長途の旅に耐える動物は、まずラクダ、そしてラバ、馬でした。盗賊団から身を守るために、護衛つきの 数十頭から数百頭の隊伍を組んだ隊商(キャラバン)は 一日に平均 30キロを行進します。町と町の間には、彼らが安全に宿泊できるよう、30キロおきに 隊商宿(キャラバンサライ)が必要でした。また、終着点の都市内のものは、「ワカーラ」や「フンドゥク」とも 呼ばれました。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『隊商宿』のページが、別のウィンドウに開きます。    ( 2022 /02/ 01 )



いよいよ第3次世界大戦か?

新型コロナ感染者の死者も、1日で 322人となりました。

狂言 「鉢叩」より
何事も 皆偽りの世の中に 死するばかりぞ 誠なりける
あれを見よ 鳥辺の山に立つ煙 立ちつづけても 立たぬ日もなし
あだし野の 露は はかなき たとえなり 露にも劣る人の命ぞ
思えば 浮世は 夢の世ぞかし

   ( 2022 /02/ 23 )


謹賀新年 2022

年賀状

今年は 大晦日の夜から バッハの『フーガの技法』を聴きながら
新年を迎えました。 ベルリン古楽アカデミーの演奏による DVDです。



● 年の初めは 新しい記事の代りに、映画のDVDの紹介です。 今回は 異色の内容の映画を6本。 制作年度順に並べます。  ( 2022 /01/ 01 )



ブラック・ムーン

●『ブラックムーン1975年(仏・伊)監督・脚本:ルイ・マル (1932-95) ,主演:キャスリン・ハリスン、ジョー・ダレッサンドロ、テレーズ・ギーズ
 現代のフランス (?) なのに、ひとりの女が車で街道を走っていると、パルティザンたちが兵士に処刑されている地に入り込み、とある屋敷に逃げ込むと、そこには老婆が寝ていて、奇妙な出来事が 次から次へと脈絡なく起こり、一角獣(ユニコーン)まで現れて、論理的帰結なしに幕を閉じる という、ルイ・マルの 唯一の シュルレアリスムの映画です。 発想のもとは、15世紀のフランスのタペストリー『貴婦人と一角獣』であったでしょう(パリ中世美術館蔵)。フランス映画ですが、セリフは英語です。



SHOAH

●『 SHOAH ショア1985年(仏)製作・監督・編集:クロード・ランズマン (1925 -2018) , DVD 4枚組, 全567分
 もと『レ・タン・モデルヌ』の編集長で、映画監督となったクロード・ランズマンが製作した、ナチのトレブリンカ収容所や ワルシャワ・ゲットーなどについての証言ドキュメンタリーで、生還したユダヤ人、元ナチスの親衛隊員、ガス室の近くに住んだポーランド人等の証言を、ひたすら録音し、撮り続けました。殺戮ガス室の廃墟の映像や、証言者の隠し撮りフィルムなども映されます。人間というのは、よくも これほど残酷なことができるものだと、フランクルの『夜と霧』(みすず書房)を読んだ時と同じ衝撃を おぼえます。カラー・ワイド作品ですが、劇的構成ではなく、音楽も一切ありません。殺戮場面が出てくるわけではないですが、見るのがつらい、9時間半の長さの映画です。



コーリャ

●『 コーリャ 愛のプラハ(チェコ)1996年,監督:ヤン・スヴェラーク(1965- ),主演・脚本:ズデニェク・スヴェラーク,原案:パヴェル・タウセック
 チェコの名優 ズデニェク・スヴェラークが主演するばかりか、その映画の脚本を書き、その息子のヤン・スヴェラークが監督して作った映画です。1989年にビロード革命で 共産党支配体制が崩壊する直前のプラハで、もと交響楽団の名チェリストだった55歳のロウカが 種々の雑仕事で かろうじて生計を立てているところへ、西側に脱出したいロシア女性との偽装結婚の話が舞い込み、その報酬につられて承諾したはよいが、女性は5歳の子供 コーリャを残して失踪。残された子供と初老の音楽家の二人暮らしは どうなるのでしょうか?



アフガン

●『 アフガン零年(アフガニスタン・日本・アイルランド)2003年,監督・脚本:セディク・パルマク Siddiq Barmak,主演:マリナ・ゴルバハーリ
 タリバン支配下のアフガニスタンの一家と その少女の悲惨な物語です。私はイスラーム諸国の建築調査をして 各国に撮影旅行をしてきましたが、アフガニスタンとイラクだけは、とうとう行くことができませんでした。一時的に政権が崩壊した時に わずかな地を訪ねることはできたでしょうが、私はその国の主要な建築作品をすべて訪ねるのを原則にしているので、それでは私の目的は達せられません。2000年代の初めに アフガ二スタンは アメリカによって タリバンの圧政から解放され、その時期に作られたのが この映画ですが、アメリカ軍は平和を達成することはできず、ベトナム戦争のような泥沼に陥りました。ついに昨年 アメリカ軍が全面撤退をすると、とたんにタリバンが全土を制圧して、元の木阿弥と化しました。



92才の

●『 潜水服は蝶の夢を見る2007年(仏) 監督:ジュリアン・シュナーベル (1951- ) 主演:マチュー・アマルリック、エマニュエル・セニエ、マリ=ジョゼ・クローズ、原作:ジャン=ドミニック・ボービー『 潜水服は蝶の夢を見る 』(1998 講談社)
 フランスの有名なファッション雑誌『エル』の元編集長 ジャン=ドミニク・ボビーは、42歳の時 突然 脳幹出血で倒れ、まるで「潜水服に閉じこめられて海に沈められた」かのような全身不随になってしまいます。右目がふさがれ、しゃべることもできず、手足を動かすこともできずに、ベッドに寝たきりになります(ロックト・イン・シンドローム)。幸いなことに脳は大きな損傷をうけず、思考することができるので、蝶になることを夢見ながら、本を一冊書くことになります。いったい どうやって? 苦闘の体験を、ユーモアを交えて書いた原作が 映画になりました。



92才の

●『 92才のパリジェンヌ2015年(仏) 監督・脚本:パスカル・プザドゥー (1970- ) 主演:サンドリーヌ・ボネール、マルト・ヴィラロンガ、原作:ノエル・シャトレ
 老いた母から、「今まで愛する家族に囲まれて 充実した人生を送ってきました、ありがとう。でも、もう体が どんどん老化して、自由がきかず、できないことが増えてきました。私は2か月後に あの世に旅立ちます」 と言われたら、あなたなら どうしますか? その2ヵ月間の家族のドタバタと、親子の情愛、人生の哀感を、女流監督が優しく、しっとりと描いています。原題は "Dernière Leçon" (最後の授業)で、リオネル・ジョスパン 元フランス首相の母、ミレイユの尊厳死を、娘で作家のノエル・シャトレが描いた小説が 原作です。

( 2022 /01/ 01 )

イスラームの建築種別ー6 「 王侯の廟( クッバ、グンバト )

王侯の廟

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第6回は、前回の『聖者廟』と対をなす 『 王侯の廟(クッバ、グンバト ) 』です。王侯の廟は国家の記念造営物ともなり、潤沢な予算と有能な建築家の手によって、高度な建築作品 へと昇華します。本来のイスラーム建築の内向性や皮膜的建築の性向に対して、中央アジアからインドにおける 外観重視の建築 への欲求が、東方イスラーム圏における廟建築の大発展を もたらしました。ティムール朝の『グーリ・アミール廟』や ムガル朝の『フマユーン廟』、そして『タージ・マハル廟』と、幾多の傑作を生みました。これらは二重殻ドームで作られ、モニュメンタリティを いっそう強めています。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『王侯の廟』の項が、別のウィンドウに出ます。    ( 2021 /12/ 01 )



会社人間
この絵は「転職ナビ」より借用

● 大学を出て企業に就職した若い人たちが、じきに 会社命令で、あるいは 自ら上司に迎合して、素面で嘘をつくようになる姿を見るのは、心が痛むことです。資本主義社会においては、それは避けられないことなのかもしれませんが、それを乗り越えたはずの「社会主義」あるいは「共産主義」の国が 却って、より ひどい「抑圧社会」あるいは「密告社会」になってしまうというのは、もっと やりきれないことです。
 「会社人間」も 初めのうちは、嘘をつくごとに「良心の痛み」を感じるのでしょうが、次第に平気で嘘をつくようになり、保身のために「信実」を失っていきます。
 現在 日本では「引きこもり」の若者が数十万人もいて、また新卒者の 10人に1人は 入社後 わずか1年たらずで退社してしまうそうです。学生時代には「誠実な生き方をしたい」、「世の中の役に立ちたい」と思っていたのが、営利企業に就職した途端に、欺瞞に満ちた制度や圧力に奉仕することになり、それが耐えられなくなって 退社したり、引きこもり(ミザントロープ)になったりする人の割合が、ある程度を占めるのではないかと思われます。とりわけ、心の繊細な人や、理想を胸に抱くような人は そうでしょう。
 会社員が、これは単に仕事のためだと 割り切って 嘘をついていても、それが積み重なるにつれ、心の深いところで「人間性」を損なっていくのです。そして 新聞やテレビで見る 世の中の悪事や 政治家の嘘にも、不感症になっていきます。政治的にも保守的になり、若い 革新的な気概を 失っていくのです。 若者が自分の良心を保っていくには、どうすればよいのでしょうか。 成熟した大人が、良心的な行動の手本を 見せて行く以外に ないでしょう。   ( 2021 /11/ 17 )

イスラームの建築種別ー5 「 聖者廟( マザール、ダールガー )

聖者廟

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第5回は、『 聖者廟(マザール、ダールガー ) 』の項です。イスラーム建築において、モスクに次いで幾多の名作を生んだのが墓廟建築です。墓の上に屋根をかけたものを廟とよんでいますが、東方イスラーム圏においては、金曜モスクよりも壮大に、豪華につくられたものが少なくありません。廟には2種類あり、聖者信仰による参詣(ジヤーラ)の対象としての聖者廟は 宗教建築とみなせますが、王侯貴族の権威づけや顕彰のための廟は世俗建築です。しかし両者のあいだに スタイルの区別はなく、しかも モスクやマドラサとも ほとんど同じ語彙によって組み立てられるので、王侯の廟でさえも 宗教建築のような姿をしています。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『聖者廟』の項が、別のウィンドウに出ます。    ( 2021 /11/ 01 )

日本大学付属病院の 設計・工事をめぐる不正

日大不正
(この図表は、東京新聞 Tokyo Web, 2021年10月10日の記事より転載)

● こういう事件が起きて、新聞やテレビで連日大きく報道されることによって、「設計事務所」のイメージが 世の中に定着していくのです。 建物施設の設計は「建築家」に依頼するものだという認識には なりません。「建築家」という言葉は 一言も出てきません。 設計をするのは「設計会社」であり「設計業者」であると。 そして「営利業者」である「設計会社」は 不正や悪事にも加担するものだと。 いったいこの国では、いつまで「建築家」という倫理的な プロフェッション の確立に反することばかりを しているのでしょうか。 いつまでも、設計事務所が 株式会社に なっているのは おかしい と 認めないのでしょうか。・・・ 詳しくは、本 HP の、『 あいまいな日本の建築家 』を お読みください。   ( 2021 /10/ 10 )

『 ブルガリアイスラーム建築 』

ブルガリア

● 2018年に 丸善出版から、翌年の 2019年秋に出版する予定の『 東欧文化事典 』(編集代表:羽場久美子・青山学院大学教授)という本に、標記の原稿を依頼されました。翌年春に原稿を送りましたが(マフィアによる妨害も あったりして)、編集は遅れに遅れ、編集担当者も交替し、本の題名も『 中欧・東欧文化事典 』と変更になり、2021年9月になって、やっと本ができたようです。しかし執筆者は大勢なので、出版社としては 一人一人に本を支給することは できないと言います。「抜き刷り」さえも 送ってきません。雀の涙ほどの原稿料よりも はるかに高い値段の本を買う気はないので、私は まだ本の現物を見ていません。私の原稿の内容は、この HP上の『 東欧のイスラーム建築 』のダイジェスト版といった趣の 短文ですが、『世界のイスラーム建築』のサイトの「イスラーム建築の名作」のディヴィジョンに載せておきます。 ここをクリック すると『イスラーム建築の名作』のディヴィジョンの中の、「ブルガリアのイスラーム建築 」のページが 別のウィンドウに開きます。    ( 2021 /10/ 01 )



オカムラ

● 今から8年前(2010年)に、新しい 椅子 を買いました。自宅と事務所をひとつに まとめた後なので、できるだけ多用途で安楽な椅子をさがし、結局 オカムラ(昔は岡村製作所といった)の、黒革の エルシオ ERCIO にしました。最後の椅子と思ったので 金を惜しまず (?)、20数万円だったと思います。重いことと、座に シワ ができてしまうこと以外は、まあ満足していましたが、今年になって重大な故障がおきました。それは、背もたれ が、前に倒れてしまうのです。「不良品」をつかまされた結果だったのですが、オカムラは その責任をとろうとしません。  ここをクリック すると「無責任企業・オカムラ」のページにとびます。  ( 2018 /12/ 14 )

●● とうとうオカムラの椅子「エルシオ」を処分し、新しい椅子を購入しましたので、そのことを付け加えました。  ここをクリック してください。    ( 2021 /07/ 19 )

イスラームの建築種別ー4 「 修道場( リバート, ハーンカー )

修道場

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」のディヴィジョンの 第4回は、『 修道場(リバート、ハーンカー) 』の項です。修道場の起源と考えられるのはリバートで、イスラームの大征服時代に、征服地を統治するための 軍営都市(ミスル)が建設され、前線には 信仰の戦士が 異教徒との聖戦(ジハード)を遂行するための砦が築かれました。戦士と軍馬のための こうした砦を 北アフリカでは リバートと呼び、ローマの駐屯都市に倣って、半円形の櫓を並べる 強固な壁で囲った中庭型の建物としました。修道場が より鮮明に宗教施設となるのは、スーフィズムの発展に負っていて、それぞれの教団(タリーカ)が 修道場を設けるようになります。これをアラビア語で ザーウィヤ、ペルシア語で ハーンカー、そしてオスマン朝のトルコでは テッケと呼びました。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『修道場』の項が、別のウィンドウに出ます。    ( 2021 /09/ 01 )

INTERMEZZO

アルメニア
暑中お見舞い申し上げます(アルメニアより 愛をこめて)

● 新型コロナが猖獗(しょうけつ)をきわめ、感染者が 連日1万人を超えるというのに、自民党・公明党政権は 国民の命よりも オリンピックのメダル獲得競争といった 愚行を重視して、世論の反対を押し切ってまで、連日 お祭り騒ぎをしています。いったい 彼らの頭は どうなっているのでしょうか? 腐りきっているのでしょうか?

●● 今月は夏休みなので、新しい記事はありません。そのかわりに映画のDVDの紹介をします。今回は欧米の古い映画3本と、アフリカを舞台にした映画を3本です。映画の制作順に並べます。    ( 2021 /08/ 01 )



わが谷は

●『 わが谷は緑なりき1941年(米)監督:ジョン・フォード (1894-1973),主演:ウォルター・ピジョン、モーリン・オハラ,原作:リチャード・レウェリン
 今から 80年も前に作られた モノクロ・スタンダードのアメリカ映画で、昔のイギリスのウェールズ地方の炭鉱町における一家族、男は皆 炭鉱夫だったモーガン家の人々の変遷を描いたイギリスの小説を、名匠 ジョン・フォード監督が『怒りの葡萄』 (1940) に続いてメガフォンを取った傑作。原題は "How Green was my Valley" で、一家の末っ子 ヒューの語りで物語が進行します。アメリカ映画というよりは ヨーロッパ映画と言ったほうがよい、歴史的名画です。



秘密と嘘

● 『 秘密と嘘1996年(英)監督:マイク・リー (1943- ) 主演:ブレンダ・ブレッシン、マリアンヌ・ジャン=バプティスト,カンヌ国際映画祭で パルム・ドール受賞。
 ある日、ロンドンの下町で暮らす中年の庶民女のシンシアに、昔 若い時に生み落として、すぐに養子に出したまま 一度も会ったことのない、彼女の娘だと称する若い女から、一度会いたいという、晴天の霹靂(へきれき)のような電話が かかってきます。ここから生まれる 驚愕、懐疑、罪の意識、嘘、家族関係のトラブルや 心の変転などを描いた、深みのあるコメディです。今から 25年前の映画ですが、 監督と俳優たちが、脚本なしに、話し合いと即興の堆積で作ったという、信じがたい作品です。



アメリ

●『 アメリ1998年(仏) 監督・脚本 : ジャン=ピエール・ジュネ (1953- ) 主演:オドレイ・トトゥ, マチュー・カソヴィッツ, セルジュ・メルラン、音楽:ヤン・ティルセン。
 原題は「アメリ・プーランの数奇な運命」 最初に偶然にテレビで見て その面白さに驚き、そこでビデオを買って見て 一層 感心し、後にDVDを買って 何度も見ました。この大ヒット 作品の骨子は ひとえに、才気あふれる監督の「機知」と、映画作りの「策謀」にあるでしょう。こんなに面白い映画は めったにあるものでないと言えます。細部に至るまで たくらみに満ちたコメディです。とびきり美人というわけではない オドレイ・トトゥに、「カフェ・デ・ドゥ・ムラン」で働く 内気で ひょうきんな娘 アメリ・プーランの役は 打って付けでした。



ルワンダ

●『 ホテルルワンダ2004年(英・伊・南ア・米)監督・脚本:テリー・ジョージ (1952- ),主演:ドン・チードル、ソフィー・オコネドーニック・ノルティ 
 1994年、東アフリカのルワンダ共和国における ツチ族とフツ族の争いによって、100日で 50万人から 100万人もの人命が虐殺されたと言います(ヒロシマ・ナガサキの原爆よりも大きな惨事!)。 その最中、首都キガリの四ツ星ホテル、ホテル・コリーヌの支配人が、命を賭して、1,200人もの避難者、女子、子供をホテルに匿って 命を救いました。その実話を、彼自身の家族を救う奮闘と からめて、テリー・ジョージ監督が、手に汗を握る映画に作りあげました。こういう紛争が、今も世界中で起きているかとおもうと、暗澹たる気持ちになりますが、映画はそれを もっとヒューマン・タッチで描いています。



映画

●『 インビクタス負けざる者たち 2009年(英・伊・南ア)監督:クリント・イーストウッド (1930- ),主演:モーガン・フリーマン、マット・デイモン
 南アフリカで、アパルトヘイトと闘い、非暴力で 自由と平等を訴えた、インドのマハートマ・ガンディーに匹敵する 偉大なる男、ネルソン・マンデラが 30年に及ぶ獄中生活から解放され、選挙で大統領に選ばれたところから話は始まります。彼は 黒人と白人から成る新生国家を統合するために、翌年に南アフリカで開催される ラグビーの世界大会(ワールドカップ)に賭けます。マンデラ役の黒人俳優 モーガン・フリーマンが素晴らしい。そして、昔の TV 西部劇ドラマ『ローハイド』の ロディ役の若者 クリント・イーストウッドが、長じて こんな大監督に育ったとは!



映画

●『 女を修理する男2015年(ベルギー) 監督・脚本 : チエリー・ミシェル (1952- ) 
 奇妙な題名ですが、喜劇ではなく、原題 "L'Homme qui Répare les Femmes" の直訳で、 アフリカのコンゴの婦人科医、デニ・ムクウェゲ医師が 生命の危険にさらされながらも、フツ族とツチ族の抗争・殺し合いの中で、レイプされて 体(性器)と心を破壊された女たちを 修理(治療)し、世界に平和を訴える姿を描いた ドキュメンタリーです。楽しい映画ではありませんが、アフリカ(コンゴ)の現実、常に虐げられてきた女たちについて、そして闘い始めたアフリカの女たちについて知る映画です。

( 2021 /08/ 01 )


イスラームの建築種別ー3 「 学院( マドラサ、メドレセ )

学院

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの 第3回は、『 学院(マドラサ、メドレセ ) 』の項です。イスラームの教育機関には初等教育を受けもつ「クッターブ」と、高等教育を担う「マドラサ」があり、マドラサ(学院)はクルアーン諸学やハディース学の学習と研究を主としながら 種々の学問をする、ヨーロッパで発達する 大学に相当するものでした。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『学院』の項が、別のウィンドウに出ます。    ( 2021 /07/ 01 )

 「 文化の翻訳伊東忠太の失敗 」の 韓国語訳

表題

● この HP の『 原術へ 』のサイトに収録した3つの論文のうち、「 文化の翻訳伊東忠太の失敗」が、韓国語に翻訳されました。 韓国のフリーランスの建築エディター、 仲鏞 (LEE JOONG YONG) さんが、常々私と同じように、「アーキテクチュア」に「建築」という訳語をあてはめることの不適切さについて悩んでいたので、私のサイトを見つけて「文化の翻訳」を読み、大いに共感したそうです。 そこで これを韓国語に翻訳して、韓国の建築家や建築学者に読んでもらおうと、決心したのでした。 李さんは日本への留学経験でもあるのか、実に日本語に堪能で、インターネット翻訳機も利用しながら、私の論文を1フレーズづつ、丹念に翻訳して、両者を併記したのです。 実に素晴らしい。 多少 日本語に通じた 韓国の建築関係者には、非常に便利なことと思います。 韓国の学生さんたちは、韓国語の部分だけを通読して、「アーキテクチュア」という言葉の 正しい意味を知ってくれることでしょう。 もちろん、建築に関する 韓国と日本の 制度の違い がありますから、100パーセントは理解できないかもしれませんが。 ここをクリック すると、その和韓併記の翻訳文を載せた 李さんのブログ・ページ に とびますので、興味のある方は ご覧ください。     ( 2021 /06/ 10 )


イスラームの建築種別ー2 「 宮 殿( サライ, カスル, マハル )

住居

● 『世界のイスラーム建築』のサイトにおける、「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの 第2回は、『 宮殿(サライ、カスル、マハル ) 」』の項です。巨大趣味とは無縁で、住宅的な快適さを探求した イスラーム宮殿の特徴を、主にトルコとイランの宮殿を例にしながら 解説します。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『宮殿』の項が、別のウィンドウに出ます。    ( 2021 /06/ 01 )

イスラームの建築種別ー1 「 住 居( ダール, バイト)

住居

● 私家版『イスラーム建築』は、今でも たまに、頒布用の在庫はないかと 問い合わせをもらいますが、もうありません。しかし その内容の半分くらいは、『世界のイスラーム建築』のサイトの どこかで読めます。それでも 第4章の「イスラームの建築種別と その集合体」は、HPに載せたことがありません。まとまって見られるようにすれば、本をお持ちでない方には 便利だと思いますので、『世界のイスラーム建築』のサイトに そのディヴィジョンを作って、本の項目順に載せていくことにしました。最初は「住居(ダール、バイト)」の項です。 ここをクリック すると「イスラームの建築種別」の ディヴィジョンの『住居』の項に とびますので、興味のある方は ご覧ください。    ( 2021 /05/ 03 )

猫 の思い出

猫のチー

● 机の引き出しの中の古い書類を整理していたら、今から十数年前に 坂本庸生さんという方から送ってもらった、猫 についての ネット上の個人雑誌「トンシー記念日」のプリントが出てきました。そこに、坂本さんに宛てた 私の手紙が転載されています。ごく ささやかな「猫の思い出」が書いてありますので、下に写しておきます。
(上の写真は、こなみ かなた のコミック『チーズ・スイートホーム』の、「猫のチー」の ごく小さな人形です (まるで陶器のような感じに よくできていますが、有害とされる ポリ塩化ビニル(PVC)で 作られているので、今は 売られていません。 高さ 4cm )   ( 2021 /04/ 15 )


 本日、「第15回トンシー記念日」 を拝受しました。猫を軸にすえながら、ずいぶんと話題の広い、珍しいエッセイ集ですね。私の本のことも書いていただいて、どうもありがとうございました。私は猫派ではなく 犬派ですが ・・・・

 昔、木賃アパートに住んでいたときに、勤めからもどって 一人で食事をしていると、開け放った窓から、不意に 子猫が飛び込んできたことがあります。猫は 私の食事を なんら邪魔せず、興味深そうに 本棚の本を見て歩いて、においを嗅いだり、ソファに おとなしく寝そべったり していました。首に 鈴がついていたので、近くの家の 飼い猫でしょうが、気晴らしか、その日は ずっと私と一緒にいて、抱かれても まったく抵抗しません。よほど躾の良い、上品な猫でした。

 しかし 夜中に部屋で おしっこをされても困るので、寝るときに 窓から外へ出すと、しばらく 窓ガラスをガリガリ引っかいて、中へ入れて、と哀願しているようでした。朝になって 窓をあけると、驚いたことに、また その猫が飛び込んできました。窓の下で一晩を過ごしたようです。私が朝食をとる間も 邪魔をせず、回してやった小さなコマと 可愛らしく戯れていました。勤めに行くのでまた窓から外へ出すと、さすがに それきり訪ねてくることは ありませんでした。

 後になって、もしかすると、あの猫は 本当は猫ではなく、私に想いを寄せていた少女が、猫に姿を変えて 私を訪ねてきたのでは ないだろうか、もしかすると、少女は 病気で命を落して、あの世へ行く途中に、猫の姿をして 別れを言いにきたのでは ないだろうか、とまで 空想をふくらませるほどに、可愛い猫でした。それが 私の、唯一の「猫の思い出」です。        (2007年6月5日)



検索エンジン Microsoft Bingマフィア

● ネットのブラウザとして 「インターネット・エクスプローラ I.E. 」を長年使ってきましたが、近年 ウィンドウズでは、新しいブラウザとして「マイクロソフト・エッジ Edge 」を作り、これに切り替えるよう、アピールし続けています。私はホームページを I.E. で作ってきたので、エッジは拒否して、I.E. を使い続けてきました。
ところが、エッジでないと開けないサイトが 次第に増えてきて、ついに持ちこたえられなくなり、10日ほど前に、ブラウザを エッジに変更しました。私にとっては いろいろ不都合がありますが、私自身の作ったファイルは I.E. でも開けることがわかり(プログラムから開くー Internet Explorer )、今のところは安堵しています(将来はわかりませんが)。

そして、エッジと抱き合わせになっている検索エンジンは、「マイクロソフト・ビング Microsoft Bing 」です。したがって、ウィンドウズを使っている多くの人は、日常的に Bing で 検索をしていることでしょう。ところが、 Bing で私の HP を検索してみて、驚いてしまいました。検索語として「インド建築」といれても、「神谷武夫」といれても、私のホームページである『神谷武夫とインドの建築』は 出てこないのです。この10日ほど、毎日 チェックしていますが、表示されません。

M.Bing

タイトル全文の「神谷武夫とインドの建築」といれてさえも 検索されないのは、この検索ページから完全に削除されているか、そういう設定にされているからです。マイクロソフトが私に敵対しているわけではないですから、これはマフィアの仕業です。外部からそんな操作をされるほどに Microsoft Bing が脆弱なのか、あるいは Bing の内部に マフィアの協力者がいるのか、どちらかでしょう。
前から書いているように、マフィアは、私の設計業務妨害や 出版妨害ばかりでなく、私のホームページの閲覧妨害まで しているのです。彼らにとって知られたくないことが、いろいろ書いてあるからでしょう。検索エンジンは、できる限り、「グーグル」を 標準 検索エンジンに設定しておくのが良いと思います。 それが難しいなら、「グーグル」のページの サムネール(ショートカット)をデスクトップに出しておいて、いつも それをクリックするのが簡単です。

(ここに、こう書いて公表すると、 Bing で 私のホームページが、ある程度 検索できるようになるかもしれませんが。)   ( 2021 /03/ 20 )

世界建築 ギャラリーゲガルド修道院(アルメニア)

ゲガルド

● 『アルメニアの建築』のサイトから、前回のハグパト修道院に続いて、 ゲガルド修道院 も「世界建築ギャラリー」のディヴィジョンに単独で扱うことにしました。 ハグパト修道院 と並んで、アルメニアで最も重要な修道院建築で、ユネスコ世界遺産に登録されています。「アルメニア中部の建築」の章では12点の写真を掲載していましたが、大幅に増大させて33点にします。 ここをクリック すると「世界建築ギャラリー」のディヴィジョンの『ゲガルド修道院』のページが 別のウィンドウに開きます。    ( 2021 /03/ 01 )
 

名誉棄損に対する慰謝料請求の訴訟 (都知事、水道局)

水道メーター

● 私への 名誉棄損 に対する 慰謝料請求の訴訟を、1月27日に 東京簡易裁判所 に起こしました。相手(被告)は 東京都知事 東京都水道局長 、水道局北営業所長、北営業所員の4人です。近年は、裁判員裁判で裁判員の立場を経験された方々もいますが、大多数の市民は 裁判員どころか、民事裁判の原告にも 被告にも なったことが ないと思います。今回私は、弁護士に依頼せずに 自分で戦うことにしました(本人訴訟)。 民事訴訟 というのは 結局 金額で争うことになってしまいますが、訴額が140万円以下だと 簡易裁判所、140万円以上だと 地方裁判所に提訴することになりますので、今回は 簡易裁判所 です。 この裁判の過程を 逐一ここに公開することによって、民事裁判とはどういうものか、皆さんの参考に供したいと思います。 本人訴訟 のやり方について 丁寧に書かれた本も いくつか出版されていますので、どれか一冊と 首っ引きで進めれば、素人にも 自分で 訴訟は可能です。  ( 2020 /02/ 01 )
     ここをクリック すると、今回の「名誉棄損に対する慰謝料請求の訴訟」の内容が、
     別のウィンドウに出ます。
     訴状の受付日は 東京簡易裁判所 令和2年1月27日
     事件番号は 令和2年(ハ)第 11887号(民事 第5室6係)

● 第1回 口頭弁論の期日が、9月9日 11:30 に決定しました。  (2020 /07/ 13)

● ところが、突然ひっくり返されて、被告ー4武田 の名前がないという理由で、訴状棄却とされてしまいました。  ( 2020 /07/ 18 )

● 訴状全体が棄却されて、裁判は行われないものとばかり思い込んでいましたが、9月4日になって、川上法律事務所から「答弁書」が送られてきて、裁判所からは 東京都の「補助参加申出書」というものの副本が送られてきて、驚いてしまいました。改めて 裁判所の「訴状却下命令」を読んでみると、「被告-4武田」についてのみ、その名前がないことから 訴状を却下するということで、他の被告3人については、口頭弁論を行う ということのようです。
今回の事件の張本人である「被告-4武田」が、名前を隠し続けて 被告の席から逃げてしまった状態で 裁判をすることに 意味があるのか、少々疑問ですが、やむをえません。
     第1回口頭弁論の期日は、9月9日です。
     法廷は、東京簡易裁判所の4階、408号法廷です。  ( 2020 /09/ 05 )

● 第1回口頭弁論で提出した「準備書面-2」、「準備書面ー3」、被告から提出された
     「答弁書」、それへの反論としての「準備書面ー4」などを加えました。
     第2回口頭弁論の期日は、10月 7日です。   ( 2020 /10/ 01 )

● 「準備書面ー2、ー3、ー4」に対して 被告側から何の反論もなく、それでも争うと言います。
      第3回口頭弁論の期日は、11月4日です。  ( 2020 /10/ 23 )

● 判決言い渡しは、11月 30日です。  ( 2020 /11/ 22 )

● 12月2日に 裁判所から判決文が送られてきました。敗訴です
     この訴訟は、訴状を出してから 第1回口頭弁論が開かれるまでに9ヵ月も待たされたことを始め、おかしなことだらけであり、1年近くもの間に 熱意もさめ、あまりに うんざりしてしまったので、控訴する気も失せてしまいました。 この訴訟に使った費用は、全部で1万数千円です。  ( 2020 /12/ 06 )


                

世界建築 ギャラリーハグパト修道院(アルメニア)

ハグパト

● 『アルメニアの建築』のサイトで、ずうっと遅れていた解説を 現在作成中ですが、資料を読み直しながら執筆し、同時に英訳も進めているので、かなり時間がかかります。その中で、最も重要な ハグパト修道院 は、 単独で「世界建築ギャラリー」のディヴィジョンで扱うべきだと思い至りました。アルメニアで一番大きなヴァンク(修道院)であり、建物の数も多く、私は3回訪れて、撮った写真は 130枚のスライドになっています。「アルメニア北部の建築」の章では16点の写真を掲載していましたが、大幅に増大させて33点とし、詳しく紹介します。 ここをクリック すると「世界建築ギャラリー」のディヴィジョンの『ハグパト修道院』のページが 別のウィンドウに開きますので、じっくりとご覧ください。    ( 2021 /02/ 01 )

謹賀新年 2021

年賀状

今年も 大晦日の夜から バッハの『マタイ受難曲』を聴きながら
新年を迎えました。リヒター版のDVD(196分、日本語字幕版)です。




● 年の初めは 新しい記事の代りに、 映画のDVDの紹介です。 今回は、今から半世紀以上前のものから 近年のものまで、「私の好きな映画」の続きです。ヨーロッパ映画を4本と 日本映画を1本、それに音楽作品を1本 加えました。 制作年度順に並べます。  ( 2021 /01/ 01 )



尼僧物語

●『 尼僧物語1958年(米) 監督 : フレッド・ジンネマン (1907-97) 主演:オードリー・ヘプバーン、ピーター・フィンチ,原作:キャスリン・ヒュウム。
 高校1年の終わりの春休みに、先輩から映画の試写会の切符をもらい、有楽町の読売会館ホールに見に行ったら、それが『ローマの休日』(1953) の最初のリバイバル上映で、初めて見るオードリー・ヘプバーンの姿に、あゝ世界には こんなにも美しい人がいるものかと、驚天動地の思いをしました。以後、彼女の出る映画は だいたい見に行きましたが、ほとんどが 内容的には 他愛ない「ロマンチック・コメディ」で、『ローマの休日』以外に 映画芸術的に評価できるのは、ジンネマンの『尼僧物語』、ワイラーの『噂の二人』、ヒューストンの『許されざる者』ぐらいだったでしょうか。『尼僧物語』では、ベルギーのカトリックの厳格な修道院の尼僧になった主人公が 紆余曲折の後、希望していたアフリカのコンゴに、尼僧看護婦として赴任して・・。



シベール

●『 シベールの日曜日1962年(仏) 監督・脚本 : セルジュ・ブールギニョン (1928- ) 主演:ハーディー・クリューガー、パトリシア・ゴッジ,原作:ベルナール・エシャスリオー(『ビル・ダヴレーの日曜日』)。
 高校2年生のときに『芸術新潮』だったかに、ブールギニョン監督が日本の水墨画の美しさに感銘を受け、これを映画で表現しようと この作品を撮った、と書かれているのを読んで、これは是非見たいものだと、上映している名画座を探して 見に行きました。今から 60年近くも前の映画ですが、その水墨画のような白黒画面の美しさと、純粋無垢の心の悲劇のドラマに、堀辰雄と立原道造を愛読していた若い魂は 甚だしく感動しました。また、高校の第二外国語でフランス語を学び始めていたので、ところどころ台詞が解ったのも うれしかった記憶があります。



ローズマリー

●『ローズマリーの赤ちゃん1968年(米) 監督・脚本:ロマン・ポランスキー (1933- ) 主演:ミア・ファーロウ、ジョン・カサヴェテス,原作:アイラ・レヴィン。
 ユダヤ系ポーランド人のロマン・ポランスキーは 私の 怪奇幻想趣味を 最もよく満たしてくれる映画監督で、最初に『反撥』(1965) を見たときは衝撃的でした。アメリカに渡って撮った『ローズマリーの赤ちゃん』は 恐怖映画というよりは、ヨーロッパの「悪魔」についての 現代の おとぎ話という味わいです。他には『吸血鬼』、『チヤイナタウン』、『赤い航路』などを撮って若者を魅了しましたが、最後には『戦場のピアニスト』(2002) のようなヒューマニズムの傑作を撮って絶賛を博し、ポランスキーも歳をとったな と思わせました(尤も それは恐怖映画でもありましたが)。



映画

●『(ハル)1995年(日) 監督・脚本 : 森田芳光 (1953-2011) 主演:深津絵里、内野聖陽、戸田菜穂,音楽:野力奏一。
 まだインターネットが普及する前、1990年代に「パソコン通信」というソーシャル・コミュニケーションズが流行りました。私は やっていませんでしたが、これに興味をもって森田芳光監督が作ったのが この映画で、(ハル)と(ほし)というハンドル・ネームを使っての 主人公たちのメールの対話が、まるで無声映画における セリフのように、全部 文字で画面に出ます。フロッピー・ディスクの時代の物語です。才気煥発の森田芳光は私の愛する日本の監督でしたが、10年ほど前に61歳で突然 世を去ってしまいました。『(ハル)』は 森田作品の中では 比較的地味な作品ですが、私は これが一番好きです。



海の沈黙

●『 海の沈黙2004年(仏) 監督・脚本 : ピエール・ブートロン (1947- ) 主演:ジュリー・ドラルム, トマ・ジュアネ, ミシェル・ガラブリュ。
 原作は ヴェルコールの同名の短編小説で、ナチス・ドイツの占領下にあったフランスにおける レジスタンス文学の代表作です(1942年)。戦後まもなくの 1948年に ジャン・ピエール・メルヴィル (1917-73) 監督によって映画化され、傑作のほまれ高い ドキュメンタリー・タッチのモノクロ・スタンダード作品となりました。その半世紀後のピエール・ブートロン監督は、よりドラマティックに脚色して、カラー・ワイドの映画にしました。映画作品として完成度が高いのは ブートロン作品ですが、原作に より忠実なのは メルヴィル作品です。どちらを取るかは 好みの問題です。



フーガの技法

●『 フーガの技法Die Kunst der Fuge, BWV 1080,2007年11月 録音・録画(独)
 作曲:ヨハン・セバスチヤン・バッハ,演奏:ベルリン古楽アカデミー。 輸入盤
これは劇映画ではなく、音楽の演奏会の 録音・録画です。私が 最高の音楽作品だと思う バッハの『フーガの技法』の 私の愛聴盤は、前に書いたように、クロード・パスカルとマルセル・ビッチュによるオーケストラ編曲盤ですが、ここに採り上げるのは ベルリン古楽アカデミーのメンバーによるオーケストラ編曲盤です。前記のものと違和感がないので、それを模範にしたのかもしれません。ベルリン古楽アカデミーというのは 小編成のオーケストラで、しばしば 室内楽の場合と同じように、指揮者なしで演奏します。そして 古楽器の柔らかな響きによる 名演奏です。チェンバロの音色の美しいこと。こんなに宇宙的な音楽を 指揮者なしで演奏するというのは、よほど 楽団員の一体感が強いのでしょうか。DVDで見ていると、どの楽器が どの楽器を追いかけて行くのかが よくわかります。残念なのは 全曲録音ではないことと、冒頭のコラールが不要なこと。

( 2021 /01/ 01 )


「 中東の建築 」 第3章 『 エジプト建築(イスラーム期)

エジプト

● 『中東の建築』の第3章は「エジプトの建築(イスラーム期)」です。今回このサイトで扱うのは 古代エジプトではなく、中世以後のエジプト文明、つまりイスラームの建築だけです。コプトのキリスト教建築も 全て省略します。エジプトの全時代の文明、全宗教の建築を扱うと あまりに膨大な容量になってしまって、『世界のイスラーム建築』の このディヴィジョンには収まりきらなくなってしまうし、また その趣旨のサイトでもないからです。 ここをクリック すると「中東の建築」のディヴィジョンの第3章『エジプトの建築(イスラーム期)』の章が、別のウィンドウに出ますので ご覧ください。    ( 2020 /12/ 01 )

武井武雄の 『 迅四郎の窓 』と『 小萩抄

武井武雄

● 「愛書家」にとって避けては通れない峠の一つは「武井武雄」峠です。1935年から 1983年に亡くなるまでの 50年近くの間に 彼が作った 139巻もの「刊本作品」を、愛書家だったら 無視できません。もともと私は古書の「コレクター」であったわけではなく、建築の古書を 研究上の必要にかられて 海外の古書店から 購入しているうちに、次第に建築書以外の古書や挿絵本にも手を出す「愛書家」になってしまったのですが、「書物芸術」を 後半生探求し続けて 実験的な小型本を作り続けた武井武雄の本も、何冊か架蔵しないわけにはいきません。そこで彼の「刊本作品」の中から 特に興味深く 私好みの本を2冊選んで、以前に入手しました。ここをクリック すると「古書の愉しみ 」の第53回、『 迅四郎の窓」と「小萩抄 』のページに とびますので、興味のある方はご覧ください。      ( 2020 /11/ 01 )


トルコイスラーム建築

トルコ

● 『中東の建築』の第3章として「トルコの建築」を作成していると 前に書きましたが、このたび やっと完成しました。ところが、古代やビザンティンの建築をすべて省略して、イスラーム建築だけに限定したにもかかわらず、容量が イランには及ばないものの、ウズベキスタンや ブルガリよりも ずっと大きくなってしまいました。こうなると「中東の建築」のディヴィジョンに入れておくわけにはいかず、イランと同様に 独立したサイト『トルコのイスラーム建築』としないわけにはいきません。これで「世界のイスラーム建築」のサイトは、中東地域が 充実しすぎてしまいましたが、せめてエジプトだけは「中東の建築」のディヴィジョンに入れて、シリア、ヨルダンに続く第3章にしようと思っています。 ここをクリック すると、『トルコのイスラーム建築』のサイトが 別のウィンドウに出ますので、ご覧ください。    ( 2020 /09/ 01 )

INTERMEZZO

ヒマラヤの山羊
暑中お見舞い申し上げます( ヒマラヤの山羊さんより )

● 今月は夏休みなので、新しい記事はありません。そのかわりに映画のDVDの紹介をします。今回は「私の好きな映画」と題して、何度も見た、娯楽性もある 古い映画を6本です。いずれもヒット作ですから、見た方も多いことでしょう。映画の制作年度順に 並べておきます。  ( 2020 /08/ 01 )



ファニー

●『 ファニーとアレクサンデル1982年(スウェーデン) 監督・脚本 : イングマール・ベルイマン (1918-2007) 主演:グン・ヴォールグレーン, エヴァ・フレーリング。
 もともとはTV用に1時間半の4回連続ドラマということだったらしいですが、それにしてはワイド画面だし、実際、東京では 岩波ホールで5時間半の一挙上映をしました。入場料も高かったですが、感動! 後に DVDが出たので購入したら、これは3時間の短縮版なのでガッカリして売り払い、後に2枚組5時間半のオリジナル版が出た時に、当時は高価でしたが 購入しました。ベルイマン作品としては、前期の『野いちご』と 後期の、というより最後の映画作品となった『ファニーとアレクサンデル』が、彼の最高傑作の双璧だと思います。いずれも性格俳優の名優ぞろいですが、とりわけ祖母役の グン・ヴォールグレーンが 良い味です。日本公開は 1985年。



細雪

●『 細雪1983年(日) 原作 : 谷崎潤一郎 (1886-1965) 監督・脚本 : 市川崑 (1915-2008) 主演:佐久間良子, 岸恵子, 吉永小百合, 伊丹十三, 石坂浩二。
 文豪・谷崎の『 細雪 』は、島崎藤村の『夜明け前』のような 退屈な 大長編小説かと思って ずっと敬遠していましたが、ある年の正月休みの つれづれに読んでみたら、実に面白いのに驚きました。ストーリーが魅力的なわけではありませんが、もっぱら講談のような 谷崎の語り口のうまさだと思います。 それを見事に映画化した 名匠・市川崑監督の最高傑作ではないでしょうか。まず ヘンデルの『オンブラ・マイ・フ』をバックに繰り広げられる 芦屋の「四姉妹」たちの花見の場面が圧巻です。次女役の佐久間良子が、全編を通じて 素晴らしい。



恋の秋

●『 恋の秋1998年(仏) 監督・脚本 : エリック・ロメール (1920-2010) 主演:マリー・リヴィエール, ベアトリス・ロマン, アラン・リボル。
 フランスのエリック・ロメール監督は、ヌヴェル・バーグの初期からの評論家であり、遅咲きの監督です。 これは 彼が円熟した晩年に撮った四部作「四季の物語」のひとつで、最初の『春のソナタ』(原題は「春物語」)は ロメール 70歳の 1990年、『冬物語』は 1992年、『夏物語』は 1996年、最後の本作(原題は "Conte d'Automne"「秋物語」)は 78歳の 1998年です。それまでの作品が 主に「若者の恋」を描いていたのに対して、ここでは「中年の恋」を描いているのが新鮮でした。フランスの「恋愛心理小説」の伝統を汲んでいて、レーモン・ラジゲの『ドルジェル伯の舞踏会』(堀口大学訳、講談社文芸文庫)を思い起こさせます。



映画

●『 グッバイ・レーニン!2003年(独) 監督 : ヴォルフガング・ベッカー (1954- ) 主演:ダニエル・ブリュール, カトリーン・ザース, 音楽:ヤン・ティルセン。
 1989年、東西ドイツを分断していたベルリンの壁の崩壊前夜、デモに加わるアレックスが警察に殴打され逮捕されていくのを目撃した母は 心臓発作で倒れます。8ヵ月失神して寝たきりになった母に2度と刺激を与えないよう、アレックスの奮闘が始まります。東西ドイツの統一をバックに繰り広げられるトラジ・コメディで、ほとんどのドイツ人が この映画を見て 笑い、泣いた といいます。(もっとも日本では、 今の若い人は レーニンなんて知らないだろうか?)



映画

●『 オーケストラ!2009年(仏) 監督・脚本 : ラデュ・ミヘイレアニュ (1958- ) 主演:アレクセイ・グシュコヴ, ドミトリー・ナザロフ, メラニー・ロラン。
 「 オーケストラ!」というのは変な邦題にしたものですが、フランス語の原題は「ル・コンセール」(コンサート)というコメディです。ソ連の伝説的 革命的指揮者が ブレジネフ体制に盾突いたために掃除夫にされて30年、起死回生の決死的行動に出ます。旧ボリショイ管弦楽団を組織して、パリのシャトレ座で「コンサート」をやろうと。フランスの美しい新進女流ヴァイオリニストとの共演で、ロシアの魂であるチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」を ! ソ連崩壊後のモスクワの惨状、旧共産党の栄光にすがる小役人、新興成金のスラップスティック。そんな中で、果して「コンサート」は実現するのでしょうか? (今まで何度も見ていますが、見終わったあと、なんだか幸福な気分になります。) ラデュ・ミヘイレアニュ監督はユダヤ系のルーマニア人で、チャウシェスク独裁政権下から亡命し、パリの高等映画学院で学びました。DVDで見られる 彼の他の作品は、エチオピアからイスラエルに渡った難民の少年を主人公にした『約束の旅路』です(コメディではありません)。



リスボン

●『 リスボンに誘われて2012年(独・スイス・ポルトガル) 原作 : パスカル・メルシエ 『リスボンへの夜行列車』(浅井晶子訳, 2012, 早川書房) 監督 : ビレ・アウグスト (1948- ) 主演:ジェレミー・アイアンズ, メラニー・ロラン。
 原作の小説『リスボンへの夜行列車』は、映画よりもずっと深い哲学的な主題と探求をもった思索的な作品で、ポルトガルの「カーネーション革命 (1974)」の史実を背景に描かれています。大衆的なファンタジー小説でもないのに、こうした深い思弁的な現代小説がドイツ語圏だけで 200万部も売れ、さらに日本を含む 世界 31か国語に翻訳されて 200万部も刊行されたとは、はなはだ驚きです。高踏な純文学の愛好者は、まだ少なからず存在するということでしょう。「映像」では、そこまで描くことはできませんが、それを 一般の人も楽しめる映画作品にアレンジした 脚本も監督も見事です。俳優陣もいい。


古書の愉しみ 52. 白井喬二の 『 富士に立つ影 』

白井喬二

● 野村胡堂の『三万両五十三次』で「大衆文学」に目覚めた私は、次は吉川英治にアタックして『宮本武蔵』や『新書・太閤記』を読み、さらには村上元三の『佐々木小次郎』などへと進んでいきました。小学生なのに、どうしてそんな 長編小説 ばかりを読んだかというと、漫画を読んでいた時からそうなのですが、最後がハッピーエンドであっても、それを疑ってしまうのですね。その後、ふたりは本当に いつまでも幸せだったのだろうか、不幸に出会わなかったのだろうか、大病になったり、交通事故に会ったり、破産したりしなかったのだろうか、本当のことを知りたい、続きが読みたい、と思うのです。そのために、なかなか終りが来ない、長編ものを好むことになるわけです。日本で一番長い小説は 中里介山の『大菩薩峠』で、2番目は白井喬二の『富士に立つ影』だと言われていました。今回の「古書の愉しみ」は、2冊目の「大衆文学」として、今回読み直した『 富士に立つ影 』を採り上げることにしました。 ここをクリック すると「古書の愉しみ」の第 52回「富士に立つ影」のページが 別のウィンドウに出ますので、興味のある方は ご覧ください。   ( 2020 /07/ 03 )

古書の愉しみ 51. 野村胡堂の 『 三万両五十三次 』

野村胡堂

● この春は新型コロナウィルスの蔓延下、国家から緊急事態宣言が出て、なるべく外出するな、ステイホームせよ という要請のもと、家に居ることが多く、本を読んだり DVDで映画を見たりした方が 多かったことでしょう。私も、ずっと前から読もうと、あるいは読み返そうと思って だいぶ前に買っておきながら 読む暇がなく、本棚に積んでおくままになっていた長編小説などを読みました。その一つが、『三万両五十三次』という、野村胡堂が書いた 古い長編小説です。今を去る数十年の昔の 子供時代に読んだ小説で、いつか読み直してみたいものだと 長いこと 思っていた本です。で、「古書の楽しみ」のサイトに 初めて「大衆文学小説」を採り上げることにしました。 ここをクリック すると「古書の愉しみ」の第 51回「三万両五十三次」のページが 別のウィンドウに出ますので、興味のある方は ご覧ください。   ( 2020 /06/ 01 )

イスラーム建築の名作 「 バヤジト2世キュリエ宮殿

エディルネ

● イスラム世界では、王侯や貴族が 民衆のための宗教・福祉施設を多く建設しましたが、とりわけトルコの オスマン朝 は大規模な 公共施設複合体 を各地に寄進し、これを キュリエ と呼びました。なかでもエディルネの郊外に建つ 15世紀の「バヤジト2世のキュリエ」では、モスク、施療院と癲狂院、医学校、そしてイマーレト(救貧食堂)が 完全な幾何学的秩序のもとに 見事な石造建築のアンサンブルを形成しています。設計したのは、シナンの師匠だったとも伝えられる宮廷建築家の ハイレッティン・アーです。あわせて、今はない エディルネの宮殿 の遺跡を 図面とともに紹介します。 ここをクリック すると「イスラーム建築の名作」のディヴィジョンの、『バヤジト2世キュリエ宮殿』のページが 別のウィンドウに開きます。    ( 2020 /05/ 01 )

世界イスラーム建築 』の サイトの 再編成

● 先月『中東の建築』の第4章として「ウズベキスタンの建築」をアップ ロードしましたが、そこにも書いたように、ウズベキスタンは 中東ではなく中央アジアの国です。建築的にはイラン文化圏に属することから、参考的に「中東の建築」の中に 軽く入れるつもりだったのですが、作り始めてみると、シリアやヨルダンの章の 1.5倍もの大きさ(容量)になってしまいました。そうなると、これを「中東の建築」の中に置いておく違和感が、ますます大きくなります。
 もう一つの問題は、『中東の建築』のディヴィジョンが あまりにも大容量となってしまい、もう パンクしそうになったのです。最大の容量を使っているのは「イランの建築」で、これは シリアやヨルダンの章の 2.8倍もあります。もはや『 世界イスラーム建築 』の内容を、再編成せざるをえません。 そこで、「イランの建築」と「ウズベキスタンの建築」を『中東の建築』のディヴィジョンから独立させて、どちらも 内容的には ほとんどがイスラーム建築であることから、単独に「イランのイスラーム建築」「中央アジアのイスラーム建築」というタイトルにすることにしました。
 「ウズベキスタンのイスラーム建築」とせずに「中央アジアのイスラーム建築」とするのは、今までも ブルガリアで代表させて「東欧のイスラーム建築」としてきたように、ウズベキスタンで代表させて「中央アジアのイスラーム建築」とすることにし、同じように 既存の マリ の場合も、マリで代表させて「西アフリカのイスラーム建築」としたほうが、初めてこのサイトを見る人にも、わかりやすいのではないかと 考えたからです。トップページは、次のようになります。

トップページ

 「中東の建築」のディヴィジョンには、できれば 今年中に「トルコの建築」と「エジプトの建築」の章を作成するつもりですが、どちらも あまり大きなページに なりすぎないよう、歴史上の建築の全部ではなく(つまり 古代の建築は省いて)、イスラーム建築だけに限定しようかと思っています。 そして、もっと先のことを言うなら、それらが 終わったあとで、『マグリブのイスラーム建築』のディヴィジョンを 作成するつもりです。「マグリブ」とは「北アフリカ」あるいは「アラブ・アフリカ」のことで、地中海に面した チュニジア、アルジェリア、モロッコ、スペイン のイスラーム建築を扱います。
もっとも、こうした企画が 全部 実現するより前に、人類は 死滅してしまうかもしれませんが。(非道の限りを尽くしてきた人類に対して、ついに「最後の審判」が下ったか?)
源信の『往生要集』にも いわく、「おのれと愛の網に たぶらかされ、悪業(あくごう)を作りて、いま 悪業の報いを受くるなり」   ( 2020 /04/ 01 )

謹賀新年 2020

年賀状

今年も 大晦日の夜から バッハの『マタイ受難曲』を聴きながら
新年を迎えました。今回からCDではなく、リヒター版のDVDです。
ここで 名演といわれる福音史家役を歌っているペーター・シュライアーが、
昨年末の12月25日に亡くなったそうです。追悼。




● 年の初めは 新しい記事の代りに、 映画のDVDの紹介です。今回は だいぶ古い、今から半世紀ぐらい前の、主にアートシアター(ATG)系の 芸術映画を6本選びました。ほとんどがモノクロ作品ですが、昔 映画館で見て 感銘を受けたものばかりです。ヨーロッパ映画を3本と 日本映画を3本で、それらの制作年度順に並べます。   ( 2020 /01/ 01 )



野いちご

●『 野いちご(スウェーデン・仏・西独)1957,監督・脚本:イングマール・ベルイマン、主演:ヴィクトル・シェーストレム、イングリッド・チューリン,モノクロ・スタンダード作品。
 世界の映画監督の中でも 最高の映画作家だったイングマール・ベルイマン(1918-2007)の、数ある作品の中の最高傑作。老人を主人公にした映画ですが、作ったベルイマンはまだ 39歳でした。もっと若く20代だった私は、1971年に どこかの名画座で見て 深く感動。誰だったか映画評論家が、世界映画史の「金字塔」だと書いていましたが、確かにそうだと思います。映画でなければ描けない世界です。べルイマンは常に「人間どうし 決して お互いに理解しあえない」と映画で語っていたような気がしますが、この映画では 微かな希望の灯がかいま見えるようです。
この「老人映画」に因んで、私の好きな「老人文学」を1冊紹介。アナトール・フランスが 37歳で書いた『シルヴェストル・ボナールの罪』、伊吹武彦訳、岩波文庫です。



マリエンバート

●『 去年マリエンバートで(仏・伊)1960,監督・脚本:アラン・レネ,主演:デルフィーネ・セイリグ、ジョルジョ・アルベルタッツィ,原作:アラン・ロブ・グリエ、音楽:フランシス・セイリグ,衣装:ココ・シャネル,モノクロ・ワイド作品。
 学生時代に見て衝撃を受けました。詩と幻想、記憶と真実、あなたは バロック庭園を知っていますか? フランス映画界の巨匠になるアラン・レネ(1922-2014)は まだ『ヒロシマ・モナムール(24時間の情事)』とドキュメンタリー『夜と霧』を撮っただけの新進でしたが、長編第2作として、アンチ・ロマン(ヌヴォ・ロマン)のアラン・ロブグリエ(1922-2008)の原作を見事に映画化しました。既成のロマン(小説)の否定ですから、不可解と謎に満ちています。黒澤明の映画『羅生門』(原作:芥川龍之介の『藪の中』)に影響されたといいます。 バロックの宮殿ホテルに泊まり合わせた男Xが 女Aに「去年マリエンバートで会いましたね」と言う。女は否定しますが、次第に混乱していきます。オルガンを使った音楽が効果的。この映画の鮮烈な映像美を堪能するためには、DVDではなくブルーレイ・ディスクで見ることをお勧めします。



映画

●『 5時から7時までのクレオ(仏・伊)1962,監督・脚本:アニェス・ヴァルダ,主演:コリーヌ・マルシャン、モノクロ・ワイド作品。 
 フランスのヌヴェル・バーグの初期の傑作です。女流監督の作らしく、実にさわやかで、モノクロながら 美しい映画です。ヌヴェル・バーグは実験が好きで、これも、物語が夕方5時から7時までの、クレオという女優の行動なのですが、それを映画でも2時間(実際には1.5時間)でアクチュアルに進行するという、低予算の実験映画で、当時はやりの「実存主義」の映画だと言われました。「ヌヴェル・バーグの祖母」と呼ばれた アニェス・ヴァルダ(1928-2019)は、『シェルブールの雨傘』を撮ったジャック・ドゥミ監督の妻で、数々の映画賞に輝きましたが、昨年90歳で亡くなりました。 彼女に見出された 主演のコリーヌ・マルシャンが 実に魅力的です。音楽は 若き日のミシェル・ルグラン。DVDが品切れで高価になっていたのが、数年前にニュー・プリントで安く出たので大いに嬉しく、早速買い求めました。



切腹

●『 切腹(日)1962,松竹,監督:小林正樹,脚本:橋本忍,主演:仲代達矢、三国連太郎,音楽:武満徹,原作:滝口康彦『異聞浪人記』、モノクロ・ワイド作品。
 『人間の條件』や『東京裁判』を撮った社会派の監督、小林正樹(1916-96)が初めて撮った時代劇で、一種の武士道残酷物語です。黒澤明の『七人の侍』も良いけれど、映画の構成力と緊迫感において、この『切腹』こそが 時代劇映画の最高傑作だと思います。仲代達矢の演技は迫力満点、初めて琵琶と尺八を使った 武満徹の音楽も素晴らしい。カンヌ国際映画祭をはじめ、内外の映画賞を総なめにしました。



無常

●『 無常(日)1970,監督: 実相寺昭雄、脚本:石堂淑朗,主演:田村亮、司美智子、岡田英次,音楽:冬木透、制作:ATG,モノクロ・スタンダード作品。
 実相寺昭雄監督(1937-2006)の作品の多くは 日本アートシアター・ギルドの制作による低予算映画でしたが、いつも銀座文化か新宿文化の初日に見に行ったものです。彼は音楽にも造詣が深く、オペラの演出などもしているので、後に芸大の演奏芸術センター教授を務めました。この映画では、冒頭から古~い SPレコード (?) の 古色蒼然たる演奏の バッハの無伴奏バイオリン・ソナタが流れ、不安感をかきたてます。石堂淑朗の脚本が 出色の出来栄えです。かつての全共闘世代に強く支持された実相寺は 、『曼荼羅』1971、『哥(うた)』1972、『あさき夢みし』1974、『歌麿、夢と知りせば』1977 などを作りましたが、最高傑作は長編第1作の『無常』です。



青幻記

●『 青幻記(日)1973,監督・脚本・撮影:成島東一郎,主演:賀来敦子、田村高広,音楽:武満徹,原作:一色次郎、これのみがカラー・ワイド作品。
 これはビデオにもDVDにも なっていないので、今は見ることのできない映画ですが、もう そろそろDVD化されるのではないかと、心待ちにしています。 原作者の一色次郎(1916-88)は 子供向けの本を書いていたので、小学生の頃から名前を知っていました。晩年になって自伝的な『青幻記』という純文学作品を書き、太宰治賞を受賞しました。沖縄諸島の隣の沖永良部島(おきの えらぶじま)を舞台にした「想い出の記」で、映画の副題は「遠い日の母は美しく」です。この小説に感銘を受けた映画カメラマンの成島東一郎(1925-93)は、第1回監督作品として これを映画化しました。沖永良部の海と風物を 美しい映像に描いています。武満徹の音楽も名作です。薄幸の母を演じたのは、毎日映画コンクール女優演技賞を受賞しながら この映画を最後に 映画界から姿を消した 伝説的女優、賀来敦子(かく あつこ)です。

( 2020 /01/ 01 )


『 小アジア紀行 』『 リュキア紀行 』

リュキア

● 8年前に始めた「古書の愉しみ」のシリーズは、ついに 50回を迎えました。この数回は 中ぐらいの古さ (?) の古書が多かったので、50回記念の今回は 古書中の古書ともいうべき、今から 180年前の古書を採りあげます。チャールズ・フェローズ著、1839年の『 小アジア紀行 』と、1841年の続編『 リュキア紀行 』です。出版社は、この「古書の愉しみ」で紹介してきた ジェイムズ・ファーガスンや A・B・ハヴェルの ほとんどの著書、そして岡倉覚三(天心)の本も出した 英国の老舗、ジョン・マリー社です。
 現在のトルコ領のアナトリア南部にある リュキア地方とその古代文化(特に石窟墓と石棺)が 古代インドの石窟寺院に影響を及ぼしたであろうことについては、『 リュキア建築紀行(石窟寺院の謎)』のサイトを読んでいただくとして、今回は そのチャールズ・フェローズの2冊の本の内容と姿を伝えます。 ここをクリック すると「古書の愉しみ」の第 50回『「小アジア紀行」と「リュキア紀行」』が 別のウィンドウに開きます。   ( 2019 /12/ 01 )

古書の愉しみ 49. 『 ジョージアの美術と建築 』

ジョージア

● 今回の「古書の愉しみ」は、ジョージアの ルスダン・メピサシュヴィリヴァフタン・ツィンツァゼという建築家と建築史家の夫妻がドイツ語で書き、写真家のロルフ・シュラーデが撮影した『ジョージアの美術と建築』の英語版です。 三段組の詳しい本文、大型のカラーおよびモノクロ写真、それに大量の図面と、ぎっしりと内容のつまった、ジョージア美術 の理想的な一巻本の概説書と言えます。 英訳版 "THE ARTS OF ANCIENT GEORGIA" は2年後の 1979年に、ロンドンの老舗出版社 テムズ・アンド・ハドスンから 同じ体裁で出版されました。 今からちょうど40年前の古書です。 ここをクリック すると「古書の愉しみ」の第 49回「ジョージアの美術と建築」の英語版のページが 別のウィンドウに出ますので、興味のある方は ご覧ください。   ( 2019 /10/ 01 )

三つの ウェブサイトの 英訳

アールデコ

● 私のホームページは『神谷武夫とインドの建築』と『世界のイスラーム建築』、それに『アルメニアの建築』の3本立てとなっていて、それぞのページの英訳を 順次(少しずつ)やっています。今回、遅れ気味の『世界のイスラーム建築』の中の「中東の建築」のディヴィジョンの第1章「シリアの建築」の英訳が終って アップロードしました。まだ第2章の「ヨルダンの建築」と第3章の「イランの建築」があると思うと、まだまだ 道遠しです。それに、第4章の「ウズベキスタンの建築」も今年中に作成するつもりですしね(その英訳は来年になります)。
 その『世界のイスラーム建築』は、「グーグル」でも 「ヤフー」でも、キーワードに「イスラム」と入れても「イスラム建築」と入れても検索できないのですから、ひどいものです。相変わらず、私の言説を世の中の人に読ませまいとする マフィアによる妨害でしょう。
ここをクリック すると「シリアの建築」の英語版「The Architecture of SYRIA」のページが 別のウィンドウに出ますので、興味のある方はご覧ください。   ( 2019 /10/ 01 )

ヴィクトリアンゴチックと アールデコ

アールデコ

● 昨年、インドからユネスコ世界遺産に新しく登録されたのは、「 ムンバイのヴィクトリアン・ゴチックと アールデコ の建築遺産」というものでした。多くのインド・ファンにとっても、これは意外だったかもしれません。『インド建築案内』のボンベイ(ムンバイ)の項には2ページ半にわたって ゴチック・リバイバル様式のコロニアル建築が紹介してあるので、インドのゴチックを知らないわけではないでしょうが、その内すでに ヴィクトリア・ターミナス(チャトラパティ・シヴァージー)駅舎はユネスコ世界遺産に登録されていて、この HP でも扱っているので、まさか、さらにムンバイのゴチック様式の建物群全体が アール・デコ の建物群と一括して登録されるとは! 一体 インドに アールデコの建物などあるのか? と 疑ったかもしれません、『インド建築案内』にさえ 載っていないではないか と。
 インドでは独立直前の 1930年代に モダニズムの波 が到来し始め、ボンベイにアール・デコの建築がもたらされました。それまでの様式主義の建築と打って変わって、近代的で自由なデザインの商業建築が、新興インドの建築家によって数多く建てられ、新しい彫刻や装飾工芸を伴ったのです。見るべきものが多く残っているわけではありませんが、代表作としては エロス映画館(1938)や 新インド保険会社ビル(1937)などがあります。「インドのユネスコ世界遺産」のディヴィジョンに『ヴィクトリアン・ゴチックとアールデコ』のペ―ジをつくりましたので、 ここをクリック してご覧ください。    ( 2019 /09/ 01 )




ファーガスンとインド

●● 今から8年前の 2011年3月1日に、この「お知らせ」欄に、次のように書きました。

ファーガソンの発音は、正しくはファーガスンですが、日本における慣例で(たぶん綴りが -son なので)、ファーガソンと書くことになっています。シンプスンが シンプソンと書かれるのと同様です。しかしながら、かつてジェームズと綴られたのが、今ではジェイムズと正しく書かれるようになったように、スンというのが日本人にとって発音しにくいわけではないので、今に ファーガスンと表記される ように なるかもしれませんが、今のところ 私の本とHPでは、慣用に従って ファーガソンと表記することにしています。

その後、世の中では、人名の Ferguson や Fergusson の読みは 次第に 原音に忠実に「ファーガスン」という日本語表記が標準になってきました。そこで、このウェブサイトでも「ファーガスン」表記に切り替えることにしました。既存のページも、すべて「ジェイムズ・ファーガスン」に書き換えます。 また それに合わせて、画家 ウィリアム・シンプソンは ウィリアム・シンプスン、建築家 ウィリアム・エマーソンも ウィリアム・エマースンに書き換えます。    ( 2019 /09/ 01 )

INTERMEZZO

カエルのトトロ
暑中お見舞い申し上げます(カエルのトトロ)

● 今月は夏休みなので、新しい記事はありません。そのかわりに映画のDVDの紹介をします。先々月 アルヒーフ・レコードと音楽について書いたのにあわせて、音楽と関連の深い欧米の映画を3本と、アジアを舞台にした映画を3本です。  (2019 /08/ 01)



映画

■『 めぐり逢う朝(仏)1991,監督:アラン・コルノー,主演:ジャン・ピエール・マリエル、ジェラール・ドパルデュー,原作:パスカル・キニャール, 音楽:ジョルディ・サヴァール
 フランスのアラン・コルノー監督 (1943-2010) は『インド夜想曲』(1989、アントニオ・タブッキ原作)で新境地を開きましたが、これはその2年後に作られた 彼の代表作です。17世紀フランスのバロック音楽で 宮廷の楽長にまで上り詰めた マラン・マレと、その師であり、世俗を捨てたヴィオール奏者 サント=コロンブ との 芸術ならびに私生活における葛藤を、はなはだ沈痛なタッチで描いています。タイトルはパスカル・キニャール の原作小説の中の句 " Tous les matins du monde sont sans retour " から とられていて、「世界のすべての朝は いつもそこに」といった意味でしょうか。しかし映画は逆に「すべての夜は決して明けない」とでも言っているかのようです。先立ってしまった 最愛の妻を想い続けるサント=コロンブにとって、音楽とは「死者への贈り物」なのです。



映画

■『 25年目の弦楽四重奏(米)2012,監督・脚本:ヤーロン・ジルバーマン, 主演:クリストファー・ウォーケン、フィリップ・シーモア・ホフマン, 音楽:アンジェロ・パダラメンティ
 結成25年を迎えた世界的に有名な 弦楽四重奏団「フーガ」は、演奏会を前にしたリハーサルが うまくいかず、最年長のピーター(実に渋い俳優の クリストファー・ウォーケン)が パーキンソン病に罹っていることが わかります。ここから、存亡の危機に立たされた弦楽四重奏団の4人のメンバーの過去と現在があぶり出されていきます。果して「フーガ」は 存続できるのでしょうか。 アメリカ映画とは思えない、ヨーロッパ映画のような 深みのある作品です。



映画

■『 トリコロール/青の愛(仏・ポーランド・スイス)1993,監督・脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ,主演:ジュリエット・ビノシュ, 音楽:ズビグニェフ・プレイスネル
 55歳で世を去った ポーランド生まれの映画作家 クシシュトフ・キェシロフスキ(1941-96)は、晩年に「トリコロール」という3部作を作りました。トリコロールというのは3色の意で、この場合、青・白・赤のフランスの 三色旗 を意味し、それぞれの色に因んだ 愛の物語 を紡ぎました。その第1作が「青の愛」です。 冒頭 いきなり自動車事故で、運転していた高名な作曲家と小さな娘が死亡、助手席に乗っていた妻が未亡人となります。彼女のその後の生活を淡々と描きますが、その過程で、隠されていた事実が明らかに。 主演のフランス女優 ジュリエット・ビノシュ を初めて見て、そのファンになった映画です。その後、彼女の出た映画は『存在の耐えられない軽さ』、『イングリッシュ・ペイシェント』、『汚れた血』、『ショコラ』、『夏時間の庭』などを見ました。



ふたり

■『 ふたり 』Dvoe(ソ連)1965,監督・脚本:ミハイル・ボーギン,主演:ヴィクトリア・フョードロワ、ヴァレンチン・スミルニッキー,35mm、モノクロ
 これは おまけですが、実は 見ることのできない映画です。今から半世紀も前に作られたソ連の映画で、「美しい一編の抒情詩」です。音楽学校でフルートを専攻する学生と、声をかけても 返事をしない 若い女性とのふれあいを描いた37分の短編映画で、映画学校の卒業制作として作られ、第4回モスクワ国際映画祭 短編部門の金メダルを受賞しました。昔、1969年に、アートシアター日劇文化で パラジャーノフの『火の馬』と併映されたのを見て感銘を受け、その数年後にもう一回、やはり日劇文化で 何かの併映作として見ましたが、その後は全く見る機会がなく、ビデオも DVDも無く、何とか もう一度見たいものと 思い続けています。



パパイヤ

■『 青いパパイヤの香り(仏・ベトナム)1993,監督・脚本:トラン・アン・ユン,主演:トラン・ヌー・イェン・ケー。カンヌ国際映画祭など、多くの受賞作。
 『青いパパイヤの香り』は、まだベトナム戦争が始まっていない 1951年のサイゴンを舞台として、農村から奉公にきた主人公の小さな少女 ムイを中心にして、一家の人々の生活を淡々と描いた映画です。ベトナム出身の トラン・アン・ユン は 両親とともにベトナム戦争から避難した移民としてフランスで育ち、パリの国立映画学校で学んだ監督で、そのデビュー作が これです。故国の、まだ牧歌的だった時代のサイゴンの風物と人々を、哀惜をこめて、しっとりと 美しい画面に描いています。 名作です。 時が経って、一家にいろいろな変化があって よそに奉公に出た、生長した ムイは どうなるのでしょうか。



映画

■『 小さな中国のお針子(仏・中)2002、監督・脚本:戴思杰(ダイ・シージエ),主演:周迅(ジョウ・シュン), 陳坤(チェン・コン), 劉燁(リウ・イエ)
 張芸謀(チャン・イーモウ)の『初恋のきた道』に連なるような 中国の初恋映画で、原題は「バルザックと中国の小さなお針子」です。ダイ・シージェ監督自身の、自分の苦難の体験をもとにした同名の小説が原作です。中国の文化大革命(1966-1977)時に、「下放」政策によって 北京から辺鄙な山奥の村に送られて「労働教育」をされた二人の青年と 現地のお針子の娘との 1971年から74年までの生活を描いた物語で、実に過酷な状況を ユーモラスに描いたトラジコメディです。彼らは、禁じられた外国の書物、とりわけバルザックの小説(の翻訳)を 秘密裡に読んで 感動します。主人公のひとりの青年はヴァイオリンを弾きますが、その曲目は何と、モーツァルトの『毛首席を想って』です!

盛中国

 因みに、中国の著名なヴァイオリニストを紹介しておきます。1941年生まれの 盛 中国(チェン・チョンクォ)で、国家と同じ個人名があるとは意外でしょう。「中国のユーディ・メニューイン」と謳われましたが、1964年にモスクワ留学から帰国したあと、彼もまた 文革で「反革命分子の知識人」として 農村に下放され、何年も 農作業の強制労働をさせられました。解放されて 後、日本のピアニスト・瀬田裕子さんと結婚して おしどり夫婦となって活動し、昨年77歳で死去しました。彼の CD『梁祝/牧歌(盛中国/大地の旋律)』は、私の愛聴盤です。



望郷

■『 望郷(サンダカン八番娼館)』(日)2002、監督:熊井啓,主演:田中絹代、栗原小巻、高橋洋子。
 原作は、山崎朋子が 1972年に からゆきさん について書いたノンフィクション『サンダカン八番娼館 ー 底辺女性史序章』で、マレーシア領 ボルネオ島の港町、サンダカンを舞台にしています。今から 17年前に作られた 哀切きわまりない映画ですが、当時 私は知らず、文革で悲惨な目にあわされた中国の文学者・邑金(はきん)の『随想録』第1巻を読んでいたら、その冒頭で、中国で上映された『望郷』を見た彼が称賛していたので、この映画を知った次第です。往年の大女優・田中絹代が、主役の老婆「おサキさん」を演じています。
 原作者の山崎朋子はノンフィクション・ライターで 女性問題研究家(小説家の山崎豊子と混同せぬよう) 昨年10月、86歳で亡くなりました。その昔、朝日新聞が「私の転機」というコラムの連載をしていて、週1回だったか、各界の著名人が自分の人生の転機を振り返って文を書いていました。その中の「二人の男性との出会い」という 彼女の文が 特に心に残り、その新聞切り抜きが 今でもファイルの中にあります。それを書き写しておきますので、昔の日本の話ですが、彼女を哀悼しつつ、 ここをクリックして お読みください。


古書の愉しみ 48. 『 モロッコの建築装飾

モロッコ

● 「古書の愉しみ」の第48回は、『モロッコの建築装飾』を採りあげます。今から 35年前の出版なので、それほどの古書ではありません。しか 有用な書であるにもかかわらず 入手困難になっているので、採りあげることにしました。イスラーム建築の仕上げや装飾、その技法について知りたい人には 必須の本だからです。A4判より少し大きいサイズのハードカバー2冊合わせて 1,100ページ、重さは 6.4キロにもなります。イスラーム工芸に 強い興味のある方には、古書店で入手することを お勧めします。 ここをクリック すると「古書の愉しみ」の 第48回、『 モロッコの建築装飾 』が 別のウィンドウに出ますので、興味のある方はご覧ください。  ( 2019 /07/ 01 )



 7月10日に辞任した英国のダロック駐米大使は、トランプ米政権について「無能で頼りにならない」と英首相官邸に報告していたそうです。
7日の『朝日新聞デジタル』によれば、ダロック氏は トランプ政権について「今後、より正常な状態に近づくことや、機能不全、予見不可能性、派閥ごとの分断、外交的なまずさ、無能さ が改善されるとは まず考えられない」、米国の 対イラン政策 についても「近い将来、筋の通ったものになることはないだろう」と指摘したそうです。正鵠を射た意見だと思います。トランプは大統領に就任以来、世界中に紛争の種を蒔き散らしています。米国民は、なぜ こういう男を大統領に選んだのでしょうか?
 そしてまた日本では、平和憲法を捨てようとしているような安倍内閣と自民党を、若い世代の多くが支持しているそうです。若者が羊のようにおとなしく 保守的になった国に、創造的な未来 は ない、と言えます。   ( 2019 /07/ 11 )

J・S・バッハの『 管弦楽組曲

● このHP上の「古書の愉しみ」のサイトでは、古い本(またはシリーズ)を一点採りあげて、その内容と造本を紹介してきましたが、たまには、本と並んで 私の愛してきた 音楽レコードと そのジャケットを採りあげようと思い、私の最も思い入れの深い、アルヒーフ・レコードを紹介することにしました。大学生の時に 私が生まれて初めて買ったレコードは、バッハの『 管弦楽組曲 』、それもカール・リヒター指揮のアルヒーフ盤で、『堀辰雄全集』の装幀と同じように 私の心を捉えた、抑制のきいた美しい装幀のカートンボックスに入った2枚組です。それを毎日聴きながら レコードについて調べるうちに、アルヒーフというのは 音楽史レコードだと知り、とりわけリヒターのバッハ演奏に のめり込んでいきました。以来 100枚ぐらい買ったアルヒーフ・レコードでしたが、CD時代になって 全て処分してしまいました。私の愛聴盤だった ほとんどは CD化されたものを買い直しましたが、 CD化されなかったものも何枚か あります。 ここをクリック すると「古書の愉しみ 47.」の、『 ヨハン・セバスチャン・バッハの「管弦楽組曲」』が 別のウィンドウに出ますので、興味のある方はご覧ください。  ( 2019 /06/ 01 )


「 中東の建築 」第3章 『 イラン建築

イラン

● 『中東の建築』の第3弾は「イランの建築」です。イランは正しくは「イーラーン」でしょうが、日本の外務省はイランと呼び習わしています。イーラーンとはアーリア人の国を意味します。ペルシアというのはファールシー(ペルシア語)からきていて、それをギリシア人は「ペルシス」と呼び、ローマ人は「ペルシア」と呼びました。イラン人自身は自分たちをペルシア人とは言わなかったのですが、欧米でペルシアの呼称が広まりました。ちょうどインド人が自国をバーラタと呼ぶのに、欧米ではインダス(シンド)河に由来するギリシア語「インドス」に発して「インディア」のような呼称になったのと同様です。
 イラン建築は、建築史の本では「ペルシア建築」という呼称が普通でした。ペルシアは 古代には大帝国として栄えましたが、アレクサンドロス大帝およびアラブ帝国に征服されてからは沈滞し、イラン独自の建築を発展させるのは11世紀以後です。その代わり、イスラーム多数派のスンナ派とはちがったシーア派を標榜し、イラン中を、彩釉タイルで覆われた華やかな建築作品で覆いつくしました。今回、ほとんど「イラン建築史図集」となったこの章のために選んだ写真は 270枚にも なってしまいした。加えて 多くの図面を各種の本から借用して加工したので、実に大きなページになってしまい、第1章「シリア」と 第2章「ヨルダン」を合わせたよりも ずっと大きな ディスク容量になってしまいました。解説はまだ不十分ですが、おいおいに充実させていこうと思っています。 ここをクリック すると「中東の建築」のディヴィジョンの『イランの建築』の章が、別のウィンドウに出ます。    ( 2019 /05/ 05 )

「 パリの ノトルダーム大聖堂 」

ノトルダーム
炎上する屋根 (From a web site news)

● 4月15日に パリのノトル・ダーム大聖堂で火事がおこり、屋根が炎に包まれました。それについて4月18日に ここに書いた「パリのノトル・ダーム大聖堂の火災」についての記事は 「世界建築ギャラリー」のサイトに、『パリのノトル・ダーム大聖堂』として移しました。 ここをクリック すると、別のウィンドウに開きます。    ( 2019 /06/ 17 )


映画『 最後の忠臣蔵

忠臣蔵
映画『 最後の忠臣蔵 』2010年
監督:杉田成道,脚本:田中陽造,主演:役所広司・佐藤浩市
音楽:加古隆,撮影:長沼六男,原作:池宮彰一郎

最近見て面白かった映画の DVDを紹介することにしました。今から9年前の 2010年に制作された日本映画で、『最後の忠臣蔵』というものです。当時話題になって、大きな興行成績をあげたと言いますから、見た方も多いことでしょう。しかし 私は 20年くらい前から映画館に行かなくなって以来、新作映画をチェックすることには無関心になり、情報も はいってこないことから、この映画については まったく知りませんでした。最近になって 図書館の DVDリストに見つけ、今さら『忠臣蔵』でもないな とも思いましたが、「最後の」というのが気になって 借りてみました。
 『忠臣蔵』というと、子供の時から 映画や読み物で 何度も何度も 見たり読んだりしてきました。昔は 日本の映画界では、東宝、松竹、大映、東映といった いわゆる大手五社のどれかが、年末になると「オールスター・キャスト」で『忠臣蔵』を制作・公開していたものでした。主役の 大石 内蔵助(おおいし くらのすけ) を 大映だったら 長谷川 一夫、東映だったら 片岡 千恵蔵か 市川 右太衛門、松竹だったら(先々代の)松本 幸四郎などが演じていて、その多くを見にいきました(テレビでも 何度も制作されたでしょうが、私はテレビを見ないので、よく知りません)。
 私は小学生のころから 映画や講談全集、大衆文学全集などで「忠臣蔵」本伝のほかにも「赤穂義士 銘々伝」や「赤穂義士 外伝」などにも親しんでいたので、四十七士の名前も 半数ぐらいは覚えています。今回の映画の、佐藤浩市が演ずる 寺坂 吉右衛門(てらさか きちえもん) の名も覚えていましたが、彼が討ち入り後 泉岳寺には同行せず、切腹もしなかった、それは大石内蔵助から特別の任務を与えられていたからだった、という説は 初めて知りました。そして映画の主人公は もう一人の「脱落者」、役所広司が演ずる 瀬尾 孫左衛門(せのお まござえもん) です。この名を覚えていなかったのは、四十七士の中に数えられていなかったのですから 当然だったでしょう。
 瀬尾孫左衛門は なぜ討ち入りから「脱落」したのか、これを詳しく調べて、小説家の想像力で膨らませたのが この映画の原作、池宮彰一郎 による 同名の短編小説です。言わば、一種の「武士道残酷物語」でもありますが、これを映画用に脚色した脚本が 実にみごとで、詩情あふれる「日本の美学」の映画となりました。日本映画には 見るべきものが あまり無い などと前に書きましたが、これは 久方ぶりに感銘をうけた、脚本、監督、俳優、撮影、音楽のすべてが上出来の日本映画です(なので、これは手元に置いておきたくなり、DVDを買いました)。

曽根崎心中

 とりわけ 私の心に染み入ったのは、原作には出てこない「人形浄瑠璃」(文楽)をとりこんで、要所々々に 太棹三味線と義太夫の語り、そして人形の姿が映されるのが 実に効果的で、かつて 文楽ファン だった私を、たいへん懐かしい思いに させたことでした。その狂言が 時代物ではなく、近松の世話物『曽根崎心中』であったことに 初め不調和感を覚えましたが、映画が進むにつれて、忠臣蔵の仇討物語自体は時代物であるにせよ、この「最後の忠臣蔵」の話は 世話物なのだと気付いて 納得しました。こうして すっかり文楽の世界に引き戻された私は、贔屓(ひいき)だった 竹本 越路太夫(たけもと こしじだゆう) を、あとでアマゾンで検索してみたところ、今は 舞台と語りを一緒に収めたDVDのシリーズが、国立劇場、国立文楽劇場、昔の朝日座(文楽座)、そしてNHKの協働で出されていることを知り、まずは2枚組みの『冥途の飛脚(めいどのひきゃく)』を購入して、昔の録画なので画質は悪いけれど、すっかり文楽情緒にひたりました。DVDの良いところは、義太夫の床本(ゆかほん)の詞章が 字幕となって出ることで、実に好都合です。

 ところで 近年、忠臣蔵の映画やドラマが あまり作られなくなったのは、おそらく 2001年の ニューヨーク同時多発テロ の影響ではないかと思います。あれは、言わば「アラブの 忠臣蔵」だったのです。 その首謀者とされ、アメリカから 5,000万ドルの賞金を懸けられ、2011年に殺害されたイスラームの闘士、オサマ・ビン・ラディンの 全公開書簡と声明、インタビューがまとめられて『オサマ・ビン・ラディン 発言』(ブルース・ローレンス編, 鈴木主税・中島由華訳, 2006, 河出書房新社)という本になっていますが、その主張は、かつて欧米からの独立運動を戦った 植民地の闘士のそれと よく似ています。欧米列強が 中東でなした、十字軍以来 20世紀まで続いた「悪事」や「帝国主義的的支配と謀略」、それは現代にまで尾をひいていて、いつまでたっても中東和平や安定は 得られません。ニューヨークの ワールド・トレード・センター・ビル 襲撃は その仇討ち、アラブ版「吉良邸 討ち入り」であったでしょう。
 赤穂義士が討ち入りして その本懐をとげた というニュースが広まると、江戸市民の多くが快哉を叫んだということですが、ニューヨーク同時多発テロのニュースでも、多くの中東のアラブ人たちが同様だったことでしょう(日露戦争でロシアが敗れたというニュースに 多くのトルコ人が快哉を叫んだのと同様です)。つまり、「忠臣蔵」を賛美することは アラブのテロ活動を肯定することにつながるので、「忠臣蔵」は あまり制作されなくなったのではないかと思います。
 現在の日韓関係の悪化も、これに重ね合わせることができますが、先月(3月15日)ニュージーランドのクライストチャーチ でおきた、ひとりのオーストラリア人による 50人殺害のモスク襲撃や、アメリカの トランプ大統領 による イスラエル寄り白人至上主義(イェルサレムをイスラエルの首都とし、ゴラン高原をイスラエルに帰属させようとする)のは、さらなる「アラブの忠臣蔵」を惹起しかねません。 ( 2019 /04/ 01 )

イスファハーンの 金曜モスク

イラン

● 『中東の建築』の第3章「イランの建築」の作成は、なお だいぶ時間がかかります。そして今回もその前に、「イスラーム建築の名作」のディヴィジョンに単独で扱うべき建物として、「イスファハーンの 金曜モスク」を採りあげることにしました。「モスクの分類と典型」のページで、近世のモスクを「アラブ型」、「ペルシア型」、「トルコ型」、「インド型」の四つに分類しましたが、そのペルシア型の成立に大きく寄与したのが、このイスファハーンの金曜モスクです。イラン(ペルシア)に特有の「四イーワーン型」の構成と、そしてムカルナス装飾の誕生・展開を告げる 重要なモスクです。 ここをクリック すると「イスラーム建築の名作」のディヴィジョンの『イスファハーンの 金曜モスク』のページが 別のウィンドウに開きます。十分な執筆時間がとれないので、文中『イスラーム建築』 からの引用が あちこちにあることを お許しいただきたい。  ( 2019 /03/ 01 )

イスラーム建築の名作 「 カーブース廟

イラン

● 『中東の建築』の第3章「イランの建築」を現在作成中ですが、かなり大きいページになるので、だいぶ時間がかかります。そこに収録する建物をリストアップしていたら、ゴルガーンのゴンバデ・カーブース(カーブース廟)は「イスラーム建築の名作」のディヴィジョンに単独で扱うべきだと思い至りました。イランでは塔状の墓廟が発展し、その最初期にして最大のものが「カーブース廟」です。そして、単に塔墓の代表としてばかりでなく、イラン建築の最高傑作の一つであり、現代の建築家に最もアピールする建築作品ではないかと思います。つまり、装飾が少なく、焼成レンガという素材のみで構成した 幾何学的な純粋造形であり、そのスケール感ともども、圧倒的な魅力と迫力をもって聳えています。 ここをクリック すると「イスラーム建築の名作」のディヴィジョンの『ゴンバデ・カ-ブース』のページが 別のウィンドウに開きます。    ( 2019/ 02 /01 )



愛を乞うひと

●● 連日のニュースで、小さな娘が親に虐待されて死亡し、親が逮捕されたことが報じられています。こういうニュースを聞くのは本当に つらいことで、今から 20年前の映画『愛を乞うひと』を思い出します。当時 映画館で見て、10年前には DVDを買いました。その後も1、2度見ています。監督は平山秀幸、原作は下田治美の 同名の自伝的小説で、娘を虐待する母の姿と、その娘が大人になって 明るい娘の母となった姿の二役を 原田美枝子が演じています。見るのが 実につらい映画ですが、深く心に残る作品です。  ( 2019 /02/ 07 )

謹賀新年 2019

年賀状

大晦日の夜から バッハの『マタイ受難曲』を聴きながら、新年を迎えました。



● 年の初めは 新しい記事の代りに、近年DVDで見た、あるいは 再見した 映画の中から、面白かったものを いくつか紹介します。そのうち3本は、『世界のイスラーム建築』のサイトに「中東の建築」の第3章「イランの建築」というページを作り始めたことにも ちなんだ イランの映画で、あとの3本はヨーロッパの やや古い、だいぶ古い、かなり古い、3本の映画です。

映画

■『運動靴と赤い金魚(イラン)1997,監督:マジッド・マジディ,主演:M・ハシェミアン。
 イラン映画は面白い。といっても 『運動靴と赤い金魚』という題名から 面白そうな映画を想像するのは困難でしょう。事実、赤い金魚が出てくるのは最後のシーンだけだし、あまり起伏の無い前半は少し平板すぎるかもしれない。では、一体、運動靴には どんな役割があるのでしょうか?  靴を買うこともままならない経済状態の、小さな兄と妹の、ホロリとさせるコメディです。 なお、男女別学を基本とするイランでは、小学校を午前は女子用、午後は男子用に使うということがよくありました。この映画でも そうです。



映画

■『オフサイド・ガールズ(イラン)2006,監督・制作・編集:ジャファル・パナーヒ。
 イランでは、女は 大競技場にサッカーの試合を見に行くことができない。それは何故か?
日本人の女は見にいけるのに ! 『クルアーン』が禁じているわけではないのに ! そうした状況の中で、イランと外国チームとの大試合を見ようと ジタバタとあがく、ヴァイタリティあふれる若い女たちを描いたコメディです。ジャファル・パナーヒ は、名匠 アッバス・キアロスタミの助監督をつとめたあと独立して『チャドルと生きる』を作った監督で、この『オフサイド・ガールズ』もイラン国内で上映禁止になったそうです。こんなコメディであっても、イランの「恥部」をさらけ出していて けしからんと、政府 或いはイスラム指導者は感じるのでしょうかね。



別離

■『 別離(イラン)2011、監督・制作・脚本:アスガー・ファルハディ,主演:ペイマン・モアディ、レイラ・ハタミ。
 一転してこれはコメディではなく、かなりシリアスな映画です。夫婦の問題、家族の問題、離婚問題、老人問題、認知症、娘の教育、それに偶発的な事故が重なって、親の介護を頼んだ人との訴訟、と聞けば、特にイランという国にかかわりなく、もっと普遍的な問題、現代の状況を描いた映画だと思われることでしょう。しかし、これに加えて やはり、イランの宗教問題がからみます。『クルアーン』に誓って真実を述べられるのか、現実の生活を守るために、どこまで嘘がつけるのか。主人公の家族は割と現代的な生活を送り、妻はアメリカに移住しようとまでしていますが、人それぞれに悩ましい問題をかかえており、誰もが納得する道などありません。見るのに少々つらい部分もありますが、平均的日本人があまり重要としない宗教意識を捨象すれば、この映画もまた コメディだと言えるかもしれません(バルザックの「人間喜劇」(コメディ・ユメーヌ)のように)、面白おかしい映画では全然ありませんが。
『彼女が消えた浜辺』などを撮って高い評価を得たイランの監督 アスガー・ファルハディによる この作品は、アカデミー賞の「外国語映画賞」をはじめ、世界で多くの映画賞を受賞しました。



黄色い星

■『黄色い星の子供たち(仏・独・ハンガリー)2010,監督・脚本:ローズ・ボッシュ。
 前に紹介した『サラの鍵』が扱っていた フランスの ヴェル・ディヴ 事件(ナチス占領下のフランス警察による、ユダヤ人狩り事件)を、もっと生な形で描いた、女流監督 ローズ・ボッシュによる映画です。彼女は 隠されていた事実を3年にわたって調査し、この映画をつくりました。
 20世紀は、ユダヤ人にとって、本当に恐ろしい時代でした。映画の原題は "La Rafle"「一斉検挙」です。この時 列車でパリからアウシュヴィッツに送られた約四千人の子供たちのうち、生還者は一人もいなかったそうです。 「黄色い星」というのは、ユダヤ人のシンボルとしての星型のマークを、ナチス占領下のフランスのユダヤ人が、胸に付けさせられていた 黄色の「差別証」です。ユダヤ教のシンボルとしては燭台(メノーラ)が 古代から文書や彫刻に出てきますが、正三角形を二つ組み合わせた星型(いわゆる「ダヴィデの星」)は 中世の後半から現れたようで、頻繁に使われるようになったのは近世になってかららしい。

燭台  星

ユダヤ教のシンボルとされる燭台(メノーラ)と 星型図
左はイェルサレムに行ったときに買ったもの、右は イスラエルの国旗の中央部

星   星

 アルメニア中部、ガヴァル の聖母聖堂(ハツァラト)の裏手の壁面と岩に 星型が刻まれているのには驚きました。いつの時代かは わかりませんが、このあたりにユダヤ人のコミュニティがあり、アルメニア教会と共存していたようです。



映画

■『悲しみは星影とともに(イタリア)1965,監督:ネロ・リージ、音楽:イヴァン・ヴァンドール、
 主演はチャールズ・チャプリンの娘、ジェラルディン・チャプリン(1944- )の最初期の主演映画です。 だいぶ古い映画で、白黒スタンダード画面。 これもユダヤ人の受難を、ナチス・ドイツ占領下のユーゴスラビアでの ある姉弟、目の見えない弟と、彼を世話する姉 を通して描いたものです。チャプリンはユダヤ人ではありませんでしたが、1940年にヒトラーを批判した『独裁者』を撮っています。晩年の子であるジェラルディンは まだ生まれていませんでした。
 『悲しみは星影とともに』は 30年ぶりぐらいで見ましたが、悲劇を一層 盛り立てるような、まことに音楽の美しい映画です。昔 映画館で見たときも、映画の内容もさることながら、その悲壮な音楽に より強く感動した覚えがあります。誰でも一度は聞いたことのあるであろう サウンドトラックの音楽は、ユーチューブで聴けます。映画を見ないうちは、目をつむって(映像を見ないで)、音楽だけ聴いてください。



最後の橋  映画

■『最後の橋(オーストリア・ユーゴスラヴィア)1954,監督・脚本:ヘルムート・コイトナー,主演:マリア・シェル
 かなり古い映画で、もちろん白黒スタンダード。 知る人ぞ知る 名作映画で、今から 4, 50年前に NHKテレビで 放映されたことがありました。その時 偶然に見て、主演の、憂いを帯びた顔立ちの マリア・シェル を、何十年も忘れられなくなった映画です。
 「悲しみは星影とともに」ではジェラルディン・チャプリンが ユーゴのパルティザン(人民解放戦線)の兵士と愛しあいますが、この映画では 病院の看護婦長役のマリア・シェルが パルティザンの一隊に拉致され、彼らの負傷者たちのための医療活動をすることを強いられます。一隊は毎日 夜の間 行軍を続け、途中、いくつもの橋を渡って行きます。そして ついに目指す都市にたどり着き、最後の橋を渡る時 ・・・・・ 。
 オーストリア出身の女優 マリア・シェル は、この映画に出たとき27歳、その2年後 エミール・ゾラの『居酒屋』(1956、ルネ・クレマン監督)に出て、主人公のジェルヴェーズの役で ヴェネツィァ映画祭 主演女優賞を取りました。 ずーっと後に、フレデリック・フォーサイス原作の『オデッサ・ファイル』という映画を見ていたら、主人公の青年が、その場面にだけ出てくる母親と会話をするシーンがあり、こんな端役にも、ずいぶん素晴らしい女優を使うものだなと感心していたら、あとで それが、『最後の橋』の 20年後の マリア・シェルだと知って 仰天しました。

( 2019 /01/ 01 )


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